安全性を追求し、革新原子炉開発
ACTIVE KANSAI
2023.1.13

安全性を追求し、革新原子炉開発

2022年12月22日に発表されたGX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針では、将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組むことが明記された。国も動き出すなか、次世代革新炉開発に取り組む三菱重工業原子力技術部の西谷順一氏に話を聞いた。

西谷順一
西谷順一
三菱重工業原子力セグメント
原子力技術部次長

三菱重工業原子力事業部門の取組みは?

2050年のゼロカーボン達成に加え、ウクライナ危機による燃料価格の高騰やエネルギーセキュリティの観点から、原子力への期待が高まっている。三菱重工業では、メーカーとして既設プラントの再稼動、再稼動後の継続的な安全性向上に努めるとともに、2050年のゼロカーボン達成に向け、安全性・信頼性を高めた次世代革新炉の開発に取り組んでいる。

次世代革新炉とは?

既存の加圧水型軽水炉(PWR)をベースにした革新軽水炉をはじめ、30万kW級の分散型小規模電源である小型モジュール炉、離島やへき地で使用するマイクロ炉、水素製造に適した高温ガス炉、原子燃料サイクルを担う高速炉など多様な炉の開発を推進。他にも、核融合実験炉実現に向けた国際プロジェクトITER計画へ参画し、夢のエネルギーである核融合実現に挑戦している。

革新軽水炉の特徴は?

地震、津波等自然災害への耐性を強化 イメージ

地震、津波等自然災害への耐性を強化

現在開発を進めているのが、120 万kW 級の革新軽水炉「SRZ-1200」だ。地震、津波など自然災害への耐性強化やテロ対策などを強化するとともに、万一の重大事故時にも備えた設計を検討しており、2030年代半ばの実用化を目指している。

溶融炉心対策としてコアキャッチャを設置 イメージ

溶融炉心対策としてコアキャッチャを設置

具体的には、強固な岩盤に原子炉建屋を埋め込み耐震性を強化。原子炉格納容器を覆う遮蔽壁は従来の2倍の厚さとし、テロなど外部からの攻撃に対する耐久性を高める。加えて、万一の事故における炉心の冷却に対して従来より信頼性を高めた高性能蓄圧タンクを整備。炉心が溶融しても、溶融デブリを格納容器内で確実に保持・冷却するコアキャッチャを設置する。さらに、事故の影響を発電所内に留める放射性物質放出防止システムも取り入れる。
また、電力の需給状況に応じた出力調整機能を盛り込み、電力安定供給に貢献するとともに、水素製造への活用も検討している。

長らく新増設計画はストップしていたが、技術継承はどうしている?

再稼動に向けた安全性対策工事等を通して、技術継承はできている。ただ、原子力事業はプラントメーカーと電力会社だけで成り立つものではない。部品メーカーや工事会社などビジネスパートナーがプラントの安全性を担保する高度な技術を有しており、これこそが日本の原子力事業を支える大きな財産。数百社に及ぶビジネスパートナーが保持する技術をきちんと継承していくことが、日本のエネルギー産業を支えていくうえで非常に重要だと考えている。

今後の抱負を!

中学生のときに原子から高い熱エネルギーを生み出せる原子炉に興味を持ち、原子力の技術者を志した。そして1992年の入社以来、原子力一筋で歩んできた。安全性を追求するため、日夜試行錯誤を繰り返す若手技術者に、自分の持っている知識や技術を伝え、新プラントの早期実用化に向けて取り組んでいきたい。

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