「ゼロカーボンエネルギー」のリーディングカンパニーとして、「水素社会への挑戦」を柱の1つに掲げる関西電力。そのなかで重点取組みの1つが水素発電の実現だ。水素発電プロジェクトに携わる水素事業戦略室の松山裕伎生に取組みの現在地を聞いた。
水素事業戦略室 松山裕伎生
既設火力発電所を活用した水素発電実現に向けたプロジェクトを進めています。水素の受入・貯蔵から発電に至るまでの運用技術確立を目指すもので、2021年8月NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の公募する「グリーンイノベーション基金事業」に採択されました。
実施期間は21〜26年度の6年間。現在、技術課題とその解決方法、事業費などの検討を進めており、私は主に技術課題の整理・検討を担当しています。
1つは、発電のゼロカーボン化に貢献できること。水素は燃やしてもCO2が発生せず、火力発電燃料として使えば、ゼロカーボン社会の実現に大きな役割を果たすことができます。
もう1つはエネルギー安全保障。石油や天然ガスは産出国が限られ、国際情勢の影響を受けやすい。一方、水素は再エネや原子力、化石燃料と多様な資源から製造でき、調達先を多様化することで安定的な調達が可能です。
基本的な仕組みは火力発電と同じで、水素を燃やし、発生した蒸気でタービンを回し発電します。火力発電にはボイラーでつくった蒸気でタービンを回し発電する「汽力発電」と、ガスタービン内で燃料を燃やして発電する「ガスタービン発電」があり、水素発電には発電効率の高いガスタービン発電の導入を検討しています。
天然ガスなどと比べて燃焼速度が速いため、燃焼器の火炎が逆流する「逆火」が起こりやすくなります。逆火はガスタービン主要部品の焼損につながる可能性があり、逆火を防ぐ燃焼器の開発がメーカーで進んでいます。
また、燃えやすい特性があるため、配管は溶接し継ぎ目のない構造にし、万一漏れても滞留する場所をつくらないなどの対策が必要です。
水素発電は火力のゼロカーボン化実現のカギになるものと考えています。解決すべき課題は多いが、少しずつ着実に前に進んでおり、自身が関与できていることに大きなやりがいを感じています。関係者の皆さまと協力しながら、水素発電実現に向け全力で取り組んでいきます。