コラム|水道水がそのまま飲める国は12カ国だけ 世界と日本の水道事情とは【浦上拓也】
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2022.9.30

コラム|水道水がそのまま飲める国は12カ国だけ 世界と日本の水道事情とは【浦上拓也】

水道水をそのまま飲める国は、日本を含め世界でたった12カ国(国土交通省「2021年版 日本の水資源の現況」)。日本は水道の水質がよく、そのまま飲める数少ない国の1つだ。

2021年版
日本の水資源の現況

2021年版 日本の水資源の現況

国土交通省

水道水の品質は、消費者が求める質と、採用される浄水処理技術とのバランスで決まる。水道インフラの整備・維持には多大なコストがかかるため、途上国では水道自体の普及率が低く、水道が整備された都市部でも施設への投資ができず、水質が悪い。

日本の消費者は水の味や臭いにかなり敏感だ。日本は湿度が高いので、水道水には腐らないよう必ず塩素を入れる。塩素自体は無味無臭だが、水源の水質が悪いと原水に含まれるアルカリ成分等と塩素が反応し、塩素臭が強くなる。高度経済成長期に水道水の臭いが問題視され、一気に広まったのが、高度浄水処理だ。オゾンや活性炭吸着で臭いを除去し、おいしい水が届けられている。一方アメリカでは、水道水はシャワーや洗濯等に使うものという認識で、飲用や料理にはペットボトルの水を購入し使っている。

日本は、水道水の水質基準も厳しい。微生物や化学物質の含有量など安全性を担保する基準だけでなく、味に影響を与えるカルシウムやナトリウムなどの含有量も基準が決められており国が定める水質基準項目は51にも及ぶ。それに対してペットボトルの水の基準は39項目。日本では、ペットボトルの水よりも水道水の方が厳しい基準をクリアしている。

日本の水道技術の海外展開も進む。水道ビジネス市場は、途上国の都市化・産業進展を受け拡大しており、施設整備だけでなく、ノウハウの提供や人材育成等で持続可能なインフラ構築の一助となっている。

高い水道技術を誇る日本だが、高度成長期に整備した水道管が更新の時期を迎えており、老朽化と資金不足という課題に直面している。世界に誇る安全でおいしい水を維持するため、広域化など時代にあった維持管理の仕組みを整えていかなければならない。

浦上拓也
浦上拓也 うらかみ たくや
近畿大学経営学部教授
専門は水道マネジメント。厚生労働省厚生科学審議会等、国の委員を歴任。現在は、大阪府広域水道企業団、京都市等多くの自治体で上下水道の委員を務める。
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