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2021年1月14日
関西電力株式会社

高浜発電所4号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管損傷に関する点検状況の続報)

 高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、2020年10月7日から第23回定期検査を実施しており、3台ある蒸気発生器(SG)の伝熱管全数※1について渦流探傷検査(ECT)※2を実施した結果、A-SGの伝熱管1本、C-SGの伝熱管3本の管支持板※3部付近に外面(2次側)からの減肉とみられる有意な信号指示が認められました。
 小型カメラを用いて有意な信号指示があった伝熱管の外観を調査した結果、きずの大きさは、幅約1㎜以下、周方向に4㎜でした。また、A-SG伝熱管の信号指示箇所に付着物(付着物A:スケールA)を確認し、工場で化学成分分析、外観観察等の詳細調査を実施した結果、付着物A※4には、接触痕と光沢が認められました。
 C-SGの3本の伝熱管には、信号指示箇所に幅約1㎜もしくは1㎜以下、周方向に約2㎜から7㎜のきずを確認しました。このうち、1本の伝熱管において、伝熱管と管支持板の間に付着物(付着物C:スケールC1)を確認しました。付着物Cは、回収時に管支持板と伝熱管の間に挟まっていた部分が粉砕したものの、残りの部分※5を回収し詳細調査を実施した結果、接触痕や光沢は確認できませんでした。
 付着物Aは直径約22.5mm、付着物Cは、約21.9mmの円筒状に沿った形状であり、伝熱管(円筒)の外周(直径約22.2mm)に近い形状であることを確認しました。
 付着物Aを拡大観察した結果、筋状痕を確認し、伝熱管との摺動によりできたものと推定しました。付着物Cには、表面の一部に平滑な面がありましたが、筋状痕は確認できませんでした。
 また、主成分はマグネタイトであり、SG内で発生するスラッジと同成分であることを確認しました。付着物Aでは、伝熱管の主成分であるニッケルおよびクロムの成分を検出したことから、この付着物が伝熱管をきずつけた可能性が高いと推定しました。一方、付着物Cでは、表面の一部にニッケルをわずかに検出しましたが、クロムは検出されませんでした。
 これらのことから、回収した付着物はプラント運転に伴い、SG伝熱管外表面に生成された鉄酸化物(スケール)と推定しました。

  • ※1 過去に有意な信号指示が認められ、施栓した管等を除きA-SGで3,244本、B-SGで3,247本、C-SGで3,256本、合計9,747本。
  • ※2 高周波電流を流したコイルを、伝熱管に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物のきず等により生じた渦電流の変化を電気信号として取り出すことできず等を検出する検査であり、伝熱管の内面(1次側)より、伝熱管の内面(1次側)と外面(2次側)の両方を検査している。
  • ※3 伝熱管を支持する部品。
  • ※4 幅約15㎜、長さ約9㎜、厚さ約0.2~0.3㎜、重さ約0.1g
  • ※5 幅約5㎜、長さ約3㎜、厚さ約0.4㎜、重さ約0.02g

2020年11月20日25日12月15日お知らせ済み]

 スケールが伝熱管をきずつけるメカニズムを調査するため、C-SGにおいて損傷が確認された3本の伝熱管周辺の第1、第2管支持板上から約300個のスケールを回収し、その性状等の確認を行いました。その過程で、C-SGの伝熱管を損傷させた可能性のあるスケールを回収しました。
 これらの調査状況については以下の通りです。

  • 1.C-SGから回収したスケールの調査
     回収したスケールの外観観察等の結果、2つのスケール(C2、C3)の外表面に接触痕が認められたことから、工場において化学成分分析、外観観察等の詳細調査を実施した結果、以下のことを確認しました。
    • (1)外観観察結果
       スケールC2(幅約18mm、長さ約10mm、厚さ約0.3mm、重さ約0.19g)、およびC3(幅約23mm、長さ約11mm、厚さ約0.3mm、重さ約0.25g)には、伝熱管減肉部と接触していたと想定される部位に接触痕を確認しました。
       スケールC2、C3の形状を計測した結果、スケールC2は直径約22.3mmの円筒状、スケールC3は直径約22.6mmの円筒状に沿った形状であり、伝熱管(円筒)の外周(直径約22.2mm)に近い形状であることを確認しました。
    • (2)電子顕微鏡による観察結果
       スケールC2およびC3について、伝熱管減肉部と接触していたと想定される部位を拡大観察した結果、筋状痕があり、伝熱管との摺動によりできたものと推定しました。
       また、スケールの表面の一部に平滑な面が認められましたが、拡大観察の結果、筋状痕は確認できませんでした。
    • (3)成分分析結果
       スケールC2およびC3の化学成分分析の結果、主成分はマグネタイトであり、SG内で発生するスケールと同成分であることを確認しました。
       また、伝熱管減肉部と接触していたと想定される部位に伝熱管の主成分であるニッケルおよびクロムの成分が検出されたことから、これらのスケールが伝熱管をきずつけた可能性が高いと推定しました。
       なお、スケールの表面に認められた平滑な面には、管支持板の材料に多く含まれるクロムの成分が検出されました。
    • (4)管支持板下面へのスケールの付着状況の想定
       スケールC2、C3について、管支持板下面に付着した場合のきずの位置との関係について調査した結果、スケールの筋状痕ときずの位置や、スケールに認められた平滑な面と管支持板表面の接触痕の位置等が一致することを確認しました。
  • 2.AおよびC-SGから回収したスケールの性状の確認
     伝熱管をきずつけた可能性が高いと推定されたスケールA、C2、C3について、それぞれ一部を切断して断面を観察した結果、大部分が密度の高い層(稠密層)になっていることを確認しました。
  • 3.伝熱管のスケール付着状況の調査
     SG伝熱管のスケールの性状については、1996年に高浜発電所3号機SG伝熱管の健全性確認を目的とした抜管調査を実施した際に、スケールの付着状況の調査を行っており、その結果、伝熱管の場所によりスケールの性状が異なり、伝熱管上部のスケールは厚みがある一方で密度が比較的低い層(粗密層)が主体であり、下部のスケールは層厚が薄いものの稠密層が主体であるとの結果が得られています。
     これらを踏まえ、高浜発電所4号機の伝熱管上部および下部のスケールの付着状況を調査するため、SGの上部(第7管支持板上)および下部(第2管支持板から管板上の間)のスケールを採取し、断面観察を行った結果、高浜発電所3号機の調査結果と同様の結果が得られました。
  • 4.スケールによる伝熱管外面の摩耗減肉の可能性調査
    • (1)過去の摩耗試験結果
       高浜発電所4号機および高浜発電所3号機では、至近の定期検査においてSG伝熱管損傷が発生しており、原因調査の中でスケールに起因する可能性についての調査を行うため、SG内からスケールを採取し摩耗試験を実施しています。
       その際、スケールの厚さが大きいほどスケールが折損しにくいと想定し、比較的厚みのあるものを(約0.6mm~1.0mm)を7個、比較的薄いもの(約0.3mm~0.4㎜)を2個選定しました。
       これらの摩耗試験の結果、いずれもスケールが先に摩滅したため、スケールが伝熱管を有意に減肉させる可能性は低いと推定しました。
    • (2)今回の摩耗試験結果
       スケールA、C2、C3は、厚さが約0.2mm~0.3mmであり、稠密層が主体でした。
       このため、SG内から回収したスケールのうち、厚さが0.2mm~0.3mm程度かつ稠密層が主体のスケールを3個選定して摩耗試験を行いました。その結果、伝熱管の減肉量がスケール摩滅量よりも大きくなることを確認しました。

       これらのことから、稠密層が主体であるスケールが伝熱管に繰り返し接触することにより、伝熱管に有意な減肉が生じる可能性があることを確認しました。
  • 5.SGの運転履歴調査
     スケールの生成には、SG内への鉄イオンや鉄微粒子の持ち込み量が関係していることから、運転時間や水質管理の状況について調査を行いました。
    • (1)運転時間
       高浜発電所4号機のSGは、運転開始以降22.2万時間の運転を行っています。また、高浜発電所3号機のSGも、22.3万時間の運転実績があり、大飯発電所3、4号機やSGの交換を行った美浜1~3号機、大飯1、2号機、高浜1、2号機よりも運転時間が長いことを確認しました。
    • (2)水質管理履歴
       2次系冷却系統については、溶存酸素、電気伝導率等を管理し、またpHを高く維持することで給水設備からの溶出による鉄イオンや鉄の微粒子の持ち込みを抑制しており、これらの履歴からも水質管理に問題がないことを確認しました。
       高浜発電所3、4号機は運転年数も長いことなどから、SG内に持ち込まれた鉄分の積算量についても、他プラントに比べ多いことを確認しました。
       なお、大飯発電所3号機および4号機は、SG伝熱性能などのプラント性能指標の回復を目的として、SG内の薬品洗浄を実施しており、その結果、スケールの除去、粗密化が図られています。
  • 6.他プラントのSG伝熱管スケールとの性状比較
     SGの運転履歴を調査した結果、高浜発電所4号機および高浜発電所3号機は運転時間がほぼ同じであり、他プラントは、これらのプラントと比較して運転時間が短く、SG内への鉄の持ち込み量は少ない状況であることを確認しました。
     大飯発電所4号機のSG伝熱管下部からスケールを採取し、断面観察を行った結果、高浜発電所4号機SG内から採取したスケールと比べて、稠密層の割合が少ないことを確認しました。
     これらのスケールを用いて摩耗試験を実施した結果、試験開始直後にスケールが折損するか、伝熱管よりも先にスケールが摩滅しました。
     なお、高浜発電所2号機のSG伝熱管下部では、伝熱管へのスケール付着がごく軽微であり、採取できるほどの厚みがないことを確認しました。
  • 7.原因調査状況のまとめ
     伝熱管にきずをつけた可能性が高いスケールA、C2、C3の性状を確認した結果、稠密層であることを確認するとともに、同様の稠密なスケールを採取し摩耗試験を実施した結果、伝熱管の減肉量がスケール自身の摩滅量よりも大きくなることを確認しました。
  • 8.今後の予定
     引き続き、回収したスケールの分析等を実施し、再発防止策の検討を行います。

以  上

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