プレスリリース

2008年4月17日
関西電力株式会社

原子力発電所の平成20年度保守運営計画について

 当社は、原子力発電所の平成20年度保守運営計画を策定し、安全協定に基づき、福井県、立地町等に提出しました。

1.運転計画の概要

 (1)定期検査計画について 【表−1,2参照】
 平成20年度の定期検査計画は、協力会社の方々とコミュニケーションを図りながら、定期検査中の労働安全・作業品質の向上のための改善策を採用するなど、平成19年度同様、「安全最優先」の考え方に基づいて策定しています。
 定期検査工程の策定では、美浜発電所2号機、高浜発電所2号機、3号機については、平成19年度に発生した蒸気発生器入口管台溶接部の傷による補修工事を踏まえ、3プラントとも夏頃の原子炉起動を目途に計画しています。
 また、原子炉容器上部ふた取替工事や、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂を踏まえた耐震裕度向上工事などの信頼性維持・向上対策工事等を積極的に実施します。
 発電停止期間(定期検査:解列~並列)は、今年度中に定期検査を終了する予定の10プラントの平均で、約5.2ヶ月を予定しています。

 (2)発電計画について 【表−1参照】
 定期検査計画に基づき発電所を運転すると、当社原子力発電所の総発電電力量は約648億kWh(時間稼働率※1:約76.0%、設備利用率※2:約75.8%)となる見込みです。

※1 時間稼働率: 1年間の暦日時間数(365日×24時間)に対し、実際に発電した時間数の割合。
※2 設備利用率: 定格電気出力で1年間運転した場合の発電電力量に対し、実際に発電した電力量の割合。定格熱出力一定運転による発電電力量増加分を含む値。

 (3)定期検査における燃料取替計画について 【表−3参照】
 各プラントの定期検査において、装荷されている燃料の一部を新燃料に取り替えます。
 このうち、美浜発電所3号機および大飯発電所1号機から4号機の新燃料は、全て高燃焼度(55,000MWd/t)燃料を含めることを計画しています。


2.原子炉設置変更許可申請計画の概要

 (1)美浜発電所  
○蓄電池負荷の変更 【図−1参照】
 美浜発電所3号機の安全系蓄電池から電気を供給している負荷(機器)について、将来の安全系負荷の増加に備えた見直しを行うため、原子炉設置変更許可申請を行うことを計画しています。

 (2)高浜発電所  
○蓄電池負荷の変更 【図−1参照】
 高浜発電所1号機および2号機の安全系蓄電池から電気を供給している負荷(機器)について、将来の安全系負荷の増加に備えた見直しを行うため、原子炉設置変更許可申請を行うことを計画しています。

○ 高燃焼度燃料の導入 【図-2参照】
 高浜発電所1、2号機の燃料に、使用済燃料の発生量低減を目的とした高燃焼度(55,000MWd/t)燃料を導入するため、原子炉設置変更許可申請を行うことを計画しています。
 また、同申請に合わせて高浜発電所3、4号機の使用済燃料貯蔵設備における貯蔵対象燃料の中に、高浜発電所1、2号機において使用済みとなった高燃焼度(55,000MWd/t)燃料を含めるように記載の変更を行う予定です。

○ 使用済燃料輸送容器保管建屋の対象物としてウラン・プルトニウム混合酸化物新燃料を装てんした輸送容器と新燃料を取り出した後の輸送容器を追加
  【図-3参照】
 高浜発電所1号機から4号機共用設備の使用済燃料輸送容器保管建屋への一時保管対象物に、ウラン・プルトニウム混合酸化物新燃料輸送容器を追加するため、原子炉設置変更許可申請を行うことを計画しています。

○ 洗浄排水処理装置の取替 【図-4参照】
 信頼性向上を目的として、高浜発電所1、2号機共用および3、4号機共用設備の洗浄排水処理設備の改造を行うため、原子炉設置変更許可申請を行うことを計画しています。

 (3)大飯発電所  
○蓄電池負荷の変更 【図−1参照】
 大飯発電所1号機および2号機の安全系蓄電池から電気を供給している負荷(機器)について、将来の安全系負荷の増加に備えた見直しを行うため、原子炉設置変更許可申請を行うことを計画しています。


3.主要設備の増設および改造工事計画の概要
【表−2図-4~13参照】
 保全計画に基づき、設備の信頼性維持・向上対策や運用および保守性向上対策として、表-2に示す工事を計画しています。なお、主要な工事としては以下のとおりです。

◇洗たく排水処理設備設置工事 【図-4参照】
 環境への配慮の観点から、代替フロンを使用しているドライクリーニング設備を撤去して、新たに節水型水洗機を設置するとともに、排水処理として膜分離活性汚泥処理装置を設置します。
 今年度は大飯発電所3、4号機で実施する計画です。


◇原子炉容器上部ふた取替工事 【図-5参照】
 大飯発電所3号機の原子炉容器上部ふた管台からの1次冷却材漏えい事象に鑑み、長期的な設備信頼性を確保する観点から、応力腐食割れの予防保全として管台および溶接材料を600系ニッケル基合金から690系ニッケル基合金に改良した原子炉容器上部ふた(制御棒駆動装置含む)に取り替えます。
 また、取り替え後の旧上部ふたについては、蒸気発生器保管庫にて保管します。
 これまで、大飯発電所3、4号機および高浜発電所4号機で実施し、現在、高浜発電所3号機で実施中です。


◇原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事 【図-6参照】
 海外事例を受けた予防対策として、原子炉冷却系統設備のうち、酸素型応力腐食割れの感受性が高いと考えられる配管(溶存酸素濃度が比較的高くなる可能性のある箇所)について計画的に耐腐食性に優れる材料(SUS304からSUS316)に取り替えるとともに、ソケット溶接箇所は突合わせ溶接に変更します。
 今年度は、高浜発電所1、2号機、大飯発電所1、2号機で実施する計画です。


◇再生熱交換器取替工事 【図-7参照】
 国内PWRプラントにおける高サイクル熱疲労割れ事象(温度ゆらぎによる疲労)を踏まえ、内筒を有する高浜発電所3、4号機の再生熱交換器については定期的に点検を行ってきましたが、今後の保守性を考慮し、再生熱交換器一式(3台)を内筒のない構造のものに取り替えます。
 高浜発電所4号機は平成19年度に実施し、現在、高浜発電所3号機で実施中です。


◇昇圧変圧器取替工事 【図-8参照】
 昇圧変圧器のコイル絶縁性能が経年劣化の傾向にあるため、予防保全対策として昇圧変圧器一式を取り替えます。
 昇圧変圧器は高浜発電所1、2号機に設置されており、現在、1号機で実施中です。


◇耐震裕度向上工事 【図-9参照】
○地盤改良工事
 耐震裕度を向上させるため、取水構造物周辺の地盤の強度を高める改良工事を実施します。
 現在、美浜発電所1、2号機で実施中です。


○支持構造物補強工事
 耐震裕度を向上させるため、耐震Sクラスのクーラや配管等について、支持構造物の補強工事を実施します。
 現在、美浜発電所1、2号機、高浜発電所2号機、大飯発電所3号機で実施中、今年度は美浜発電所3号機、高浜発電所1、4号機、大飯発電所1、2、4号機で実施する計画です。


◇耐震対応強化工事(新潟県中越沖地震を踏まえた対応)
 新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえ、観測用地震計の新設や取替え等を行います。また、消防自動車の配備に伴い、車庫の増設等を行います。

◇充てん配管1系列撤去工事 【図-10参照】
 弁シートリーク型熱成層に起因した高サイクル熱疲労に対する信頼性向上の観点から、2系列ある充てん配管のうち、使用していない1系列の充てん配管、隔離弁等を撤去します。
 今年度は高浜発電所4号機で実施する計画です。


※:弁シートリーク型熱成層
   閉止した弁の上流側から下流側に漏れ出た低温水(滞留していた水)が、弁の下流側で常時流れている高温水と合流する状態で生成される部分。


◇2次系熱交換器他取替工事 【図-11参照】
 2次系給水系統の水質向上対として、蒸気発生器への不純物持ち込み低減を図るため、給水加熱器の伝熱管を銅合金製から銅系材料を含まないステンレス製に取り替えます。
 今年度は大飯発電所1号機で実施する計画です。


◇海水淡水化装置一部撤去工事
 大飯発電所共用の海水淡水化装置5基のうち、稼働率の低い1基について、運転操作性、保守性統一の観点より撤去します。

◇廃液蒸発装置他取替工事 【図-12参照】
 信頼性向上の観点から、廃液蒸発装置で処理した濃縮液による応力腐食割れ防止を図るため、廃液蒸発装置の型式を浸漬式から濃縮液に含まれる塩素分が濃縮されにくい強制循環式に変更し、濃縮液と接液する箇所の材料をより耐食性に優れた材料に変更します。また、濃縮液を移送する配管についても、より耐食性に優れた材料に変更します。
 今年度は高浜発電所1、2号機、大飯発電所1、2号機で実施する計画です。


◇ ほう酸回収系統改造工事 【図-13参照】
 [ほう酸回収装置増設工事、ほう素熱再生装置撤去工事、ほう酸補助タンク他設置工事]
 大飯発電所1、2号機ほう酸回収設備の信頼性向上および運転員の負担低減の観点から、ほう酸回収装置(現状1基)を1基増設し、ほう酸回収(処理)機能の強化を図るとともに、ほう酸回収装置増設スペース確保等の観点から、現状使用していないほう素熱再生装置を撤去します。
 また、ほう酸回収系統の運用性向上の観点から、ほう酸回収装置で処理した濃縮液(高濃度ほう酸水)の貯蔵容量を増強するため、ほう酸補助タンク1基を設置し、ほう酸回収装置の運転効率の向上を図ります。



4.新燃料・使用済燃料輸送計画の概要

(1)新燃料集合体輸送計画 【表−4参照】
 美浜発電所3号機、高浜発電所1、2、3号機および大飯発電所1、2、3号機の7プラントで、次回以降の運転に必要な新燃料を確保するため、国内外から合計340体を搬入する計画です。

 
(2)使用済燃料集合体輸送計画 【表−5参照】
 美浜発電所1、3号機、高浜発電所2、3号機および大飯発電所1、2、4号機の7プラントで合計268体の使用済燃料を、再処理を目的に受け入れ施設へ搬出する計画です。

 



5.低レベル放射性固体廃棄物輸送計画の概要 【表−6参照】
 美浜発電所および高浜発電所で発生した低レベル放射性固体廃棄物 2,560本(充てん固化体2,400本、均質固化体160本)を、受け入れ施設へ搬出する計画です。

以 上

表−1 平成20年度 美浜・高浜・大飯発電所の運転計画図
表−2 主要設備の増設および改造工事計画一覧表
表−3 定期検査における新燃料取替計画
表−4 新燃料集合体輸送計画
表−5 使用済燃料集合体輸送計画
表−6 低レベル放射性固体廃棄物輸送計画
図−1
図−2
図−3
図−4
図−5
図−6
図−7
図−8
図−9
図−10
図−11
図−12
図−13
プレスリリース