プレスリリース

2007年10月18日
関西電力株式会社

美浜発電所2号機の定期検査状況について(A-蒸気発生器入口管台溶接部での傷の調査状況について)

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力50万キロワット、定格熱出力
145万6千キロワット)は、第24回定期検査中に、予防保全対策として、蒸気発生器出入口管台(計4箇所)溶接部表面の残留応力を低減させるためにショットピーニング工事※1を実施することとし、9月15日から9月18日にかけて、その施工前確認のための目視点検および渦流探傷試験(ECT)※2を行ったところ、A−蒸気発生器入口管台溶接部においてECTで13箇所の有意な信号指示が認められ、目視点検で1箇所の傷(ECTで有意な信号指示が確認された箇所)を確認しました。
 その後、ECTで有意な信号指示が認められた13箇所で浸透探傷試験(PT)※3を実施したところ、それら全ての箇所において有意な浸透指示模様(最大長さ:約17mm)を確認しました。
 このため、超音波探傷試験(UT)※4で傷の深さを測定した結果、浸透指示模様で最大長さを確認した部位で深さ約13mmの傷を確認しました。この傷の深さを考慮すると、当該管台溶接部の板厚(約68mm)は、電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載している板厚(75mm)を下回るものと評価されました。
 なお、当該管台溶接部以外の3箇所(A−蒸気発生器出口管台、B−蒸気発生器出入口管台)については、ECTの結果、異常は認められていません。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

[平成19年9月25日 お知らせ済み]

<調査状況>
 傷が確認されたA−蒸気発生器入口管台溶接部の内表面について、エッチング※5およびスンプ※6による金属組織観察を行いました。その結果は以下のとおりです。
エッチングによる金属組織観察の結果、傷は主に600系ニッケル基合金溶接部に認められましたが、ステンレス製短管(セーフエンド)部にも一部認められました。
最も傷が深かった箇所(長さ約17mm、深さ約13mm)についてスンプ調査を実施した結果、長さ約3〜5mmの複数の割れが軸方向に断続的に存在し、600系ニッケル基合金溶接部内の結晶境界※7に沿った割れでした。この割れの特徴は、これまで国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されている応力腐食割れと同様の様相でした。
セーフエンド部で認められた傷についてスンプ調査を実施した結果、粒界に沿って枝分かれした割れが複数認められました。これらについては、内面からのUTの結果から、ごく表層の割れ(深さ約5mm未満)と評価しています。

<今後の予定>
 割れが発生した原因について詳細に調査するため、11月下旬頃に、A−蒸気発生器の入口管台溶接部および配管の一部を切断し、試験研究機関に搬出して、破面観察や化学成分分析等の調査を実施する予定です。
 このため、今後の定期検査工程(当初計画では発電再開時期を11月上旬としていた)については現時点では未定です。

以  上

※1: ショットピーニング工事
金属表面に金属の玉を高速度でたたきつけることにより、金属表面の引張残留応力を圧縮応力に変化させる工事。
   
※2: 渦流探傷試験(ECT)
材料表面に渦電流を流して、材料に発生する電磁誘導の変化から検査対象の傷を検出する方法。
   
※3: 浸透探傷試験(PT)
試験体表面に開口している傷を目で見やすくするため、可視染料の入った高浸透性の液を浸透させた後、余分な浸透液を除去し、現像剤により浸透指示模様として観察する方法。
   
※4: 超音波探傷試験(UT)
構造物に入射した超音波が欠陥に当たって跳ね返ってくる反響を観察することにより、欠陥の形態、形状、寸法を調べる方法。
   
※5: エッチング
金属の表面を磨いた後、しゅう酸水溶液等により表面を腐食させ、溶接部や母材部などの金属組織の違いを出現させて光学顕微鏡で観察する方法。
   
※6: スンプ
損傷部の表面にフィルム等を貼り付け写し取り、これを顕微鏡で観察。金属サンプルを切り出すのと同様に、損傷部の金属組織の調査が可能。
   
※7: 結晶境界
溶接部では、溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶(デンドライト結晶)ができる。
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