プレスリリース
2006
2006年9月19日
関西電力株式会社
高浜発電所3号機の定期検査状況について(「B-蒸気発生器水位異常低」警報発信による原子炉自動停止の原因と対策)
高浜発電所3号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、第17回定期検査のため出力降下中の8月18日23時55分、電気出力約11%にてB系統の給水制御を主給水流量制御弁から主給水バイパス流量制御弁へ切替操作を行っていたところ、「B−蒸気発生器※1水位異常低」警報が発信し、原子炉が自動停止しました。
事象発生時の状況は、主給水バイパス流量制御弁が開かなかったため、B−蒸気発生器の水位が低下しました。このため、運転員は自動切替操作を中止し、手動で蒸気発生器水位の回復操作を行いましたが、水位低下が継続し原子炉が自動停止しました。
その後、当該弁の動作試験を実施した結果、弁開度を調整するポジショナの入力信号(弁開度要求信号)に対する出力信号(弁開度調整信号)の応答が遅いことが確認されました。
INES:国際原子力事象評価尺度
事象発生時の状況は、主給水バイパス流量制御弁が開かなかったため、B−蒸気発生器の水位が低下しました。このため、運転員は自動切替操作を中止し、手動で蒸気発生器水位の回復操作を行いましたが、水位低下が継続し原子炉が自動停止しました。
その後、当該弁の動作試験を実施した結果、弁開度を調整するポジショナの入力信号(弁開度要求信号)に対する出力信号(弁開度調整信号)の応答が遅いことが確認されました。
※1: | 高浜発電所3号機には、蒸気発生器はA,B,Cの3台があり、そのうちの1台の水位が低下。 |
ポジショナは、制御弁への開度要求信号に応じ弁の開度を正確に維持するための装置で、弁への駆動空気圧を調整します。ポジショナ内部の調整弁(パイロット弁)の弁棒(パイロットステム)が上下動することにより、弁開度調整信号(空気圧)を出力します。出力信号を受けたブースタリレーは、その信号に応じた駆動用空気を弁に供給し、弁が開閉します。
今回の事象を受けて、A〜C−主給水バイパス流量制御弁のポジショナを工場に持ち帰り、詳細点検を実施しました。
1.ポジショナの工場調査結果等 | ||||
○ | 当該ポジショナの分解点検の結果、部品に損傷等の異常は認められませんでしたが、パイロット弁の弁棒上部とそのまわりのスリーブ(内筒)やシートに黒色の固体状の付着物(約0.4mg)が認められ、成分分析の結果、硫酸アンモニウム※2が主成分であることが確認できました。 | |||
○ | 残りのA弁およびC弁のポジショナについても、当該ポジショナと同じ場所に黒色の付着物が認められましたが、その付着量は少ないものでした。 | |||
○ | なお、主給水バイパス流量制御弁本体および制御系には異常は認められませんでした。 | |||
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2.パイロット弁内部の付着物に関する調査 | ||
○ | 通常運転中の状態(主給水バイパス流量制御弁全閉)を模擬した試験において、ブースタリレーの排気口からパイロット弁内部に外気が吸い込まれることが確認されました。 | |
○ | これは、パイロット弁の弁棒とスリーブの間にあるごくわずかな隙間を介して、供給空気(弁開度調整信号用)が上部軸端側から排出される際に、パイロット弁内の圧力が低下することにより、外気が吸い込まれるものと推定されました。 | |
○ | これらのことから、パイロット弁内部に外気が吸い込まれるのに伴い、硫酸アンモニウムが流入し付着した可能性があると推定されました。 |
3.付着物(硫酸アンモニウム)の発生源 | ||||
○ | 発電所内で硫酸アンモニウムが発生する可能性のある設備を調査した結果、復水処理装置再生排水処理設備(ETA処理装置)※3が該当しました。 | |||
○ | この設備は当該弁がある主給水配管室の近くに位置し、主給水配管室の外気取り入れ口は夏期に開放されていることから、硫酸アンモニウムが室内に流入しやすい状況にあったものと推定されました。 | |||
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4.推定原因 | ||
○ | 通常運転中に、ETA処理装置から排出された硫酸アンモニウムが、主給水配管室の外気取り入れ口から室内に流入し、ブースタリレー排気口からパイロット弁内に取り込まれ、弁棒上部に硫酸アンモニウムが堆積しました。 | |
○ | 給水制御を主給水流量制御弁から主給水流量バイパス制御弁に切り替えた時、パイロット弁の弁棒上部とそのまわりのスリーブやシートに付着した硫酸アンモニウムが弁棒の動きを阻害し、弁開度要求信号が出力されているにもかかわらず、主給水流量バイパス制御弁が開かなかったものと推定されました。 |
5.対 策 | ||
○ | 主給水流量バイパス制御弁(3台)のパイロット弁を新品に取り替えます。 | |
○ | 硫酸アンモニウムの流入を防ぐため、主給水配管室の外気取り入れ口は閉止することとします。 | |
○ | 次回定期検査において、主給水流量バイパス制御弁が開放したことを検知した後、主給水流量制御弁が閉止する給水切替プログラムに変更します。また、それまでの間、給水制御切替前に、手動で当該弁の開閉確認を実施し健全性を確認します。なお、切替中に「主給水制御弁自動切換流量注意」警報が発信した場合は、切替操作を中止します。これにより、それ以上の給水流量の低下を抑制することが可能となります。 |
以 上
(経済産業省によるINESの暫定評価)
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