プレスリリース
2006
2006年1月25日
関西電力株式会社
SiC(シリコンカーバイド)製高耐圧インバータの開発について~SiC素子を用いた100kVA級3相インバータの開発に成功~
当社は、このたび100kVAを超える電力容量を有するSiC製高耐圧インバータ(*1)装置の開発に成功しました。この電力容量は、当社のSiC製インバータの開発目標値であり、SiCインバータとしては世界最大となります。
従来のインバータではSi(シリコン)製のパワー半導体素子(*2)が用いられてきましたが、SiはSiCに比べて耐電圧性能や耐熱性能が低い上、電力損失が大きくインバータの電力容量が大きくなると高温になるため、大規模な冷却装置が必要になるなどの欠点がありました。
このため当社は、平成9年から耐電圧性能が高く、電力損失が少ないSiCパワー半導体素子を用いたインバータの開発を開始し、平成16年には全てのパワー半導体素子の部分にSiCを用いた12kVAインバータの開発と電力線への接続に成功しました。
今回、さらなるSiC素子の構造改良と素子面積の拡大(注1)、および電流増加に伴う熱、ノイズ等の影響を抑える様々な技術(注2)の開発に取り組んできた結果、従前の9倍以上である110kVAの電力容量を達成しました。この値は、国内外の他社が達成している7kVA程度と比べて格段に大きいものであり、冷却装置等を含めたシステム全体の小型化・高効率化等の面で、すでに製品化されているSi製高耐圧インバータを超えるSiC製高耐圧インバータの実用化に近づいたものと言えます。
今回開発した100kVA級SiCインバータの至近の用途としては
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風力発電設備を電力系統に接続する際の電圧調整装置 |
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燃料電池や産業用大型バッテリー等の電池類から出力される直流から交流への変換装置 |
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トンネルに設置されている排風機等の大出力モーター用速度制御装置 |
また、SiCの用途の広がりとともにSiC素子の量産化、低価格化が進めば、電気自動車等への利用も進んでいくものと思われます。
さらに、従来のSi製インバータと比べ電力損失をこれまでの半分以下(SiC:約1.4%、Si:約3.5%)にできると見込まれることから、産業界全体の省エネ、CO2排出量抑制による地球環境保全にも貢献することができます。
当社は今後、更なる大容量化、高性能化のための研究開発と並行して長時間運転等の装置性能の実証試験を行う予定です。
【参考:100kVA級SiCインバータの諸元】
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(*1)インバータ | |
電気の直流・交流を変換したり、周波数の変換を行う機器で、エアコンや各種モーターの制御に広く用いられているほか、燃料電池や太陽電池を電力系統に接続するためにも欠かせない装置 | |
(*2)パワー半導体 | |
電流のオン・オフや電流の方向等を制御する半導体の中でも、耐電圧12V以上で電流容量が0.1A以上の半導体の総称。パワーが大きいことから、電力制御機器等に使用されている。 | |
(注1) | |
SiC素子構造の改良と素子面積の拡大については、米国クリー社との共同研究で実施した。 | |
(注2) | |
熱の影響の抑制に関して、高耐熱絶縁樹脂(ナノテクレジン)は旭電化工業(株)との共同研究で開発した。 |
以 上
【参考:株式会社クリー社の概要】 | |||
株式会社クリー社(Cree,Inc.) | |||
設 立 | : | 1987年 | |
資本金 | : | 91,000ドル | |
代表者 | : | Charles M. Swoboda (President & CEO) | |
本 社 | : | 4600 Silicon Drive Durham,NC27703 USA | |
事業内容 | : | 炭化シリコン(SiC)系、窒化ガリウム(GaN)系およびその関連化合物の半導体材料とデバイスの開発・製造 | |
【参考:旭電化工業株式会社の概要】 | |||
設 立 | : | 1917年(大正6年) | |
資本金 | : | 226億円 | |
代表者 | : | 取締役会長兼最高経営責任者 岩下 誠宏 取締役社長兼最高執行責任者 中嶋 宏元 |
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本 社 | : | 東京都中央区日本橋室町2丁目3番14号古河ビル | |
事業内容 | : | 化学品・食品の製造販売 |