定格熱出力一定運転中の11月2日14時28分、「原子炉トリップパーシャル作動」※1警報が発信しました。ただちに、関係パラメータを確認したところ、3チャンネルある加圧器圧力系検出器のうち、1チャンネルの圧力指示計の値が計測上限値である17.2MPa以上(通常 約15.42MPa)に上昇していました。その後14時32分に当該チャンネルの圧力指示計の値が通常値に復帰するとともに、発信した警報も停止しました。この間、他の圧力指示計(2チャンネル)は通常値を示し、加圧器水位や温度などその他のパラメータについて、異常は認められませんでした。以上のことから、加圧器圧力検出系の当該チャンネルが正常に動作していない可能性があると考え、同日15時15分に保安規定の運転上の制限※2を満足していないと判断し、運転上の制限を満足するために必要な措置(当該チャンネルの検出ラインで使われているすべての警報回路の上流に、原子炉トリップ信号を模擬入力すること)を行い、17時14分に運転上の制限を満足する状態に復帰させました。
加圧器圧力検出系は、圧力検出器からの信号を分岐させ、圧力指示計と警報回路に入力しています。今回の事象では、圧力指示計の値が上昇するとともに、警報も発信していることから、信号分岐の上流側の機器で異常があったものと推定されました。このため、信号分岐の上流側の機器(圧力検出器※3、チャンネルテストカード※4、電源カード※5)での異常と判断し、これらについて外観目視点検、特性試験等を行ないましたが、異常は認められませんでした。
今回の原因は、当該チャンネルの圧力検出器、チャンネルテストカードおよび電源カードのいずれかにおいて一過性の不具合が発生し、17.2MPa以上の圧力信号が、圧力指示計および警報回路に一時的に入力され、「原子炉トリップパーシャル作動」警報が発信したものと推定されました。
対策として、当該チャンネルの圧力検出器、チャンネルテストカードおよび電源カードを予備品に取り替え、健全性を確認した後、11月3日1時48分に原子炉トリップ信号の模擬入力を外し、通常状態に復帰させました。
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原子炉を停止(トリップ)させる信号は、3チャンネルで構成されており、そのうち2チャンネルの信号が同時に発信すれば、原子炉は自動停止するが、今回は1チャンネルのみが発信したため原子炉がトリップする条件の1つが成立した部分作動の状態をいう
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※2 |
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加圧器の圧力検出系の3チャンネルが動作可能な状態 |
※3 |
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加圧器の圧力を検出して、圧力を電気信号に変換し、信号を伝送する計器 |
※4 |
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検出器からの電気信号を入力するとともに、当該チャンネルの健全性について模擬信号を入力して、テスト、確認をするためのカード |
※5 |
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当該チャンネルに電源を供給するためのカード |
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