プレスリリース

2005年7月20日
関西電力株式会社

大飯発電所2号機発電機固定子冷却水のわずかな漏えいの原因と対策について

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、定格熱出力で調整運転中(第19回定期検査中)のところ、7月16日12時20分頃、当社運転員がタービン建屋の巡回点検を実施していたところ、建屋2階面の上方(発電機下部付近)から水が滴下していることを発見しました。直ちに現場付近を確認したところ、発電機固定子冷却水系統の計装用取出し配管フランジ溶接部から、冷却水が霧状に漏えい(約1.3リットル/時間)していることを確認しました。
 本事象による環境への影響はありません。
  発電機固定子冷却水系統:発電機運転中、固定子が高温とならないよう、固定子内部に冷却水を送り込んで、固定子を冷却する系統。
  発電機固定子 :発電機の中で、電気を発生させるための磁場をつくる装置。
  計装用取出配管:発電機固定子冷却水系統を流れる水の、圧力差の有無を確認するための配管。
[平成17年7月16日お知らせ済み]

 当該箇所の点検および補修を実施するため、7月16日23時57分から出力降下を開始し、翌17日7時に発電を停止しました。(原子炉は停止せず臨界状態で維持)
 その後、調査を行った結果は以下のとおりです。

1.調査結果
  (1)外観目視点検および浸透探傷検査等
      計装用取出し配管(以下「当該配管」)の発電機下部フランジ溶接部について外観目視点検を実施した結果、漏えい箇所は明確にわかりませんでしたが、浸透探傷検査を実施した結果、配管外面の溶接境界に約55mmの指示模様が認められました。また、配管内部の同位置にも約40mmの指示模様が認められました。
      指示模様が認められた箇所を切断し、破面観察を行った結果、配管の外面から内面へ向かって、疲労破面の特徴であるビーチマーク模様(砂浜に残る波跡に似た縞模様)が確認されました。
      配管を固定しているフランジ部のボルトについては、規定のトルク値以上で締め付けられていました。
  (2)配管の振動計測等
         当該配管を取り外す前に、割れが存在していた状態で測定した当該配管の固有振動数を(配管が持つ固有の振動数)を計測した結果、配管長手方向で116Hzでした。また、発電機本体の運転に伴う振動数は120Hzでした。
  (3)点検・補修履歴調査
         当該配管は、発電機の乾燥のため、毎定期検査時に取り外していますが、作業性および作業の安全性向上の観点から、今定期検査において、当該配管を部分的に取り外せるように、当該配管に新たにフランジ接続部を取り付けました。
  (4)疲労割れに関する調査(発生メカニズム)
      当該配管の固有振動数は、割れが存在する状態において116Hzと計測されましたが、解析により、割れが発生する以前の固有振動数は約120Hzとなると推定されました。
      このため、当該配管と発電機(120Hz)の共振により、発電機下部のフランジ部に加わる応力が増大し、疲労限を超える繰返し振動応力(約40〜55MPa)が加わることがわかりました。
      なお、フランジ接続部を取り付ける前の固有振動数を解析により求めたところ、128Hzであったことから、今定期検査でフランジ接続部を取り付けたことにより、当該配管の固有振動数が120Hzに低下したものと推定されました。
       
  疲労限:疲労割れを起こす応力。解析の結果、当該箇所の疲労限は約28MPaと評価される。

2.推定原因
   今定期検査で、発電機固定子冷却水系統の計装用取出し配管の途中に新たにフランジ接続部を取り付けたことにより、当該配管の固有振動数が、発電機本体の振動数と一致し、配管が共振したことで、発電機下部のフランジ溶接部に疲労限を超える応力が働いたため、高サイクル疲労割れが発生、進展し、漏えいに至ったものと推定されました。
 なお、新たにフランジを取り付ける工事の計画段階において、振動による影響に着目した評価を行わなかったことが、今回の事象の要因となったものと考えられます。

3.対 策
      発電機下部から新たに取り付けたフランジ部までの配管を新しいものに取り替えます。また、発電機本体との共振を回避するため、サポートを2箇所追加設置します。
      従来から、設備重要度が高い回転機器などの付属配管取り付け工事等については、工事計画段階で、設備影響評価を行うこととしていますが、今後は評価対象機器を明確化し、発電機などの回転機器に関する工事についても、確実に事前に評価を実施することとします。

 今後、配管の取り替えを行い、サポートで固定した後、固有振動数の測定を実施して問題の無いことを確認したうえで、7月21日午後にも発電機を接続(並列)し、調整運転を再開する予定です。

以 上

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