プレスリリース

2005年6月20日
関西電力株式会社

美浜発電所1号機補助建屋排気筒のひび割れおよびドレン管の接続不良の原因と対策について

 美浜発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力34万キロワット、定格熱出力103万1千キロワット)は、平成17年4月25日から第21回定期検査中ですが、4月28日、原子炉補助建屋排気筒の目視点検※1 を実施していたところ、12時10分頃に、排気筒下部に接続されているドレン管※2 2本が外れていること、および当該ドレン管取り付け部の排気筒底板にひび割れがあることを確認しました。
  このため、補助建屋内での放射性物質の発生を伴う作業を直ちに一時中断するとともに、排気筒からの排気を停止させるため、補助建屋送気ファンおよび排気ファンを12時53分に停止しました。
  本事象による環境への放射能の影響はありません。

※ 1:  国内の原子力発電所で発生した補助建屋排気筒のひび割れに対する点検として実施しているもの。
※ 2:  ドレン管:排気筒内に溜まった雨水等のドレンを排出するライン。

〔平成17年4月28日お知らせ済み〕

 原因調査のため、ドレン管(2箇所)を取り外すとともに、ひび割れが認められた排気筒底板(以下「底板」)の一部を切り出したうえで仮補修を行い、4月30日14時57分に補助建屋排気ファンおよび送気ファンを起動し、補助建屋の送排気を通常状態に復帰させました。


1.調査結果
   (1) 外観点検結果
   切り出した底板(ステンレス鋼:厚さ1.2mm)や、取り外したドレン管スリーブ部(ステンレス鋼:外径約70mm、厚さ約5mm)の外観点検を実施しました。
  底板外側のドレン穴(2箇所:直径約62mm)周辺に、合計10箇所のひび割れ(最大長さ約110mm)が確認されました。ひび割れの長さや形状は、内側と外側でほぼ一致していましたが、底板内側では合計12箇所のひび割れが確認されました。
  ドレン管スリーブ部は、底板内側で溶接により取り付けられていましたが、その溶接部で破断していました。


   (2) 断面および破面調査結果
   底板およびドレン管スリーブ部を切断し、破断部および断面の調査を実施しました。
  底板とドレン管スリーブ部との溶接部が割れたことにより、ドレン管が外れたことが確認され、溶接部の厚さは、薄いところで約0.5mmでした。
  破面観察の結果、高サイクル疲労割れの特徴である組織依存型破面※3 が確認されるとともに、一部に延性破壊により生じるディンプル(くぼみ)模様も確認されました。
       ※3:組織依存型破面 疲労破面に現れる、金属組織に似た破面。


   (3) ドレン管の施工経緯
   ドレン管(スリーブ部を含む)の具体的な施工方法について、聞き取り調査を実施した結果、以下のことが判明しました。
  建設当初、当該ドレン管は底板に溶接施工されていましたが、ドレン管の下端は固定されていませんでした。
  昭和57年、ドレン管から排出されていたドレン(雨水)を放射性廃棄物として回収処理するため、以前のドレン管を取り外し、新たなドレン管を底板に溶接するとともに、建屋内までの配管ルートを敷設したため、ドレン管の下端を固定することとなりました。


   (4) 疲労割れに関する調査
   破面が高サイクル疲労割れの特徴を示していたことから、疲労割れに関する調査を行いました。
  現場形状を模擬したモデルにより振動解析を行った結果、ドレン管の下端が固定された状態では、排気筒内を流れる排気による底板の振動により、底板とドレン管の接続溶接部に繰返し応力が発生し、溶接部厚さが薄い箇所(約0.5mm)には疲労限※4 を超える応力(最大約17.5MPa)が加わることがわかりました。
       ※4:疲労限:疲労損傷を起こす応力。文献調査では11.5MPaと評価された。


2.推定原因
   排気筒内を流れる排気による底板の振動により、溶接部厚さが薄い箇所で疲労限を超える繰返し応力が働いたため、疲労割れが発生したと推定されました。
  溶接部の疲労割れが徐々に全周に広がる過程において、繰返し応力が底板にも加わり、底板にひび割れが発生するとともに、最終は延性破壊によりドレン管が底板から外れたと推定されました。


3.対策
   

 補助建屋排気筒の一部を、剛性(頑丈さ)向上による振動抑制のため、底板の板厚(1.2mm → 3.0mm)およびドレン管と底板の溶接部の構造等を変更した、新しいものに取り替えます。

 なお、格納容器排気筒については、ドレン管の外れ等の異常は確認されませんでしたが、補助建屋排気筒と同様の方法でドレン管が取り付けられていることから、排気筒の一部を剛性向上による振動抑制対策を講じたものに取り替えます。



以 上


(経済産業省によるINESの暫定評価)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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INES:国際原子力事象評価尺度

 

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