プレスリリース

2005年4月22日
関西電力株式会社

美浜発電所1号機 B-充てんポンプマニホールドカバーボルトの折損の原因と対策について

 美浜発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力34万キロワット、定格熱出力103万1千キロワット)は、定格熱出力一定運転中のところ、3月19日10時40分頃、当社運転員の巡回点検において、原子炉補助建屋地下1階の充てんポンプ室にあるB-充てんポンプ※1 のNO.1シリンダ吸込み側マニホールドカバー※2 のボルト4本のうち3本が折れ、ナットとともに床面に落ちていることを発見しました。また、当該マニホールドカバーのボルト4本を除く残り32本のボルトの締め付け状態を確認したところ、NO.2シリンダ吸込み側マニホールドカバーのボルト1本が折れていること、および残りのボルト(31本)のうち、28本のボルトでトルク値が目標締め付けトルク値※3 より低いことが認められました。
  また、運転中のA,C-充てんポンプのボルト全数(72本)の締め付け状態を確認した結果、吐出側および吸込み側マニホールドカバーのボルトの一部に、目標締め付けトルク値より低い箇所が認められ、締め付けを行いました。
  この事象により1次冷却水の漏れはなく、環境への放射能の影響はありません。

〔平成17年3月22日お知らせ済み〕

※ 1:  充てんポンプ:
1次冷却材系統の水質、保有水量等を調整する系統(化学体積制御系)で浄化した1次冷却水を、1次冷却材系統へ送り込むポンプ(往復ポンプ)。美浜1号機の充てんポンプは、シリンダが3つ連なっており、シリンダ内をプランジャーが往復運動することにより水を送り出す構造。充てんポンプは3台(A,B,C)あり、通常2台が運転している。
※ 2:  マニホールドカバー:
充てんポンプのシリンダをつなぐマニホールド(集合管)のカバー、1つのシリンダの吸込み側と吐出側に、それぞれ4本のボルトで取り付けられている。
※ 3:  マニホールドカバーボルト24本(吸込み側12本+吐出側12本)は196N・m、リキッドシリンダーカバーボルト12本は294N・m。 トルク値は、ネジを締め付ける効果を表し、力の大きさ(N:ニュートン)と力点から回転の中心点までの長さ(m)の積。


1.当該ポンプのボルトに関する調査結果
   (1) 外観観察等
  ボルト全数(36本)について外観観察を行った結果、折損ボルト4本と、残存ボルト(NO.1シリンダマニホールドカバーボルトのうち折損していないボルト)1本を除き、他のボルト31本に異常は認められませんでした。
  折損ボルト4本の折損位置は、いずれもナットとマニホールドカバーとの締め付け面の付近でした。
  材料証明書により、ボルト材料の成分や強度は規格値を満足していることを確認しました。また、折損および残存ボルトについて寸法測定を実施した結果、図面指示と同様であり、問題ないことを確認しました。


   (2) 浸透探傷検査
  ボルト全数について、浸透探傷検査を実施した結果、NO.1シリンダ吸込み側マニホールドカバーボルト4本(うち折損ボルト3本)と、NO.2シリンダ吸込み側マニホールドカバーボルト3本(うち折損ボルト1本)のねじ部に、有意な浸透指示模様が認められました。
  指示模様は、主にマニホールドカバーとナットの締め付け面付近に認められました。一部のボルトは、植え込み部にも指示が認められましたが、これは、ボルト折損により残存ボルトに2次的な力(曲げ応力)がかかったためと推定されました。


   (3) 破面観察
  折損ボルト及び残存ボルトについて破面観察を行った結果、き裂の起点はボルト外表面のねじの底部で、起点部は平坦で、疲労損傷の特徴である組織依存型破面※4 が認められました。
  破面には腐食や酸化物などの付着が認められないことから、き裂は、前回定期検査以降の運転期間中に発生、進展したものと推定されました。
       ※4:組織依存型破面 疲労破面に現れるもので、金属組織に似た破面。


2.疲労損傷に係る調査結果
  ボルトの疲労損傷の発生要因を調査した結果、ポンプの運転に伴う流体の圧力変動(0.2~16.9MPa)が考えられました。
  解析および試験により、その影響を確認した結果、ボルトの締め付けトルク値が50N・mを下回る場合には、ポンプの運転に伴う圧力変動によって、ボルトに疲労限(疲労損傷を起こす変動応力)を超える変動応力が働く可能性のあることがわかりました。


3.ボルト締め付けに関する調査結果
   (1) 前回定期検査での作業状況
  当該マニホールドカバーは、毎定期検査で分解(点検)組み立てを行っています。
  作業要領書では、片締めが生じないよう、目標トルク値や、数回に分けて締め付けることが注意事項として記載されているが、実際の締め付けトルク値を記録することの要求はありませんでした。
  作業員への聞き取り調査の結果、作業手順としては、手締め、メガネレンチ、トルクレンチの順で段階的にボルトを締め付けていることがわかりました。


   (2) 作業再現試験
  聞き取り調査をもとに、ボルトの締め付け作業を再現した結果、手締め後にメガネレンチで締め付けた場合、トルク値は140N・m以下でばらつき、低い値では40N・m以下となることが確認されました。
  メガネレンチで締め付けた状態からトルクレンチを用いて、目標トルク値(196N・m)で締め付けた場合、一部のボルトでトルク値が100N・mまで低下することが認められました。
  トルクレンチで締め付けた後、再度、目標トルク値で締め付けた場合(再確認締め)には、全てのボルトがほぼ目標トルク値で締め付けられることが確認されました。
     
     ボルト締め付け状態の確認結果や作業再現試験の結果から判断すると、吸込み側マニホールドカバーボルトについては、手締め後にメガネレンチで締め付けたのみであった可能性が高いと推定されました。


4.推定原因
      前回の定期検査において、当該ポンプの開放点検後の組み立て時に、吸込み側マニホールドカバーボルトについて、適正な締め付け力が確保されていなかったものと推定されます。このため、ポンプの運転に伴う圧力変動により、ボルトに疲労限を超える変動応力が加わり、き裂が発生・進展し、折損したものと推定されました。


5.対策
   今後は、ボルトの締め付け力が確実に確保されるよう、トルクレンチを用いて段階的に締め付け、最後に再確認締めを行うことや、締め付けの各段階においてトルク値を記録することを作業要領書に明記します。
  ボルト全数(36本)を新品に取り替えた上で、改訂された作業要領書に基づきボルトの締め付けを行い、当該ポンプを復旧します。
  今回の事象を踏まえ、当該ポンプと同タイプのポンプ等について作業要領書を改定し再発防止を図ります。また、トルクによるボルトの締め付け管理を実施している安全上重要な機器について、作業要領書や作業記録が適切であるかどうか確認していくこととします。

以 上


(経済産業省によるINESの暫定評価)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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INES:国際原子力事象評価尺度

 

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