プレスリリース

2004年6月23日

大飯発電所1号機の定期検査状況について(燃料取替用水タンクの変形についての原因と対策)

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、平成16年6月4日から第19回定期検査を実施中ですが、6月10日からの燃料取出準備のため、原子炉キャビティに燃料取替用水タンクから水張りを行ったところ、平成16年6月10日8時40分頃、当社社員が燃料取替用水タンクの上部付近が変形していることを発見しました。
 直ちに、当該タンク付近を確認したところ、燃料取替用水タンクからの漏えいはなく、環境への影響はないことを確認しました。

[平成16年6月10日 お知らせ済]

 当該燃料取替用水タンクの変形状況や、タンクに取り付けていた仮設ダクトホースの取り付け状況などについて調査を行いました。調査結果および推定原因と対策は以下のとおりです。


1. 調査結果
(1) 燃料取替用水タンクの状況

  • 変形状況は、燃料取替用水タンク(以下タンク)の高さ約9mから約13.5mの範囲[胴板5段目(肉厚6.0mm)と6段目(肉厚5.0mm)]でほぼ全周にわたりタンクの内側に変形(最大約1.7m)していました。
    また、一部で変形に伴う損傷(開口)も確認されましたが、タンク外部への水漏れ等の異常は確認されませんでした。
  • 超音波によるタンク胴板の板厚調査、タンクの製作記録調査から、施工方法、材料、寸法等、設計どおりであることを確認しました。

(2) 仮設ダクトホースの取り付け状況

  • タンク屋根部に2箇所ある空気抜き管のうち、6インチ径の空気抜き管に取り付けていた仮設ダクトホースは、タンクの水位が上昇する際に排気されるタンク内の空気に、微量の放射性ガスが含まれる可能性があるため、より厳密に管理する観点から、平成12年度の第16回定期検査以降、建屋内(管理区域)に排気するように、定期検査の都度取り付けていました。
    なお、3インチ径の空気抜き管はテープで目張りしていました。
  • 平成12年度の時点では、タンクの水位低下時にはダクトホースの影響でタンク内部の圧力が低下する可能性があることから、原子炉キャビティからタンクに水を戻す時のみ、仮設ダクトホースの取り付けとテープの目張りを行いましたが、平成13年度に作業を協力会社に発注した際には、タンクの圧力低下に関する認識が薄れていたため、その内容が徹底されず、工事仕様書等に盛り込まれませんでした。このため、今回の定期検査においても、タンクから原子炉キャビティへの水張り前からダクトホースの取り付けとテープの目張りを行っていました。
  • 仮設ダクトホースの布設状況を確認したところ、建屋内でダクトホースがたるんでいた部分があり、その部分が倒れ、ダクトホース内の空気の流路が狭くなっていました。
    また、タンク側面部のダクトホースは、閉塞状態に近い楕円状につぶれていました。
  • ダクトホースの仕様を確認したところ、楕円状につぶれていたタンク側面部のダクトホースの補強材(鉄製)は、今回から、他の部分(従来のもの)と比べて補強材の間隔が広いものが使用されており、再現試験を実施した結果、間隔が広いダクトホースは、間隔が狭いものに比べて、ダクトホース内部の圧力が低下した際、よりつぶれやすいことが確認されました。

2. 推定原因
 タンクの水位上昇を伴う原子炉キャビティからタンクに水を戻す作業時にのみ、仮設ダクトホースの取り付けとテープの目張りを行うこととしていましたが、その運用が工事仕様書等に記載されておらず、タンク水位の低下を伴う原子炉キャビティへの水張り作業前にダクトホースの取り付けとテープの目張りがされていました。
このため、以下のメカニズムにより、タンクが変形したものと推定されました。

  • 建屋内のダクトホースの一部たるんだ状態で設置されていた。
  • 燃料取り出し準備のためタンクから原子炉キャビティへ水張りを行った際、空気の流れ(タンク方向)により、たるんでいた建屋内のダクトホースの一部が倒れ、タンクへの空気の流れが悪くなりタンクやダクトホース内の圧力が低下した。
  • ダクトホース内の圧力が低下したことにより、強度が低い(補強材の間隔が広い)タンク側面部のダクトホースが楕円状につぶれ、タンクへの空気の流れが遮られた。
  • さらに水張りを継続したことにより、タンク内部の圧力がさらに低下し、タンクがタンク外の圧力(大気圧)に耐えられなくなり、変形に至った。

3.対策

  • 原子炉キャビティからタンクに水を戻す時のみ、仮設ダクトホースの取り付けとテープの目張りを行うことを、放射線管理に関する発電所内の規則および当該工事の工事仕様書等に明確に記載します。
  • 燃料取替用水タンクの変形した範囲を同仕様の胴板に取り替えます。
    なお、次回定期検査で恒設の排気ラインが取り付けられた新しいタンクに取り替えることになっており、取り替え後は、仮設ダクトホースは使用しません。

今後、平成13年度に作業を協力会社に発注した際に、仮設ダクトホースの運用について、工事仕様書等に盛り込まれなかったことなどの背景を、引き続き調査を継続する予定です。                   

以 上

 

 

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