プレスリリース

2003年2月12日

高浜発電所1号機の原子炉起動および調整運転の開始について

1. 今回の定期検査を利用して実施した主要な工事
  (1)1次冷却材ポンプ供用期間中検査       (図-1参照
    1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、3台ある1次冷却材ポンプのうち、B-1次冷却材ポンプについて、主フランジボルト並びに同締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検しました。
 
  (2)原子炉容器供用期間中検査
   原子炉容器の供用期間中検査として、原子炉容器の溶接部等について、計画的に超音波による探傷検査を行い、健全性を確認しました。
 
  (3)原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事       (図-2参照
   海外における原子炉冷却系統設備の損傷事象等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、原子炉冷却系統設備の余熱除去系統等の配管の一部について、材質等を変更したものに取り替えました。
 
  (4)出力領域計測装置検出器取替工事
   信頼性維持の観点より、原子炉運転時の出力状況を監視するために原子炉外に設置している出力領域計測装置の検出器(全8個中2個)を計画的に取り替えました。
 
  (5)放射線管理用計測装置検出器取替工事       (図-3参照
     保守性向上の観点より、エリアモニタ検出器(*1)全数およびプロセスモニタ検出器(*2)の一部をGM管検出器(*3)から、部品調達が容易で現検出器と同等の性能を有する半導体検出器に取り替えました。
(*1)エリアモニタ検出器
 管理区域内および中央制御室等、運転員他が立ち入る区域の放射線量率を測定・監視している検出器。
(*2)プロセスモニタ検出器
 発電所の各系統の流体(水、ガス等)から放出される放射線を測定し、放射性物質の漏えいを検知する検出器。
(*3)GM管
 ガラス管の中心部と側面に電極を設けガスを封入したものであり、電極に高電圧を印加して使用する。管内に入射した放射線によりガスが電離され、外部へ電気信号を発信する。発案者の名前をとってガイガー・ミューラー管(計数管)、略してGM管と呼ばれている。
       
  (6)海水ポンプ取替工事       (図-4参照
   4台ある海水ポンプについて、主軸およびケーシング等が常時、海水に浸っていることから、耐腐食性に優れた材質のものに取り替えました。    
   
  (7)原子炉容器照射試験片取出工事
   中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を定期的に把握するため、原子炉容器内部に設置している照射試験片を計画的に取り出しました。
 
  (8)炉内計装筒管台予防保全対策工事       (図-5参照
   炉内計装筒管台(全50本)の1次系水質環境下における応力腐食割れに対する予防保全対策として、金属表面の引張り残留応力を圧縮応力に変えるため、炉内計装筒管台の内表面にウォータージェットピーニング(*4)を施工しました。
   
(*4)ウォータージェットピーニング
 水中にて金属表面に高圧ジェット水の噴霧により生じるキャビテーション気泡崩壊による衝撃圧を利用して、金属表面を塑性変化させ、金属表面の引張り残留応力を圧縮応力に変えるものである。
   
  (9)復水器および2次系熱交換器他取替工事       (図-6参照
   2次系給水系統の水質向上対策として、復水器伝熱管群については、銅合金から耐食性に優れたチタン製に取り替えました。また、給水加熱器および湿分分離加熱器の伝熱管については、銅合金から耐食性に優れたステンレス製に取り替えました。これにより、海水漏えいの未然防止や、蒸気発生器への不純物の持ち込みの低減を図ります。
 
  (10)定格熱出力一定運転に伴う運転管理強化
   定格熱出力一定運転の導入にあたり、運転管理の信頼性を一層向上させるため、発電機出力過大を知らせる警報を制御盤に追設する他、運転情報を管理しているコンピュータのソフト改良や、発電機出力の監視画面を追加しました。
 
2. 蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査(ECT)の結果
   3台ある蒸気発生器のうち、AおよびC-蒸気発生器伝熱管(6,764本)について、健全性を確認するため、渦流探傷検査(ECT)を実施した結果、有意な信号は認められませんでした。
 
3.燃料集合体の検査結果
   燃料集合体(14体)について外観検査を実施した結果、異常は認められませんでした。また、燃料集合体全数157体のうち69体を取り替えました。
 (取替用燃料集合体のうち56体は新燃料集合体。)
 
4.次回定期検査の予定
    平成16年春頃
 
5.炉内計装筒管台に係る保全について        (図-7参照
   炉内計装筒管台は、美浜発電所2号機等の高経年化対策報告書においても、インコネル600合金製であり、高応力条件であることから、運転の長期化に伴い応力腐食割れ発生の可能性は否定できないと記載しています。応力腐食割れの発生要因の一つである応力を緩和し、応力腐食割れの発生を抑制するために、炉内計装筒管台内表面へのウォータージェットピーニングを施工しました。
ウォータージェットピーニング施工前の確認として、50本ある管台全数について渦流探傷検査(ECT)を実施した結果、50本のうち1本(N0.48管台)について、判定基準(深さ3mm)以下の微小な信号指示が認められました。この指示は、深さ1mm以下、長さ32mmと推定され、炉内計装筒管台がおかれている環境(1次系水質)、材料(インコネル600合金)およびプラントの運転時間から、発生初期の応力腐食割れである可能性もあり、今後、経年的に調査を実施することとします。

以 上

 

<参考資料>

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