報告漏れ事故が判明したのは、平成14年9月初旬、社長宛に「平成7年4月20日に北陸支社の椿原発電所で、感電災害が原因の停電事故が発生したにもかかわらず、感電災害に関する報告が適正に行われていない」との匿名の投書があったことが契機であり、これに係わる事実関係については次の通りである。
(1)平成7年4月20日に椿原発電所で発生した事故について
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投書にある平成7年4月20日には、椿原発電所で実施された塗装作業において協力会社災害が発生している。これは、平成7年3月3日から同年6月4日に実施した水車発電機分解点検工事期間中の水車内の塗装作業において、換気不十分等の理由により作業員2名がキシレン中毒となり、救急車にて病院に搬送され、3日間の入院加療を行ったものである。災害発生後には、岐阜県警高山警察署および岐阜県郡上八幡労働基準監督署の現場検証が行われ、その後、同監督署への届け出など必要な報告は適切に行われている。
なお、当日、椿原発電所では当社社員も含めて27名の作業者がおり、以下のような作業を行っていた。 |
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当日の作業内容と作業人員 |
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関西電力 2名 |
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水車発電機分解修繕工事立会 |
協力会社A社 18名 |
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水車発電機分解修繕工事 |
3名 |
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ケーシング他塗装工事 |
機器製造メーカ 4名 |
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オイルリフト装置修理 |
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一方、感電災害が発生すれば、電気事故になるので何らかの保護装置が働き、遮断器が動作する可能性が高い。この情報はオンラインで制御所等に伝送されるので、当日およびその前後の制御所の運転日誌、給電情報記録を調査した。その結果、発電所内で保護装置が働き遮断器が動作した記録はないことが判明した。
これらの調査結果から、投書にある平成7年4月20日には、椿原発電所においてキシレン中毒災害が発生しているが感電災害が発生した事実は無く、また椿原発電所を起因とする停電事故も発生していないことが判明した。
なお、椿原発電所において至近10年間(平成4年以降)に発生している災害は、このキシレン中毒1件だけである。
(2)椿原発電所を起因とする停電事故について
椿原発電所を起因とする椿原地域の停電事故は、過去の事故報告書、運転日誌等の社内記録を調査した結果、至近10年間で平成9年5月29日の1件だけであり、これに関し、事故報告書等の資料の調査および当時の関係者10名への聞き取り調査を行った。
その結果、
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地絡過電圧継電器が動作し、椿原の地域に停電事故が発生した。 |
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事故当時に各作業者がどのような作業をしていたかを聞き取り調査した結果、地絡過電圧継電器の保護範囲である13kV母線近傍で作業していたのは、清掃作業の1名のみであることが判明した。竹箒(又は、はたき)で母線に触れたのではと疑ったが、作業員は無事で、電気ショックも感じていない、アークも見ていないと証言したということであった。(他の作業員も全員の無事を確認) |
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13kV母線を詳細にチェックしたが、アーク痕は発見できなかった。 |
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当日は、水車発電機の分解点検中であり、当社社員を含め44名の多数の作業員が発電所に入所していた。 |
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当日の作業内容と作業人員 |
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関西電力 |
20名
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水車発電機点検(直営作業)および立会 |
協力会社B社 |
14名
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排水ポンプ制御盤修繕、
スラスト循環ポンプストレーナ分解清掃
発電所建物清掃 |
協力会社C社 |
7名
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屋外給水新配管取付および塗装 |
協力会社D社 |
2名
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配電盤改造 |
機器製造メーカ |
1名
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調速機不具合修理 |
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動作した地絡過電圧継電器は、異常が4秒継続しないと動作しないので、作業員の証言からも、清掃中の作業ミスの可能性は考えにくい。
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検討の結果、事故原因は接地型計器用変圧器(GPT)の負担が小さく、GPTのインダクタンスと回路のキャパシタンスで鉄共振を起こしたものと判断し、GPTの負担変更を実施した。 |
との事実が判明した。
これらの調査結果から、平成9年5月29日に椿原発電所を起因とする停電事故が発生した際には、定期点検中の作業員が誤って地絡させてしまった可能性も含めて事故原因の調査検討はしていたが、感電災害はなかったものと判断する。
以上のように、投書に書かれている椿原発電所に関して、記載されている日付に起こった事象および停電事故の両面から調査した結果、投書で指摘された感電事故が発生した事実はないことを確認した。
以 上
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