プレスリリース

2002年3月19日

ラマン増幅を用いた1.3μm(マイクロメーター)帯新型光信号増幅器の開発について


 当社はこの度、既存の光ファイバ網における1.3μm(マイクロメーター:千分の1mm)通信用波長(注1)帯で、20Gbps(ギガビット毎秒:毎秒10億ビット)の超高速光通信を可能にする光信号増幅技術を、世界で初めて開発しました。

 光ファイバによる通信では通常、信号伝送のロスが少ない波長帯である0.8~1.6μm間の、ある特定の波長を用いますが、「1.55μm」という特定の波長付近を除いて、高速・長距離伝送に必要な光増幅技術が確立されていないことから、この1.55μm帯を用いた伝送が主流となっており、現在10Gbps程度の伝送速度が確立されています。しかし、1.55μm帯だけの利用では、将来の大容量通信時代に、光通信インフラ容量が不足することが予想されています。

 今回開発した光信号増幅器は、「ラマン増幅(注2)」という技術を用い、ファイバの組合せ、増幅器の部品接続方法などを独自に構築することで、光信号の歪みが小さいという適性を持ちながら、増幅技術が確立されていなかった1.3μm帯において、従来(2.5Gbps、40km程度)を大幅に上回る20Gbps、80kmという長距離・大容量の無中継伝送(注3)を可能にしました。(増幅器の構成について特許出願中)

 光通信では、波長の異なる複数の光を1本の光ファイバ上で重ねて伝送することができるため、今回開発した光増幅技術を活用することで、既存の光ファイバ上で、1.55μm帯に加えて、1.3μm帯を利用し、両方の波長を用いてさらなる高速・大容量通信を行うことが可能となります。
 また、「ラマン増幅」技術には汎用性があり、他の波長帯の光増幅にも応用できることから、将来的にさらに多数の波長を同じ光ファイバ上で伝送できるようになることが期待できます。

 将来、遠隔医療や遠隔教育、オンラインショッピングなどの高度なアプリケーションをより身近なものとするためにも、ギガ単位の伝送速度に対応する大容量光通信インフラの整備が欠かせません。当社では今後、100Gbpsクラスでの伝送など、この技術の実用化に向け、さらに研究を進めていきます。

以 上 

  (注1)波 長
 秒速30万kmで進む光(電磁波)の波の幅のことで、光の種類を区別する一つの指標。

  (注2)ラマン増幅
 ファイバの中で進む光信号を、強力なレーザー光を用いて増幅させる技術で、1928年に、インドの物理学者ラマンによって紹介された物理現象を応用したもの

  (注3)無中継伝送
 送信器と受信器の間の伝送路に中継器や増幅器等の装置を何も入れない伝送形態。

<参考資料>


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