プレスリリース
2001
2001年1月4日
世界初の4.5kV級超低損失高速SiCトランジスタを開発
当社とCREE社は、平成11年に6kV級SiCダイオ−ドを、また平成12年には12kV級SiCダイオードを各々世界で初めて開発に成功し、その後も電力用途への実用化を目指して研究を進めてきましたが、今回も共同で、定常電力損失がSiトランジスタ(MOSFET)の1/100以下という画期的な高性能をもつ4.5kV級SiCトランジスタSEFETを世界で初めて開発しました。(SEFET:Static Expansion channel Field Effect Transistor)
【開発の概要】
新トランジスタ構造の考案と最適化、チャネル移動度の向上、電極接触抵抗の低減を行いました。
- ●開発素子の構造
- 関西電力独自のチャネル静電拡張型蓄積電界効果トランジスタ構造
(MOSゲートタイプと接合ゲートタイプの2種類を開発) - ●動作原理
- 広い縦型チャネルに加えて、約500ナノメートルの狭い横型チャネルを形成し、オフ時は自動的に横型チャネルを空乏化して電流の流れを阻止して高耐圧を実現。
オン時は横型チャネルに並列に存在する空乏層を静電的に除去してチャネルを拡張することにより、チャネル部の抵抗を大幅に小さくし超低損失を実現。 - ●開発素子の構造
- 高耐圧化により、SiCスイッチング素子の電力事業分野適用への道を初めて開いたものであり、且つ、夢とされていたSiトランジスタ(MOSFET)の1/100の以下の低い定常電力損失を実現できたものであり、電力変換設備の大幅な省エネ化・小型化が可能となります。
Siトランジスタ(MOSFET)に比べて次の特徴があります。- ①負荷電圧の向上
- 電力分野に適用できる高耐圧をSiCスイッチング素子で初めて達成。
(1.5kV → 4.5kV)
⇒ 電力変換器の構成素子数を低減(Si-MOSFETの約1/3) - ②電力スイッチング時の高速性を維持しつつ通電時の抵抗を低減。
- 約50nsの高速スイッチング速度と単位面積当たり約90〜110mΩcm2の超低抵抗を実現。
⇒ 電力変換時の定常電力損失を大幅低減(Si-MOSFETの理論限界値の1/100以下) - ③Si素子よりも高い動作温度が可能(約150℃ → 約300℃)
- ⇒ 冷却装置が簡素化・小型化できる(水冷式 → 空冷式)
これらの結果、電力変換時の全電力損失(定常電力損失+スイッチング電力損失)が10kHzの高周波レベルでも1/20以下に低減でき、大幅な省エネ化・小型化が可能になります。
大電力用途向けに開発されている4.5kV級のSi-GTOやSi-IGBTに比べても、印可電圧2Vで通電できる電流密度がGTOの約2倍、IGBTの約6倍と大きく、更に電力スイッチング時間もGTOの約1/200、IGBTの約1/20以下と大変高速でありますので、省エネ化・小型化ができます。
【今後の取り組み】
今回の開発素子は1A級であるので今後大電流化を図り、先に開発した高耐圧SiCダイオードと組み合わせて、回路検討のうえ電力用途への適用を図っていきます。
【将来の展望】
- ○供給信頼度の向上
- BTB〔Back To Back〕(交直変換装置)等の電力会社間で電力を融通しあう系統間連系装置や、SVG〔Static Var Generator〕(無効電力発生装置)等の系統安定化装置に適用することで、超高圧送電線における事故等による周波数変動の影響範囲を最小限にくい止め、電力そのものの高品質を保持できます。
- ○分散型電源との連系
- 大型バッテリー(燃料電池、レドックスフロー電池等)やマイクロタービン、風力発電機を系統に連系するインバータ装置等に適用することで、大きな省エネ化を達成できます。
- ○電気事業用途以外への活用
- 開発技術は電気自動車や磁気浮上列車用インバータ、レーザやX線源用の高耐圧電源、CRTディスプレーの駆動装置、高精細テレビやモービル通信用電波発信装置への活用も有望視されています。