プレスリリース
2000
2000年5月8日
大飯発電所2号機の原子炉起動および
調整運転の開始について
1.今回の定期検査を利用して実施した主な工事等
- (1)1次冷却材ポンプ供用期間中検査 (図-1参照)
- 1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、4台ある1次冷却材ポンプのうちBおよびC-1次冷却材ポンプについて、主フランジボルト、締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検を行い、異常のないことを確認しました。
- (2)原子炉容器照射試験片取出工事
- 中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を定期的に把握するため、原子炉容器内部に設置している照射試験片を計画的に取り出しました。
- (3)原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事 (図-2参照)
- 海外における原子炉冷却系統設備の損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、原子炉冷却系統他の配管の一部について、材質等を変更した新しい配管に取り替えました。
2.蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査(ECT)の結果
- 蒸気発生器伝熱管半数(6,764本)について、その健全性確認のため、渦流探傷検査(ECT)を実施した結果、有意な信号は認められませんでした。
3.燃料集合体の検査結果
- 燃料集合体の外観検査を実施した結果、燃料集合体に異常は認められませんでした。
また、燃料集合体全数193体のうち49体を取替えました。
(取替燃料集合体49体のうち40体は新燃料集合体)
4.その他
- (1)日本原子力発電 敦賀発電所2号機における1次冷却材漏えい事象を
反映した検査の充実 (図-3参照) - 日本原子力発電敦賀発電所2号機における1次冷却材漏えい事象を踏まえ、プラント運転中に原子炉冷却材系統と同温、同圧の1次冷却材が流れる再生熱交換器と原子炉冷却材系統間の配管の一部について、超音波探傷検査(UT)を行い、健全であることを確認しました。
また、海外プラントで発生した熱疲労事象の反映として、類似箇所について超音波探傷検査(UT)を実施し、健全であることを確認しました。 - (2)復水器細管抜管調査結果
- 今年2月14日に発生した復水器伝熱管漏えいでは、前回定期検査時に取り替えた保護皮膜形成管(*)362本のうち2本が漏えいし、また171本で複数箇所の減肉指示が認められたことから、今定期検査において漏えい管および減肉指示管等(計12本)を抜管し、詳細調査を実施しました。
[平成12年2月14日、2月25日 記者発表済]
- (*)保護皮膜形成管:
- 伝熱管(通常使用している伝熱管と同じ材料)の内面に、海水による腐食を予防するため、あらかじめ薄い鉄皮膜を形成させた銅合金管。
- ·抜管調査および運転履歴調査
-
- 漏えい管の管内面を観察した結果、漏えい部はこれまでも見られている海生物の付着によって発生した減肉貫通(潰食)の形状を示していました。
- 漏えい部の周辺は、製作時に伝熱管内表面に形成させた保護皮膜が非常に薄くなっており、保護皮膜形成管の健全管においても、この保護皮膜が薄くなっている箇所が一部で観察されました。
- 健全な黄銅管の内面では、比較的厚い皮膜が形成されていました。
- 定期検査時に復水器に通水させる際は、復水器伝熱管内面に初期皮膜を形成させるため、海水に硫酸第一鉄を注入していましたが、前回(第14回)定期検査の起動時においては、注入しない期間がありました。また、硫酸第一鉄の注入を開始した直後、余熱除去系配管からの漏えいのため発電を停止し、この影響により復水器への通水量を少なくし、硫酸第一鉄の注入濃度も低くしていました。このため、初期皮膜形成期間での硫酸第一鉄の注入量は、通常の起動時に比べて非常に少量でした。
- ·推定原因
- 保護皮膜形成管で減肉が多数発生した原因は、原子炉起動時に初期皮膜形成の ための硫酸第一鉄の注入量が少なかったため、皮膜の形成が不十分であったこと、また、起動直後のトラブル停止に伴い、伝熱管内の流速が遅い期間が長かったことから、伝熱管内面に海生物が付着しやすい状況でした。この状態で運転開始し、付着した海生物により伝熱管内面の保護皮膜がはく離したため、減肉(貫通)したものと推定されました。
- ·対 策
- 2月14日の漏えい時において、前回定期検査時に取り替えた保護皮膜形成管全数(362本)については、すでに施栓を実施しています。
また、復水器伝熱管の今後の予防保全策として、起動初期において伝熱管内面の保護皮膜が十分形成されるよう、伝熱管内への海水通水の際、硫酸第一鉄を直ちに注入するよう運用面での改善を図ることとしました。
なお、初期皮膜形成までのメカニズム等につきましては、今後さらなる調査により、知見の拡充に努めてまいります。
5.次回定期検査の予定
- 平成13年春頃
以 上
<参考資料>
・図-1 1次冷却材ポンプ構造図
・図-2 原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事概要図
・図-3 敦賀2号機再生熱交換器配管からの一次冷却材漏えいに関する再発防止対策