プレスリリース

2000年5月2日

美浜発電所2号機の点検結果について(発電機故障による自動停止事象の原因と対策)

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格出力50万キロワット)は、本年4月7日に発生した化学体積制御系抽出水配管からの漏えい事象の対策を行った後、同4月28日19時26分に発電を再開し、出力上昇中のところ、同4月29日02時24分、電気出力約20%で「AVR(*1)不足励磁」他の警報が発信し、発電機の電圧が17kVから15kVに低下していたため、電圧の回復操作を行っていたところ、同02時38分、「発電機界磁喪失リレー(*2)(*3)」が動作したことにより発電機が自動停止し、同時に「発電機バックアップトリップ」警報が発信して原子炉が自動停止しました。
 今回の事象による周辺環境への放射能の影響はありませんでした。

[平成12年4月29日 記者発表済]  

(*1)AVR(自動電圧調整装置) 発電機出力電圧を一定に保つための装置
(*2)発電機界磁喪失リレー 発電機の界磁電圧が低下すると、発電機能を維持できなくなることから、発電機保護のため自動停止させる保護装置
(*3)界 磁 発電機内に磁界を発生させるための電流

1.調査結果

 (1)外観点検
励磁機(*4)廻りの永久磁石発電機(*5)の端子カバーを取り外し外観点検を実施したところ、永久磁石発電機から励磁機および自動電圧調整装置へ出力するケーブルの接続端子部3箇所(3相:U相、V相、W相)のうち、1箇所(U相)で、ケーブル被覆および端子板に、過熱によると思われる損傷が認められました。
当該ケーブル接続部の締め付けナットに緩みが認められました。
端子面の詳細点検を実施した結果、接触面に片当たりと見られる線状の接触痕およびアーク痕と見られる肌荒れが認められました。
異物のかみ込み、ネジ山のつぶれ等は確認できませんでした。

(*4)励磁機 発電機に磁界を発生させるための装置
(*5)永久磁石発電機(PMG) 励磁機の励磁電源であるとともに自動電圧調整機の電源も兼ねている永久磁石を用いた3相交流発電機

 (2)導通確認
永久磁石発電機回路他の導通確認を実施した結果、永久磁石発電機から励磁機および自動電圧調整装置等へ出力する回路3相(U相、V相、W相)のうち、U相に導通がなく断線状態であることが確認されました。

 (3)端子締め付け状態の点検
作業履歴を確認したところ、前回定検時において解結線を実施していましたが、締め付けナットは締め付け管理が十分でなかった可能性が確認されました。
当該U相の出力ケーブルは余長が十分ではなく、ケーブルが引っ張られ、端子面が片当たりしやすいことから、当該端子部は締め付けが不足していた可能性があることが判明しました。

 (4)振動による影響の確認
当該部における振動による影響を評価するため、運転中である美浜1号機の振動計測を実施したところ、その値はごく小さく、類似構造である美浜2号機についても振動値は同程度であると推定されました。

 (5)推定メカニズム
  点検結果から推定される事象メカニズムの要因について以下の調査を行いました。
接触不良の発生メカニズム確認
端子面の点検結果で認められた線接触が生じていた場合、当該部は約500℃以上に過熱され端子板が炭化し、体積が減少するものと推定されました。
 また、模擬試験を実施した結果、端子板の体積が減少し、ボルト軸力が開放された状態で微少振動を与えると、締め付けナットがケーブル反力により緩むことが確認されました。
界磁喪失リレー動作による発電機自動停止のシミュレーション
当該U相が欠相した場合、界磁電圧が低下するため、これに起因して界磁喪失リレーが動作し、発電機が自動停止に至ることがシミュレーションにより確認されました。

2.推定原因

 
   以上のことから、次のようなメカニズムで発電機自動停止に至ったものと推定されました。
前回定検時の当該U相結線作業において、ケーブルの剛性が大きく、またケーブル余長が少なかったことから、端子部の片当たりにより、端子間抵抗が増加しました。
そのため、端子部が過熱し端子板等が損傷し、締め付けナットの緩みが発生したことから端子間の接触がなくなり、断線状態となりました。
その結果、励磁機及び発電機電圧が低下し、発電機界磁喪失リレーが動作したことから発電機が自動停止しました。

3.対  策

 
当該ケーブルおよび端子板については、ケーブル余長の改善を図ったものに取り替えます。
ケーブル結線後の接続状態確認方法を明確化し、保修業務要領及び作業手順書に反映します。
今回の事象を踏まえ、ケーブル端子の締め付け管理を含め、作業の基本的事項の徹底について、教育等の場を活用し、継続的に取り組んでいきます。

 起動準備終了後、5月2日深夜に原子炉を起動し、同5日頃定格出力に復帰する予定です。

以 上  

    (通商産業省によるINESの暫定評価)
    INES:国際原子力評価尺度
    基準1 基準2 基準3 評価レベル
    - - 0+ 0+


<参考資料>
概略系統図
発電機故障による自動停止概要図
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