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越前若狭探訪

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旧古河屋別邸を「みんなの別邸」に 護松園〈小浜市〉

護松園〈小浜市〉地図

玄関(2階は月見の間)
▲玄関(2階は月見の間)

接待用小座敷として使われた「月見の間」
▲接待用小座敷として使われた「月見の間」

押し入れの中にある隠し階段

▲押し入れの中にある隠し階段

茶室
▲茶室

控えの間は、ワークスペースとして使える「みんなの図書館」に。
▲控えの間は、ワークスペースとして使える「みんなの図書館」に。

 旧古河屋(ふるかわや)別邸(通称・護松(ごしょう)園、県指定有形文化財)は、1815年(文化12)に小浜西津の5代目古河屋(ふるかわや)嘉太夫(かだゆう)が建てた木造2階建て、数寄屋造りの屋敷で、風雅な書院とともに茶室、土蔵などが現存している。
 護松園は2021年5月に「GOSHOEN」としてオープン。その前年に同園を取得した若狭塗箸メーカーの(株)マツ勘(同市北塩屋)が、かつて賓客をもてなすために設けられた建物を「地元の人も観光で来た人も、誰もが気軽に集える場所にしたい」と、コーヒースタンドやネット環境を備え、ワークスペースなどに利用できるよう整備した。

若狭塗箸の直売所(箸蔵まつかん直営店)
▲若狭塗箸の直売所(箸蔵まつかん直営店)
コーヒースタンドで飲み物などを販売
▲コーヒースタンドで飲み物などを販売

 近年、個人所有の文化財は、維持・管理の難しさから放置されるケースが少なくない。そうした中、2019年に文化財保護法が改正され、これまでの保存中心から「活用しながら保存する」という方向性が示された。活用から得た利益を施設の維持・管理に回して文化財を守り継承しようという考え方だ。護松園にも若狭塗箸の直売所やコーヒースタンドが設けられている。

 すでに200年を超える護松園の歴史をたどると―古河屋は北前船の船主として、江戸中期から廻船(かいせん)問屋を営むとともに、酒・醤油(しょうゆ)の醸造、金融業を兼業。小浜藩と深く関わり、若狭随一の豪商となった。江戸後期には9隻前後の北前船(きたまえぶね)を持ち、蝦夷(えぞ)(北海道)から日本海沿岸、瀬戸内を経て大坂に至る西廻(にしまわ)り航路を往復、途中の湊(みなと)々で各地の産物を買い入れ、別の湊でその積み荷を売る〝買い積み〞を行った。取扱品は昆布や鯡(にしん)、数の子、棒鱈(だら)、大豆、木材、素麺(そうめん)、醤油、油、酒、木綿、若狭瓦などさまざま。城米(じょうまい)(幕府の米)や蔵米(くらまい)(藩の米)の運送も担った。

玄関に設けられている床の間付きの畳の間
▲玄関に設けられている床の間付きの畳の間
藩主を迎えた書院は、「みんなのリビング」に。
▲藩主を迎えた書院は、「みんなのリビング」に。

 この別邸は、藩主の御成(おな)りのためのしつらえがなされている。一見質素な造りながら、玄関に床の間付きの畳の間(式台)があり、書院のL字形の縁側は、庭を眺めるため角の柱を省いてある。隠し階段で上る2階には、月見の間(接待用の小座敷)も。庭に多くの松があることから護松園と呼ばれた。

 2018年、国の日本遺産「北前船寄港地・船主集落」に追加認定された小浜市。護松園は、北前船による海運で栄えた小浜湊の繁栄を物語る歴史的建造物だ。その時代を感じながら、ゆったりとくつろぎの時間を過ごすことができる。入園は無料で、コンセントやWi-Fi(ワイファイ)もあって、パソコンを持ち込んで仕事をするのもOK。「みんなの図書館」(8席)は貸切なら有料だが、それ以外はコーヒーなどを注文をするだけで自由に使える。ここに多くの人が集まり、いろんなつながりが生まれることを園側は期待している。

書院の縁側は、角の柱が省かれている。
▲書院の縁側は、角の柱が省かれている。

 改修はまだ途上で、今後は庭の手入れを進め、蔵の中に北前船の歴史や若狭塗などを紹介するギャラリースペースを設けて、2022年ごろにグランドオープンの予定だ。

護松園〈小浜市〉地図

【参考】『わかさ小浜の文化財(図録)』(小浜市・平成7年第10版発行)、『小浜市史 通史編 上巻』
(小浜市・平成4年発行)、『福井県史 資料編14 建築・絵画・彫刻等』(福井県・平成元年発行)

護松園 小浜市北塩屋17-4-1 TEL 0770-64-5403
入場無料。水・木曜定休。開館時間は10時から17時(最終入場16時30分)
みんなの別邸 GOSHOEN

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