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おおい町の語り部たち

岡 安

  川原の松明上げ

石橋好次さん
語り部
石橋 好次 さん
 夏の夜空に松明を高く放り上げる

 岡安の「松明上げ」は、精霊迎え(岡安では”迎え火”と言っている)の8月14日と、精霊送り(岡安では”送り火”と言っている)の8月15日、そして愛宕祭りの7月24日と8月24日に行われます。8月14日・15日は、夜の7時頃にお堂に集まり、太鼓をかつぎ打ち鳴らしながら、高張提灯(壮年)と、ほおずき提灯(少年)をぶらさげて、川原まで行きます。そこで大人の太鼓の打ち合いがあり、後は子供たちが佐分利川の川原で松上げをします(最近では花火も並行して開催)。こうしてひとしきり松明上げをやり終わると、太鼓を打ち鳴らしながら、お堂まで帰ります。
 「松明を上げるのは、昔から子供だけ。松明をぐるぐる回して、勢いをつけて上に高く放り上げてね、高くキレイにまっすぐあげるのが自慢やったです。昔は4~5mもあがったかな。落ちたのを拾って、また放りあげる。誰かに当たるかもしれませんが、でも怪我をした者はいなかったですね」と石橋好次さん。ちなみに20年ほど前は、火勢もあげていたそうですが、今まで続いているのは松明上げだけ。また岡安では、麻殻(おがら)だけで松明を作っていましたが、麻殻が少なくなったため、今はわらを合わせて作っています。
 この松明上げは、8月24日の愛宕祭りにも行われますが、これは愛宕信仰にもとづいた「火災鎮護」のため。作った松明を前もって山においておき、麓のお宮さんの境内からみんなで提灯をつけ、太鼓を叩き、鉦(かね)、笛を鳴しながら山を登っていきます。そして山の上で、子供達が松明上げを行います。
 「放り上げた松明のせいで、明治初期の頃、2回ほど社が燃えたことがあってね。だから、ちゃんと水を入れたバケツを用意してます。私たちが子供の頃は、この松明上げが楽しくてね。あのころはテレビも何もなく、他に楽しみがなかったからね。公然と火遊びができる絶好の機会でしたよ。」夏の夜空に、次々に赤々と燃えた松明が弧を描く光景は、実際に松明を上げる者はもちろん、見る者にも強烈な印象を与えたに違いありません。
  高張提灯
 岡安区では、青年団のことを「幽
 喬社」と呼ぶことから、高張提灯に
 も「幽喬社」の文字がくっきりと。

  太鼓の打ち合い
大人たちの太鼓の打ち合いが終わった後で、
子供たちが川原で松明上げを行います。
太鼓の打ち合いには、打つ人の個性が出ます。

松明上げ
引き継ぐ人
古石 實さん
「習いたい」
という声に応えて
できれば練習会をやりたい。

松明上げの行事に欠かせないのが、太鼓、鉦、笛などの鳴り物です。とくに打ち合いの太鼓は、所作を見せる要素もあり個性を発揮できます。一方で、演奏者の高齢化が進んでいますが、幸いにも、若い人達から「習いたいな」という声も出ているので、練習会の開催を考えているところです。また、都会に出た人との交流を図るためにも、こうしたイベントは続けてやっていきたいと思っています。
古石 實 さん
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