木曽川開発の歴史

木曽川history part8

木曽川水力開発総集編

 木曽川は中央分水嶺の中の主峰鉢盛山の南麓に源を発し、支流王滝川を合流して木曽の険しい渓谷を縫い、さらに河口から70kmの地点で飛騨川を合流して伊勢湾に注ぐ、全流程約230kmの東海第一の河川です。
 木曽川はわが国屈指の包蔵水力があり、これに着目した名古屋電力(株)によって着工された八百津発電所が木曽川電源開発の最初です。
 しかし、名古屋電力(株)は名古屋電灯(株)に吸収合併され、明治44年に名古屋電灯(株)により9600Kwの発電所が完成し、名古屋方面への電力の供給を開始しました。
 当時としては空前の大工事で土木界の注目を浴びましたが、工事は難航を重ね工事費は670万円を要したと言われ、名古屋電灯の経営を圧迫するものとなったのです。
 このころから水の有効利用の精神は流れており、大正6年には放水口の落差を利用した1200Kwの放水口発電所が完成しました。
 こうして始まった木曽川電源開発は、その後大同電力(株)の社長福沢桃介が唱える一河川・一会社主義の思想のもとに、他の河川では見られない効率的な水力開発が行われたのです。
 大正年間には木曽川の中流部において次々と発電所が開発されましたが、そのほとんどが水路式と呼ばれるものでした。
 河川の水を貯えて発電を調整することのできるダム式の採用は大井発電所が初めてで、「男だてなら あの木曽川の 流れくる水 止めてみよ」の木曽節の一節のとおり、建設中の大洪水や関東大震災による資金難などの難局を乗り越え大正13年に完成しました。
 これは木曽川開発史上画期的なものであるとともに、わが国のダム建設技術でも先駆的役割を果たしました。
 またNHK大河ドラマの「春の波濤」に出てくる桃介と貞奴の工事用のゴンドラに乗るエピソードもここが舞台となったのです。
 このように開発は進んでいきましたが、直面した問題は「川狩り」と言われる木曽御料林の木材搬出です。
 当時木曽御料林の木材搬出は、木曽川の流路に依存しており、伐採された木材は支流に落とされ木曽川の流れで八百津町まで運び、ここで筏に組まれ名古屋や伊勢方面に運材されていました。
 そのため、水路式ですら流材の支障にならない水量に制限されており、ましてやダムは流路をふさぐとして許可されなかったのです。
 桃介はこの流木問題に取り組み、難航のすえ森林鉄道を敷施することを条件に解決が図られました。
 またかんがい用水との調整においては、木曽川本川を開発していた大同電力(株)と、飛騨川を開発していた東邦電力(株)が共同出資し愛岐水力(株)を設立し、木曽川と飛騨川の合流点に調整池を設け、時間的に変動する河川流量をならして下流に放流することを目的とした今渡発電所を昭和14年に完成させました。
 これによりかんがい用水と電力の間で生じていた紛争を解決したのです。
 しかし昭和12年に起きた廬溝橋事件で日中関係が戦時状態に入ってからは、水力開発も一変しました。
 昭和13年には電力管理法・日本発送電(株)法が公布され、翌14年には発送電一貫事業を行う国策会社「日本発送電株式会社」が承認され、13年間にわたる電力の国家管理の時代へ突入していったのです。
 日本発送電(株)により、当時東洋一と言われた最上流部の三浦発電所をはじめとするダム式の発電所が開発されましたが、第二次世界大戦の戦局が激しくなり開発も思うように進みませんでした。下流部の残存落差と流量の有効利用の両面から有望視されていた丸山発電所は、昭和18年に建設に着手されたものの、戦時資材難で仮排水路トンネルの掘削のみで昭和19年には工事が中止されたのです。
 そしてこの年8月に終戦。
 昭和26年にGHQの指導のもと電気事業再編成がなされ、現在の電力会社体制時代に入り、中止されていた丸山発電所は、建設省の洪水調節の意向を受け入れることとし、ダム洪水吐ゲートの設計変更などが行われて着工し、昭和29年に運転開始しました。
 これにより木曽川水系のピーク時の出力が一挙に向上したのです。
 こうして落差と水量の総利用を目的とした木曽川の一貫開発は進み、昭和61年の伊奈川第二発電所の完成により、一河川・一社・一般水力ではわが国で初めて100万Kwを突破したのです。
 その後、最下流地点での開発や、既設発電所のリフレッシュ工事などにより木曽川の発電出力は約104万Kwとなりました。
 現在地球温暖化など地球環境問題への関心が高まる中で、CO2排出抑制目標の実現を図ることが緊急の重要課題となっています。
 また、エネルギーの大半を海外から輸入に依存しているわが国としては、強靱なエネルギー供給構造の構築を図ることが大切になっています。
 水力発電は、非化石エネルギーの中でもCO2を発生しないクリーンな純国産エネルギーです。
 その大切なエネルギーをこれからも守り、そしてさらに向上させ、良質でクリーンな電気をお客さまにお届けすることが私たち東海支社の使命なのです。

目次へ戻る
東海支社HOME
企業情報