プレスリリース

2005年7月22日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1. 運転状況について(平成17年7月21日現在)
発電所 電気出力(kW) 運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 第21回 定期検査中(H17.4.25~9月上旬予定)  
2号機 50.0万 運転中 ・ 「C-主給水ポンプケーシングのベント管台溶接部からのわずかな蒸気漏れについて」詳細は2-(2)のとおり。
3号機 82.6万 事故停止中[第21回定期検査中]
H16.8.9 2次系配管破損事故により停止。(引き続き、
H16.8.14~ 第21回定期検査)
H17.1.5~ 定期検査作業中。
 
高 浜
発電所
1号機 82.6万 運転中  
2号機 82.6万 運転中  
3号機 87.0万 第16回 定期検査中(H17.4.21~8月中旬予定*1
原子炉起動H17.7.16、
調整運転開始H17.7.17
・「可動小型中性子束検出器の所在不明について」詳細は2-(1)のとおり。
4号機 87.0万 運転中 ・「B-非常用ディーゼル発電機の起動試験中における自動停止について」詳細は2-(2)のとおり。
大 飯
発電所
1号機 117.5万 運転中
 
2号機 117.5万 第19回 定期検査中(H17.3.16~8月中旬*2予定)
原子炉起動H17.6.22、調整運転開始H17.6.24
発電停止H17.7.17(発電機固定子冷却水のわずかな漏えいによる)、
調整運転再開H17.7.21
・「発電機固定子冷却水のわずかな漏えいについて」詳細は2-(1)のとおり。
3号機 118.0万 第11回 定期検査中(H17.6.24~9月上旬予定) ・「炉外中性子束測定装置(中性子源領域)の一時的な指示不良について」詳細は2-(2)のとおり。
4号機 118.0万 運転中  ・「原子炉格納容器常用エアロック(外側扉)の閉止不能について」詳細は2-(2)のとおり。
※1

高浜発電所3号機第16回定期検査は、可動小型中性子束検出器の所在不明に伴う調査のため、本格運転再開時期が当初予定の7月下旬から遅れる見込みです。

※2

大飯発電所2号機第19回定期検査は、発電機固定子冷却水のわずかな漏えいに伴う、原因調査や対策の実施により、本格運転再開時期が7月下旬から遅れる見込みです。(当初予定では6月中旬予定でしたが、取り替え用の2次系配管の手配、およびB-非常用母線の一時的な停電事象発生により7月下旬予定としていました。)


2.保全品質情報について

実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則および電気関係報告規則に基づく報告事象や安全協定の異常時報告事象に該当する事象を含め、保安活動向上の観点から、産官学において情報共有することが有益である事象


(1)法令に基づく報告事象や安全協定の異常時報告対象のうち重要な事象
発電所名  高浜発電所3号機 発 生 日 第16回定期検査中(6月24日)
件  名 可動小型中性子束検出器の所在不明について 
事象概要
および
対 策 等
 6月24日、3号機用可動小型中性子束検出器(核燃料物質)について法令に基づく実在庫確認(年1回)を実施したところ、検出器1個が所定の保管庫(鍵付きロッカー)に保管されていないことが判明しました。
 このため、管理区域内を調査しましたが、当該検出器は発見できませんでした。
 混入した可能性の高い平成17年4月以降の廃棄物を調査しましたが発見できず、その後前回の実在庫確認(平成16年7月)以降に発生した廃棄物(ドラム缶)について調査を実施していますが、現時点で当該検出器の発見に至っていません。
 所在不明に至った原因調査の結果、核燃料物質としての管理が不十分であったことが確認されたことから、マニュアルを見直し核燃料物質の管理の強化を図るとともに、関係者に核燃料物質の管理の重要性を周知徹底しました。 

(平成17年6月24日27日7月7日14日15日 お知らせ済み)

 現在、平成16年7月以降に発生した廃棄物の調査を継続して行っています。(調査には9月中旬頃まで要する見込み)
 なお、調査のため原子炉起動を一時延期していましたが、7月16日に原子炉を起動し、翌17日から調整運転を開始しました。


発電所名  大飯発電所2号機 発 生 日 第19回定期検査中(7月16日)
件  名 発電機固定子冷却水のわずかな漏えいについて (添付図-1参照) 
事象概要
および
対 策 等
 定格熱出力で調整運転中、7月16日12時20分頃、当社運転員がタービン建屋の巡回点検を実施していたところ、建屋2階面の上方(発電機下部付近)から水が滴下していることを発見しました。直ちに現場付近を確認したところ、発電機固定子冷却水系統の計装用取出し配管フランジ溶接部から、冷却水が霧状に漏えい(約1.3リットル/時間)していることを確認しました。当該箇所の点検および補修を実施するため、同日23時57分から出力降下を開始し、翌17日7時に発電を停止しました。(原子炉は停止せず臨界状態で維持)
 調査の結果、今定期検査で、発電機固定子冷却水系統の計装用取出し配管の途中に新たにフランジ接続部を取り付けたことにより、当該配管の固有振動数が発電機本体の振動数(120Hz)と一致し、配管が共振したことで、発電機下部のフランジ溶接部に疲労限を超える応力が加わり、高サイクル疲労割れが発生、進展し、漏えいに至ったものと推定されました。なお、新たにフランジを取り付ける工事の計画段階において、振動による影響に着目した評価を行わなかったことが、今回の事象の要因となったものと考えられます。
 対策としては、発電機下部から新たに取り付けたフランジ部までの配管を新しいものに取り替え、発電機本体との共振を回避するため、サポートを2箇所追加設置することとし、また今後は、設備影響評価を行う対象機器を明確化し、発電機などの回転機器に関する工事についても、確実に事前に評価を実施することとします。

(平成17年7月16日20日お知らせ済み)

 その後、配管の取り替えを行いサポートで固定した後、固有振動数の測定を実施して問題の無いことを確認したうえで、7月21日14時00分に発電機を接続(並列)し、調整運転を再開しました。


(2) (1)に至らない軽微な事象
発電所名  美浜発電所2号機 発 生 日 6月23日(運転中)
件  名 C-主給水ポンプケーシングのベント管台溶接部からのわずかな蒸気漏れについて (添付図-2参照)
事象概要
および
対 策 等

 6月23日21時10分頃、運転員が、停止中(自動待機状態)のC-主給水ポンプ※1(以下「ポンプ」)保温外装板の隙間からわずかに蒸気が漏れていることを確認しました。
 同日22時30分にポンプを隔離して点検を行った結果、ポンプケーシング(羽根車を内蔵するポンプの胴体)上部にある管台と、ベント管との溶接部から蒸気がわずかに漏れていることを確認しました。また、現場を確認した結果、ベント管の上部にある4本のフランジボルト(以下「ボルト」)のうち1本が外れていました。
  本事象による環境への影響はありません。

 調査結果は以下のとおりです。
  <外観点検および浸透探傷検査等>
    外観点検の結果、管台のベント管側の溶接境界部に漏えい跡を確認し、当該部の浸透探傷検査を行った結果、周方向の線状指示模様(約6mm)が1箇所確認されました。
    指示模様が確認された箇所の破面観察を行った結果、き裂は、外面の溶接止端部から内面に向かって進展し、破面は疲労割れの特徴を示していました。
    ボルトは4本中1本が外れ、1本は手で回る程度に緩んでいました。
  <疲労割れに関する調査>
    当該ベント管の固有振動数を解析により評価した結果、ボルト3本の状態では、292.8Hz~294.3 Hzで、当該ポンプの運転に伴う振動数(圧力脈動の周波数)297.5 Hzと近接していました。
    このため、ベント管とポンプの共振により、損傷部に加わる応力が増大し、疲労限※2を(113 MPa)を超える応力(最大122.8 MPa)が加わることがわかりました。
    なお、ボルトが1本外れる前の、当該ベント管の固有振動数を解析により評価した結果、290.4Hz~291.8 Hzでした。
  <ボルト締め付けに係る調査>
    関係者への聞き取り結果、前回のポンプ分解点検において、トルク管理を行っておらず、締め付け記録も残すこととしていませんでした。また、作業場所が狭く、施工性が比較的悪かったことから十分な締め付けができていなかった可能性があります。

 以上の調査結果から、原因は、前回のポンプ分解点検後、ベント管のボルト2本が十分に締め付けられていなかったため、その後のポンプの運転に伴う振動により、その2本のボルトが緩み、内1本が外れたことにより、ベント管の固有振動数が、ポンプの運転に伴う振動数(圧力脈動の周波数)に近接して共振し、ベント管の管台部に疲労限を超える応力が働いたため、高サイクル疲労割れが発生・進展し、漏えいに至ったものと推定されました。

 対策として、主給水ポンプに接続している付属配管フランジの締め付けは全て、トルク管理を行うとともに、締め付け記録を残すよう作業要領書を改訂することとしました。また、当該管台を取り替えるとともに、改定した作業要領書に基づき実施することとしました。

※1: 主給水ポンプ 復水器において水に戻った冷却水を蒸気発生器へ供給するポンプ。美浜2号機には3台あり、2台は運転、1台は予備機として停止している(自動待機状態)。
※2: 疲労限  疲労損傷を起こす変動応力。文献調査では113MPaと評価された。



発電所名  高浜発電所4号機 発 生 日 7月20日 (運転中)
件  名 B-非常用ディーゼル発電機の起動試験中における自動停止について (添付図-3参照)
事象概要
および
対 策 等

 7月20日、B-非常用ディーゼル発電機(以下「B-D/G」)の、定例の起動試験※1のため、D/Gを起動したところ、10時22分に中央制御室で「B-D/Gトリップ」警報が発信、現地で「過速度トリップ」警報が発信し、B-D/Gが自動停止しました。これにより、保安規定の運転上の制限を満足しない状態※2となりました。
 その後、11時25分から11時35分にかけてA-D/Gの起動試験を実施し、動作可能であることを確認しました。
 本事象による環境への影響はなく、プラントの運転状況にも異常はありません。
 現在、1日に1回A-D/Gの起動試験を実施して健全性を確認するとともに、B-D/Gが自動停止した原因について調査しています。

※1: 非常用ディーゼル発電機の機能の健全性を確認するため実施している試験。
※2: 保安規定では、運転中は、2台(A,B)あるD/Gが2台とも動作可能であることが求められている。なお、1台が動作不能(待機除外)となった場合は、残りの1台について4時間以内(その後の1回/日)に起動試験を行い、動作確認を行うことが要求されている。



発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 第11回定期検査中(6月27日)
件  名 炉外中性子束測定装置(中性子源領域)の一時的な指示不良について (添付図-4参照)
事象概要
および
対 策 等
 6月27日17時10分頃、定期検査に伴う炉外中性子束測定装置※1(N31)の検出器取り替えおよび取り替え後の特性確認試験を行っていた当社社員が、同日16時20分頃から16時50分頃までの間、炉外中性子束測定装置(N32)の記録計の指示値が出ていないことを発見しました。(この指示値が出ていない約30分間は、保安規定に定める運転上の制限を満足していない状態でした。)
 測定装置の点検を実施した結果、パルス増幅器※2において、当該パルス増幅器に接触不良が発生していたものと推定されました。その他の機器等に異常は認められなかったことから、原因は、測定装置内のパルス増幅器で、一時的な接触不良が生じたため、N32指示値が低下し、その間、記録計に記録されなかったものと推定されました。
 なお、接触不良が発生したパルス増幅器については、予備品に取り替え復旧しました。


※1: 炉外中性子束測定装置 原子炉からの中性子の数を計測する装置。
※2: パルス増幅器 パルス信号を信号処理しやすい大きさに増幅するための装置。


発電所名  大飯発電所4号機 発 生 日 運転中(7月21日)
件  名 原子炉格納容器常用エアロック(外側扉)の閉止不能について(添付図-5参照)
事象概要
および
対 策 等

 7月21日、当社社員が、機器の点検のため原子炉格納容器内に立ち入り、その後、退出するため、原子炉格納容器内への人用の出入口である常用エアロック※1の内扉(原子炉格納容器側)を閉じた後に外扉を開け、14時42分頃、外扉を閉じようとしたところ、エアロック開閉用のハンドルが空回りし、閉じることができませんでした。これにより保安規定の運転上の制限を満足しない状態※2となりました。
 現場周辺を点検したところ、ハンドルの回転力を伝えるための軸と軸の接続部に用いられている連結ピン(ネジ付きテーパピン)とナットが、ハンドル下方に脱落していることを確認しました。(連結ピンとナットに損傷等はなかった)
 連結ピンが脱落した原因としては、定期検査時に連結ピンの締め付けが若干ゆるく、その後、原子炉格納容器内の巡視点検(1回/月)におけるエアロックの開閉により、ナットおよび連結ピンが脱落したものと考えられます。
 その後、同日17時10分に新しい連結ピンを取り付け、開閉試験を行い健全性を確認し、17時50分復旧を完了しました。(保安規定の運転上の制限を満足した状態に復帰)

※1: エアロック:原子炉格納容器への出入口であり、常用と非常用がある。運転中は、内側と外側は同時に開かないような仕組みとなっている。なお、毎定期検査時に行っている耐圧漏えい検査は、内扉で実施し、健全性を確認している。
※2: 保安規定ではエアロックの内外両扉が動作可能であることが要求されている。

以 上

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