ミライスイッチ 関西電力を支える従業員たちの本音で語り合う座談会 ミライスイッチ 関西電力を支える従業員たちの本音で語り合う座談会

vol.5 需給逼迫に立ち向かった日々を振り返って
2018年3月30日掲載

Q1: 今どんな仕事をやってんの?
状況に応じた設備の運転方法や運用方法を検討し、安全安定運転の確保やコストメリットの追求を行っています。
Q2: これまでの仕事でやりがいを感じたのは?
運転業務は2交替制で「ファミリー」と称され、本当の家族のように時には楽しく、時には厳しく業務を遂行していきます。トラブル発生時は一致団結してそれぞれの持ち場でお互いをフォローし合いながら、無事トラブルを収束することが出来たときはやりがいを感じました。
Q3: 今のお気持ちをどうぞ!
3.11以降、需給逼迫期間を経て技術者として人間として大きく成長できました。今の自分があるのもあの苦しいときを乗り越えたからこそと感じており、技術力と自信がついたと思っています。
Q1: 今どんな仕事をやってんの?
需給燃料運用、LNG(液化天然ガス)受払管理、ELD単価算定業務
Q2: これまでの仕事でやりがいを感じたのは?
夏季/冬季の大幅な需給変動に対し、タイムリーな燃料調達ができたこと。
Q3: 今のお気持ちをどうぞ!
世間の方々の声を真摯に受止めながら、弊社が出来る対応を地道に模索していくことが必要であると感じている。
Q1: 今どんな仕事をやってんの?
火力発電所の設備保守管理(主としてボイラ関係設備)
Q2: これまでの仕事でやりがいを感じたのは?
不具合処理対応等時間に追われる毎日が続いた時の点検が終わった時や、経験したことのない工事で経験 者である先輩の全面的なバックアップのもと、関係箇所との調整にも苦慮しながら工事を何とか進められ完遂した時。
Q3: 今のお気持ちをどうぞ!
3.11以降、発電所の超高稼働が続き緊張の連続であったのも束の間、原子力発電所が再稼動を果たすなどして稼動機会が減少しており時代の流れの速さ、厳しさを感じる。さらなるコスト削減、保全の高度化により発電所の価値向上に貢献したい。

非常事態の常態化

東日本大震災による事故を受け、関西電力の管内でも2012年2月にすべての原子力発電所が停止。それに代わって火力発電所をフル稼動させ、お客さまに節電をお願いさせていただく事態を迎えました。一方で原子力発電所の代替で稼動する火力発電にかかる燃料費も日本全国で最大年間3.6兆円(国民1人あたり年間3万円)・2011年以降累計で14兆円を超える深刻な問題に。今回は、こうした時期に火力発電を支えた3人に、語り合ってもらいました。

3.11のとき、みなさんはどちらで働いていたんですか。

大家:
僕自身は3年目だったんですけど、南港発電所の当直員として、運転業務に携わっていて目の前の仕事を覚えるのに必死でした。これからどうなるかなんて、想像もつかなかったです。
西森:
僕は今と同じく赤穂発電所の保修課にいたんですけど、様々なことが次々と起きて、会社としてどうなるんやろうという不安はありました。でも、「何が何でもこの苦境を乗り切ろう」という社長からのメッセージが社内で発信されてたんで、それを信じてとにかく頑張ろうと。自分のなかで「よしやるぞ」と切り替えて。実際に乗り切れるかどうかの保証はなかったんですけどね。
岸本:
供給力の大きな役割を担っている原子力が停止して、残りの発電所がその代わりをすることは大変な事だと思いました。それでも残りの発電所をフル活用できるよう燃料調達を最大限行って動かし続ければ、乗り越えられるはずと信じていました。
大家:
電力不足や計画停電にはさせまいと火力発電所をどんどん回し続けて、会社の収支が悪くなって。それでも自分達の仕事はお客さまに電気をお届けすることだから、一丸となって頑張るしかないと。
岸本:
燃料室では電力の需給環境の大幅な変化を受けて、主にLNG(液化天然ガス)のスポット調達を担う組織としてLNG第二グループ(現・燃料トレーディンググループ、燃料取引管理グループ)が新たに発足しました。私は元々、火力発電所の建設に関する仕事をしていましたが、2014年にその新しい部署に配属されました。

火力発電の燃料を仕入れるために新たにLNGのスポット調達を担当するグループができたのですか。

岸本:
はい。震災前は原子力がベースロード電源として、季節、天候、昼夜を問わず、電力を安定的に供給する役割を担っていたんですが、それが急に抜け落ちてしまうと、その分を火力で補わなければいけない。だけど、もともとLNGは原子力を代替出来るだけの燃料の契約はしておらず、加えて契約済の長期契約の範囲ではまかない切れず、多くの追加調達が必要となったんです。この変化に対応するためにLNGのスポット調達を担当するグループができました。ここでは、契約業務に加えて、これまで受け入れたことのないLNG船の受け入れ対応など追加で生じる業務も多くありました。私は、LNG船の受入時に必要な諸々の調整の役割を担っていたので、入港したことのない船が無事に接岸できるよう、多方面に亘り様々な確認に奔走していましたね。

なるほど。おふたりは、そうした変化の中で感じるものはありました?

大家:
3.11の半年後に運転業務から保修課に異動したんですが、その時点で大きな変化をかなり感じましたね。それまでならトラブル発生時には設備の信頼性確保を最優先に同種の設備も含めて、一定の時間やお金をかけて設備を余裕をもって直せていたと思うんですが、そういうことが全然できなくなって、復旧対策をかなり厳選していた記憶があります。今までなら一切合切、いっぺんにきっちり直していたんですが、そのときは急を要しているところだけスポット的に直して戻したり。もちろん、安全最優先なのは変わりませんが限られた期間で費用も抑えて、できるだけ最小限かつ最短と180度変わりました。
西森:
お客さまに迷惑をかけないようにコスト削減の必要性もあったんですが、それでもお客さまに電気をお届けするためには、早く直すことが第一やから。何かトラブルがあっても短期間で復旧させて、早く発電することが優先事項。まさに綱渡りです。本当に電気が足りるのか、トラブルで大きな停電が発生するんじゃないのかとか、とにかく不安でしたねぇ。定期点検もどんどん先送りになって、ギリギリのところで運転していました。

先送りすることへの不安はなかったですか。

大家:
不安はものすごくありましたけど、電力不足にしないためには設備が完璧には直っていない状態でも全力運転をしないといけない。本来は南港発電所は電力需要に応じて、起動と停止を繰り返す電源なんですが、発電し続けるベースロード電源みたいになってしまって。。。非常事態の常態化です。業務量的にも、精神的にもかなりしんどかった時期ではありました。
西森:
車で言うたら、これまでは修理工場が完全に直して、「完璧ですから、あとはちゃんと運転してくださいよ」とお客さまに言えとったんが、「まだ100%ではないところがあるんやけど頼むわ」って…。以前はお互いが100%の状態でやれとったから、そういうプロとしてのお互いの信頼関係が第一やったんですが、それが何が何でも運転し続けないといけなくなったので。不具合対応も含めて、プロとして責任を持ってチームワークでやっていくみたいな感じです。運転する人から「ここまでは我慢できるから、ここだけは絶対に直してくれ」と言われるようなやり取りを、今も頻繁にやってます。

火力発電所が高稼動を始めた最初の頃って、結構問題が起きたんですよね。

西森:
赤穂は油(石油)の発電所なんですけど、稼動するのは夏場など電力需要のピーク時なんです。それを年間で動かすとなると、いろんな不具合も出てくるので、しっかりメンテナンスをしなきゃいけないんです。

そのあたりの不具合は、稼動しだすと減っていったんですか。

大家:
そんなことはないんです。ずっと全力で走れないのは人間も機械も同じですから。機械も連続運転すると、別の不具合が起こるリスクが高まるんです。だから一番負荷が重くなる夏場や冬場に全力が出せるように、春先や秋口から調整していくんです。
西森:
結局、どこの発電所も、夏と冬に一番負荷がかかるんで、作業員さんの確保もなかなか難しくて。今までやったら余裕をもってやっていたのを、一気に工程を詰めたり。協力会社さんには結構、無理をお願いさせていただきましたね。

そのあたりの苦労って、普通に電気を使えている分には、見えてこないですもんね。

3週間かけて運んできた天然ガスが
4、5日でなくなる。。。

燃料も夏と冬のピークに備えるのってものすごく大変だったんじゃ?

岸本:
特に冬にLNG(液化天然ガス)を追加で確保するのが一番キツくて。。。冬場は暖房需要もあって世界中でLNG需要が高まるので、どこの会社も買いにいくんですよね。なので予め在庫を多めにしておきたいのですが、気候が冷え込むとマーケットで争奪戦になるので、早めに調達しておかないとLNGがなくなってしまったり、高値で買わざるをえなくなってしまうこともあります。

LNG自体はどこから調達しても同じ?

岸本:
実はそれぞれ、生産地によって性質が違うんです。組成の割合が生産地次第で全然違っていて、組成が違うと発電所で使えない可能性もあります。だから、普段検知されない組成が混入している場合は詳細な分析をするよう依頼するんですが、答えを出すまでにあまりにも時間がなく。。。だいたい2カ月先ぐらいのLNGを都度調達していくんですが、急激な需要変動があればスケジュールがタイトになります。航海日数も中東で3週間程度、欧州で4週間程度かかるので、LNG基地での受入日から逆算すると実際に検討できる期間って実は少ないんです。
西森:
そういえば、油でも検討がありましたね、数字上の性状はほとんど同じでも実際の燃え方は全然違っていて、制御しきれないとか。同じ発熱量なんやけど、ボイラーの特性によって熱の吸収が変わるから…。「この燃料で焚けますか」と聞かれたとき、数字的にはOKなんやけど、僕らもメーカーさんも、焚いてみなわからんところがあって。でも逆にLNGで予想外に良かった「当たり」とかあったんですかね。「これはエエのを確保した!」みたいなのは。
岸本:
正直、そこまでは意識してなかったですね。船が無事に基地に着けて、発電所で使えればマルぐらいの余裕しかなくて。また、メタン濃度が高いか低いかで、ガス事業用に使えるかどうかが決まります。メタン濃度が低くてカロリーの高いLNGを買えたら、発電とガスの両方使えるんで価値は高いねって話はしてましたね。

まずは確保が大変っていう。

岸本:
2週間ぐらいで契約を結んで、船がLNG基地の桟橋に着けられるかどうかの確認もしなくちゃいけない。とにかく非常にタイトなスケジュールでした。

1隻の船で運ばれるLNGを使い切る期間って?

岸本:
標準的な船型であれば、3日ぐらいですね。大型の船型であれば、4~5日ぐらいもちますけど。

中東から3週間かけてやってきて、4~5日ですか。相当ハイペースですね。知らなかった…。

大家:
僕も知らなかったです(苦笑)。

南港発電所 中央制御室でボイラ関係パラメータの確認中

発電所にもそのペースでやって来る感じなんですか?

大家:
堺LNGさんから「船入りましたよ」という連絡は来ますね。考えてみれば、3日おきぐらいだったかも。「船は来たんですけど、風が吹いてて着けられません」ということもあったり。強風時は船を基地に着けられないんで。

長時間、着けられないことってあるんですか? 

大家:
この年末にもありましたね。特に珍しいことではないんですよ。
岸本:
今年の冬は引きがいいのか…。

長時間、着けられないことってあるんですか?

大家:
この年末にもありましたね。結構しょっちゅうですよね
岸本:
今年の冬は引きがいいのか…。

いや、悪いでしょ(笑)。

岸本:
(笑)今年は風が特に強かったんですよ。桟橋に着けられなかったら、もう待つしかなくて。。。目の前に船があるのに手をつけられない。。。

最長でどれぐらい?

岸本:
3日以上待つこともありました。そうなるとLNGタンクの残量がグッと下がるんで、いよいよ石油火力を立ち上げないといけなくなる。ものすごく焦るんですけど自然相手ですから。。。高浜発電所が再稼動して以降は少し緩和されたんですが、今年の冬はラニーニャ現象※が発生して、低気温による大幅な需要増があったので、LNG消費が計画に比べてかなり進みましたね。 ※太平洋東部の赤道付近の海域において海水面の温度が平年よりも低くなる現象。日本付近では、冬の気温は平年並みから低めとなる傾向がある。

発電所を起動させるために、緊急招集されることはないんですか?

西森:
そこまではないですけど、決まるのは直前なんですよね。正月休みの間に、油を用意せなアカンという連絡が、直前に入ってきたりして。人は三交代勤務でずっといるので、運転はいつでもできる状態なんですが。やっぱりバタバタしますよね。
岸本:
前年の冬に比べると、LNGと石油の調達量は多いと思います。やはり寒かったのと、関西の景気が良くなってきて、各会社さんの設備投資が増えたりして、電力消費が急激に増えたことなどから、どうしても在庫が大幅に減少してしまうタイミングもでてきて。。。
西森:
その影響で赤穂も発電しとったんですね。

市況もあれば、天候もあれば…。

岸本:
そうですね。いろんなものに影響されるのでかなり複雑です。
大家:
自然との勝負なところが大きいですからね。どうしようもないところもありますが、それでも電気を作るのが我々の務めですから。

クラゲなんて見るのもイヤ!
今まで好きだった貝も大嫌いになりました…

自然との勝負といえば、台風によるクラゲの大量発生で…。

大家:
もう大嫌いです(苦笑)。見るのもイヤです。とにかく嫌いになりました。

(笑)水族館でも?

大家:
見たくもないから素通りですよ。ホンマに心から嫌いですね。2013年に発電室へ異動になったんですが、一番苦労した日は2014年8月の台風。蒸気でタービンを回して発電してるんですけど、その蒸気を冷やすために海水を大量に使うんですね。すごい大きいポンプで海水を吸い込んでくるんですけど、台風で海が荒れると寄せられてきたクラゲも一緒に吸い込んでしまうんです。台風なんで余計にゴミとかもいっぱいあって、それがもう発電所が処理できる量じゃなく…「クラゲ来すぎてもうアカン」っていう。

南港発電所の中央制御室で運転操作内容について先輩と打ち合わせ

一同:(笑)

大家:
特にその年は、貝も異常発生して。南港発電所には発電ユニットが3台あるんですけど、3台とも全部同じところから水を取ってきているので、すべて海水が足りない状態になって。貝やクラゲを取る装置も詰ってしまったり...。そのとき僕、夜勤だったんですけど、ちょうどお盆明け直前の日曜とかで人も少なくて。そのときは確か6人と課長だけで、会話もできないぐらいに疲れ果てた思い出があります。
自席端末にてユニット運転状態の確認中

どう作業したんですか。

大家:
トラブル時に発電機を安全に止めるためには、同時にいろんなところを確認しないといけないんですよ。1台のユニットを停止させるだけでも、普段なら6人がかりとかでやるのに、その日は2人ずつで…。

えええ!? よくできましたね…。

大家:
で、各ユニットに一人ずつついて、残りは貝が上がってきたらひたすらスコップでかきあげて軽トラに積んで。疲れたらユニットを監視していた人が逆に貝を回収しに…。入れ代わり立ち代わり、体力のある人から現場に行くみたいな感じで。しかも翌日がお盆明けで需要が高まるから、すぐに発電所を立ち上げてくださいみたいな要請があって。それも普段なら6人の班で起動していく感じなんですけど、1人2人とかでやって。かなりつらかったんですけど…良い経験でした。

前向き!(笑) でも貝は平気なんですか?

大家:
貝も嫌いです。

一同:(笑)

大家:
ムール貝とか、発電所に上がってくるムラサキイガイっていう貝にすごく似てて。それまでは好きだったのに、めっちゃ嫌いになりました。
岸本:
じゃあパエリアもダメですね(笑)。
大家:
ダメなんですよ。「これ俺が発電所でスコップ持って回収してたやつちゃうのん!?」みたいな(笑)。フラッシュバックしてしまいます。
西森:
スクリーンが壊れて変型しよるんですよね。。

スクリーン?

大家:
スクリーンというのは、ポンプで海水を吸い上げる直前に、クラゲを除去する網みたいな装置です。
西森:
水だけ流してゴミだけ取るみたいな。
大家:
そこにクラゲが来すぎると、重さでクラゲを回収するカゴが曲がっちゃうんですよ。

クラゲのようなやわらかいものでも…。

大家:
重さはありますからね。あれが止まると冷却用の海水が全然吸い込めなくなるので、発電機の出力を出来るだけ早く落とさないといけない。海水が足りないという警報がすぐに出るんです。
西森:
でも発電所は家の電気みたいにパチッと切るわけにはいかないので。いろんな機械を安全に停止させなイカンので大変なんですよね。そういえば赤穂でもあったわ…。僕は保修担当やったからクラゲと格闘はしてへんけど。

じゃあ嫌いにならずに済んでるんですか。

西森:
そうですね。
大家:
ホンマですか!? ええなぁ…。
西森:
貝も大丈夫。
大家:
火力の人間は、みんな、嫌いだと思ってました。

一同:(爆笑)

“火力あるある”だと(笑)。

大家:
“南港あるある”かもしれないですね(笑)。

岸本さんも発電所時代には…。

岸本:
僕も舞鶴発電所にいたんで、エチゼンクラゲが来てましたね。海水回りの設備を担当してたんで、気持ちはすごくわかります…。舞鶴はベースロード電源の石炭火力なんですけど、停まると本当に大変なので、大量に来たときは、エアレーション(気泡)量を調整してクラゲの進入路を断って、耐え凌ぎました。ただ、南港はものすごい、というのはよく聞いてました。場所によって全然、クラゲのレベル感が…ゼリー状にバーッと来るとなると…。

ゼリーは大丈夫なんですか?(笑)

大家:
大丈夫です。想像しなければ(笑)

お客さまに節電をお願いしといて発電所が
全力を出されへんのはどうなん?と…

やっぱり大変なことは多いですよね…。西森さんが苦労したことは?

西森:
電力不足にならないように何とかしなきゃいけないときに、予定通り発電所を動かせないときがあって。。。定期点検(定検)の最後に水をボイラーに通して…もう異常ないねっていう確認のための作業なんやけども、終盤の仕上げの時点でボイラーのチューブに漏れが見つかったんですよ。水を通したらシャワーみたいに水が…。

一同:うわぁ…。

西森:
協力会社さんが点検してくれとって、「雨みたいに降ってます!」って言われて。「ウソォ!?」と。これまで無理矢理に動かしてきたツケがついにまわって来たかと、血の気が引きましたね…。しかも日曜出勤の夜7時半頃。運転中はわからん程度のものやったんですよ。さらに二次被害も起きて。

ええええ!?

西森:
チューブ漏れした蒸気が、別のとこまで壊してしもて。それも直さなアカンとなったときはゾッとしましたね…。工程短縮を目指してやってきたのに、これでは期限に間に合わへんと。結局、2日間ぐらい延びてもうたんですけど。

でもそれもかなり最短というか。

西森:
もう全部、突っ込んでいって、メーカーさんも協力会社さんも全力であたってもらって。。。定検に入ってすぐに、目視で点検はするんですけど、ホンマに死角やって。我々がやってても、水を張ってみないと見つけられない部位だったんで。

原因は?

西森:
ボイラの弱い部分で経年が原因でした。お客さまに電気をお届けするためにそれまで設備を酷使してきたからなんかなと。だから今回の件を踏まえて、起動停止が一定の回数に達したら取り換えるというルールを追加しました。

起こってみないとわからないこともありますもんね…。でも震災以降、火力の職場では業務だけでなく、目に見えないプレッシャーもめっちゃ増している印象なんですが、皆さんのところはどうですか?

大家:
それはそうですけど、電力需給を守るっていう当たり前の使命感ですかね。…うわ、かっこいいこと言うてもた(笑)。

一同:(笑)

大家:
でも実際、そうですね。当時の上司が、「お客さまに節電をお願いしといて発電所が全力を出されへんのは電力会社としてどうなん?」という気概をもった人だったんですよ。その意志を汲んで、なんとかしたいという気持ちだけで…。火力設備と一緒に、懸命に走り続けたら、知らん間に2015年冬までの需給逼迫時期が終わってた印象です。
西森:
確かに。私も同じですね。やらなアカンという雰囲気が…職場みんなそうでしたもんね。絶対に発電し続けなアカンという雰囲気があったんで、一致団結して乗り越えたというか。一人やったら「もうアカン」って思とるやろうけど。

とりあえず必死に目の前のことを。

西森:
トラブルで大きな停電が発生するんじゃないかとか、不安はいつもありましたけど、やるしかない感じでしたね。
大家:
震災直後に東京電力管内で計画停電ってあったじゃないですか。これホンマに関西で起こったらどないなるんやろうと思ったときに、やっぱり自分らが何としても電力を生み出さんとアカンやろと感じましたね。自分の親とか子どもとか嫁さんが入院中で、心肺蘇生装置が停まるとかいう事態を自分の身に置き換えてみたら、全力で防がなアカンやろうと。

うわぁ、ありがたい…ヒーローです。

大家:
そんなことはないですけど(照笑)。

岸本さんは、どうですか。

岸本:
僕はもともと燃料をやりたいと思っていたので、負荷がかかっている認識はあまりなかったですね。経営の収支にも大きく影響するとこなんで、いろいろありましたけど面白かったです。とにかくずっと電話してたんですけどね(笑)。契約を締結するにしても、売主と時差がありますし、世界各国から調達するがゆえに大変でしたが…役立てているという実感のほうが大きかった気がします。

おふたりは?

大家:
当直って今、4班2交替で回してるんですけど、班それぞれ特色があって、年齢層もホンマの家族みたいになってるんですよ。ときには厳しく、ときには楽しく。冗談も言いつつ、トラブルがあったときはお父さんが陣頭指揮をとって、指示を出す、みたいな。その家族の一員として、自分の役割を全うするのが、かなり楽しかったのは事実ですかね。だんだん年を重ねるごとに後輩も増えてきたんで、今は自分が、頼ってくれる後輩の面倒を見たり、トラブルが起こったときに助けたり。だから、火力発電所をフル稼働させ続ける非常事態も乗り切れたのだと思います。

先輩たちにしてもらったことを、後輩たちに。

大家:
それを伝承しているというか。つらかったこともありましたけど、今の自分があるのは確実に、あそこで厳しい経験をしたからだと思っています。

よく世間で「電気は足りてる」とかいう話が出たりしますけど、どう思いますか。

西森:
そうですよね。私たちとしては電気が足りなくなる事態は避けなければならない。そういう思いで「意地でも電気が足りるようにした」ということなんですけどね(笑)。
大家:
別に自慢することではないですけど。。。(苦笑)でも、それは僕たちが必死に仕事をしたことに対する評価だと受け止めています(笑)。
西森:
もちろん、関電だけじゃなくて、協力会社さんのご尽力もありますし。一緒になって知恵も絞って、汗もかいて発電所が一丸となったからこそ、原子力発電所の不在を何とか乗り切れたんです。

いろんな人が頑張ってるからこそ、あの需給逼迫に立ち向かって、無事に乗り切れたんですね。

BACK NUMBERバックナンバー

vol.7 日本初の40年以降運転を目指して
地元への感謝を胸に安全最優先で

所長室 コミュニケーション係
澤井 大典
×
原子炉保修課
栄徳 幸祐
×
土木建築課
(トップドーム設置工事)
中居 宣紀
×
土木建築工事グループ
(2号海水管移設工事)
松本 卓也

2018年11月12日掲載

vol.6 え!?関電が鉄道事業?
今年で最後のトロバスに迫る

黒四管理事務所 運輸課
西澤 拓哉
×
黒四管理事務所 運輸課
田中 操
×
黒四管理事務所 運輸課
松尾 拓郎

2018年4月27日掲載

vol.5 震災後の需給逼迫を乗り越えろ!

南港発電所 発電室
大家 卓
×
燃料室 燃料運用グループ
岸本 英雄
×
赤穂発電所 保修課
西森 雅和

2018年3月30日掲載

vol.4 水害に飲み込まれた
水力発電所を復旧せよ!

海外土木グループ
浅香 遼
×
長殿発電所復旧工事所
新谷 昌弘
×
長殿発電所復旧工事所
広瀬 達也

2018年2月28日掲載

vol.3 電力の小売全面自由化は
チャンスだと思っていますよ。

神戸営業部 神戸営業所
永井 良樹
×
姫路営業部 豊岡営業所
高木 浩明
×
京都営業部 京都電気工事受付センター
松見 和通
×
滋賀営業部 八日市営業所
柚木 記久雄

2017年7月19日掲載

vol.2 安全面はめちゃくちゃ厳しいです。
「そこまでやるんや!」と。

原子力事業本部 安全技術G
澤野 弘幸
×
舞鶴発電所 保安課
勝間 篤
×
南大阪NW技術C設備形成
米澤 憲人

2016年11月11日掲載

vol.1 「関電で大丈夫?」
と心配はされました

お客さま本部 電力受給G
松田 将
×
国際事業本部 国際G
長谷川 亜美
×
燃料室 燃料運用G
梶 琢哉

2016年9月30日掲載
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