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明日を拓く事業と技術
関電初の海外ダム建設に挑戦
2019年9月、ラオスとタイの国境を流れるメコン川の支流・ナムニアップ川で、ナムニアップ1水力発電所が商業運転を開始しました。大小二つのダムでラオス、タイに電気を供給しており、主ダムの規模は高さ167m・幅530m・出力約27万kWと、当社の誇る黒部ダム(くろよん・高さ186m)に匹敵する規模!
プロジェクトを進めるためラオスの首都ビエンチャンに設立したナムニアップ1パワー社(Nam Ngiep 1 Power Co., Ltd.)が、ラオス、タイ両国と連携して建設工事や運転・保守を担ってきました。それまで日本の電力会社が主導し、国内で培った水力発電の設計・建設・運営ノウハウを海外の現地事情に合わせて展開して、このような大規模なダムをつくった前例はなく、関西電力にとっても大きな挑戦となりました。再生可能エネルギーの導入拡大の世界的な流れの中、ラオスの豊富な水資源を活かした本事業は、両国の経済発展と地域の持続可能性に貢献しています。
本プロジェクトに携わった2人の若手キーパーソンに、それぞれの挑戦について聞きました。
ナムニアップ川は、東南アジア最大の河川・メコン川の支流。大規模な主ダムでつくった電気はタイへ輸出されます
ダム運営の資金を監督・管理
カナダ生まれの大阪育ち。
今後も言葉の力を駆使して
国際プロジェクトを成功に導きたい!
Nam Ngiep 1 Power Co., Ltd.
財務副マネジャー※
梶川 マイルズ
(2020年入社、国際事業本部 国際グループに配属、2022年12月からナムニアップ1パワー社へ)
※2025年7月取材当時
プロジェクトのお金まわり全般を監督、
国際金融機関 やラオス政府との折衝も
私は2020年の入社時から海外勤務を希望しており、2022年12月に晴れてナムニアップ1パワー社に赴任。初めて見た巨大なダムにはただただ圧倒されました。
財務副マネジャーの業務は、簡単に言うとお金まわり全般の監督。毎日の支払い管理をはじめ、中長期の配当方針や月次・年次予算の策定等多岐にわたります。さらに大きい部分では、銀行との交渉や政府関係対応等重責を伴うものも。特に、9行もの銀行(レンダー)から融資を受けており、それぞれが異なる方針や要望を持つため、交渉や調整が非常に複雑で重要な任務となっております。
ラオスの首都ビエンチャンにある
ナムニアップ1パワー本社のオフィスにて
ワーキングカルチャーの違いを
受け入れ、
現地スタッフを
リスペクトすることが大事
初めての海外赴任に不安もありましたが、関西電力のサポート体制は手厚く、住宅や医療面でも十分な環境が整えられています。また本プロジェクトはタイ、ラオス、日本をはじめ、多様な文化的背景を持つメンバーが協働するグローバルな現場 。やはりワーキングカルチャーの違いを日々肌で感じています。例えばタイやラオスには、人前で指摘や注意を受けることを非常に強く嫌う文化があります。伝え方一つで関係性を崩しかねないため、どうしても指摘が必要な場面では、日本にいるとき以上に言葉選びに気を配ります。お互いの文化をリスペクトしながら業務にあたる意識――それが国際プロジェクトを円滑に運営する土台だと思います。
「多国籍の職場では互いの文化を尊重することが大事」と語る梶川
交渉事は自由度が高く、
自分ならではの結果が出せるのが醍醐味
銀行や政府との交渉事は、相手の担当者も十人十色なだけに、進め方の自由度が高いんです。だからこそ、自分のアプローチや考え方が結果に直結しやすく、そこに面白さややりがいを感じます。2023年は特に印象的な年で、国際的な金利指標の廃止による融資契約の更改があり、各銀行との交渉に奔走しました。加えて初めての配当、初めての減資手続きもこなし、3つの大きな課題に取り組んだ年でした。
ラオスでの任期は2025年12月まで。これまでの経験や知識をきちんとまとめて後任に託したいですね。個人的には、今後開発側の業務も経験してみたいと思っています。
ビエンチャンマラソン(10㎞)に同僚と参加。現地イベントには積極的に参加します。
海外の優秀な技術陣との協働
ラオスの文化や慣習に
親しむよう努めました。
ラオスのビールは世界一おいしい!
水力エンジニアリングセンター 海外グループ 副長※
川田 達也
(2013年入社、2016~22年までラオスでナムニアップ1プロジェクトに従事、
帰国後も支援業務にあたる(2024~25年))
※2025年6月当時
英語がわからない……!
何度も聞き返して意思疎通を図る
プロジェクトに携わったのは入社4年目の2016年からでした。5月にラオスに渡り、ナムニアップ1パワー社の技術チームで、当時建設中だったダムの工事設計や工事管理を行っていました。
最初に苦労したのは英語。ラオス、タイだけでなく、ヨーロッパのいろいろな国からもスタッフや技術者が来ているのですが、特に欧州勢の流暢な英語が全く理解できず困り果てました。赴任までにかなり勉強したのにも拘わらず、です。上司に相談すると「わかるまで何度も聞き返せ」と言われまして、何度も粘り強く聞いているうちにコミュニケーションが取れるようになりました。
夜勤の様子。多国籍のメンバーで、
問題点がないか協議(右端が川田)
湛水(たんすい)開始後のトラブルを
乗り越えてダムを満水にした瞬間
重要なのが貯水池に水を貯める湛水(たんすい)という工程です。ダム構築のためにコンクリートを打設してから湛水に至ります。しかしこの打設管理が大変。岩盤検査や水処理等、夜勤をしながら24時間体制で行いました。いよいよ2018年5月、湛水を開始するも、ダムの一部で安定性が懸念される事象が発生したため、湛水が中断! 懸念事項の解決のため湛水中に対策工事を行うのですが、DSRPというラオス政府が配置したダム安全評価委員会(3名の世界的なダム専門家で構成(ノルウェー人、イギリス人、日本人))から建設時代と同様厳しい指導がたびたび入り、非常に苦労しました。 そのかいあって、約1年半後の2019年8月にようやく満水を達成したときは最高にうれしかったですね。建設時代もそうですが、問題や課題の発生時には、すぐに当社グループの土木専門のトップ達が一斉に集結し、技術検討会を開催、対策や方針の判断をその場で下して進めていくという体制が建設時代のプロジェクト推進の鍵を握っていたようにも思います。
2018年5月、湛水開始直前の様子。
ダムの裏側(上流側)から撮影
そのかいあって、約1年半後の2019年8月にようやく満水を達成したときは最高にうれしかったですね。建設時代もそうですが、問題や課題の発生時には、すぐに当社グループの土木専門のトップ達が一斉に集結し、技術検討会を開催、対策や方針の判断をその場で下して進めていくという体制が建設時代のプロジェクト推進の鍵を握っていたようにも思います。
本プロジェクトの知見や技術を継承し、
後続の若手とともにまた挑戦したい
このプロジェクトは、関西電力のリードによって海外に水力発電所をつくった初の試みであり、今後の技術継承という点で非常に意義のあるものだと思います。また、ダム建設に伴い流域の集落移転が必要だったため、農業や住居、インフラ整備等の生活支援を行い、同時に生態系の保全・再生等自然環境保護にも腐心しました。
海外でのこのような壮大なプロジェクトに携わったことはかけがえのない貴重な体験となり、任務を最後までやり遂げることの大切さも学びました。挑戦する気概を持った若手が後に続き、ともに「第2のナムニアップ」を建設できる日が来るよう若手と一緒に頑張りたいと思います。
当時の写真を見ながら「ダムができていく過程を目の前で見るのは楽しかった」と語る川田
2023年に黒部川第四発電所が竣工から60年を迎えることを契機に制作した本編動画です。当社設備から水力発電の歴史を振り返るとともに、ゼロカーボン社会実現に向けた未来への挑戦を描いています。
明治時代の京都・蹴上発電所の開発から始まり脈々と受け継がれてきた、水力発電にかける先人たちの「想い」と、それらを当社が引き継ぎ、これからの未来に繋いでいくという決意を込めています。
水力発電の軌跡 ~変わらぬ使命への挑戦~