プレスリリース

2008年2月15日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成20年2月14日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 運転中  
2号機 50.0万 第24回 定期検査中
H19年7月20日〜未定
A−蒸気発生器入口管台溶接部での傷の原因と対策について
詳細は2(1)のとおり
H20年2月4日お知らせ済み】
3号機 82.6万 運転中  
高 浜
発電所
1号機 82.6万 運転中  
2号機 82.6万 第24回 定期検査中
H19年8月17日〜未定
制御棒クラスタ動作検査時の制御棒動作不良の原因と対策について
詳細は2(1)のとおり
H20年1月18日お知らせ済み】
B、C−蒸気発生器入口管台溶接部での傷の原因と対策について
詳細は2(1)のとおり
H20年2月8日お知らせ済み】
3号機 87.0万 第18回 定期検査中
H19年11月23日〜未定
A、B、C−蒸気発生器入口管台溶接部での傷の確認について
詳細は2(1)のとおり
H20年2月4日お知らせ済み】
B—海水淡水化装置生産水ポンプ軸受部からの発火について
詳細は2(3)のとおり
【事象概要をとりまとめましたのでお知らせ】
4号機 87.0万 運転中
大 飯
発電所
1号機 117.5万 運転中  
2号機 117.5万 運転中  
3号機 118.0万 第13回 定期検査中
H20年2月2日〜5月下旬予定
中性子源領域検出器の電源断による一時的な停止について
詳細は2(2)のとおり
【事象概要等をとりまとめましたのでお知らせ】
4号機 118.0万 運転中  


2.トラブル等情報について

(1) 法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)
発電所名  高浜発電所2号機 発 生 日 第24回定期検査中(平成19年10月1日)
件  名 制御棒クラスタ動作検査時の制御棒動作不良の原因と対策について
   (添付図1参照)
事象概要
および
対 策 等
 高浜発電所2号機は第24回定期検査中の平成19年10月1日に制御棒クラスタ動作検査を行っていたところ、制御棒1本が動作不良のため、ほぼ全引抜き位置にあることを確認しました。
 その後、当該制御棒について、手動にて挿入および引抜き操作を繰り返し行った結果、全挿入位置まで挿入されました。
 原因調査のため、原子炉容器上部ふたを開放し、当該制御棒および制御棒クラスタが挿入されていた燃料集合体、制御棒クラスタをガイドする制御棒クラスタ案内管、制御棒駆動軸および制御棒駆動装置について、カメラによる目視点検等を行いました。
 その結果、制御棒クラスタ下部案内管のCチューブ(断面がC型形状の管)と、Cチューブを通過する制御棒クラスタ表面に筋状模様を確認しました。また、制御棒駆動軸の表面では、通常はラッチが噛みあわない部位にこすれ痕を確認しました。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。


 筋状模様の発生原因および制御棒動作不良との関係等を調査するため、当該制御棒、制御棒クラスタが挿入されていた燃料集合体および制御棒クラスタ案内管の詳細点検を行うとともに、他の燃料集合体や制御棒クラスタ案内管および原子炉容器内についても点検を行いました。

1.当該制御棒等の詳細点検結果
(1)筋状模様等の調査
  Cチューブと制御棒クラスタの表面に認められた筋状模様を詳細に観察した結果、筋状模様は金属光沢があるこすれ痕であり、相対的な位置関係にありました。
  制御棒駆動軸表面のこすれ痕については、制御棒駆動装置が正常に動作した際、制御棒が拘束された状態となったため、制御棒駆動軸と制御棒駆動装置のラッチ爪のかみ合いが通常の位置からずれたことにより発生したものと推定されました。

(2)設備変形等の調査
  制御棒、燃料集合体、制御棒クラスタ案内管を詳細観察した結果、Cチューブと制御棒クラスタの表面に認められた筋状の模様以外は、制御棒の動作不良を起こすような変形等の異常は認められませんでした。

(3)異物発見と制御棒動作不良との関係の調査
  Cチューブ周辺から、粉末状および薄片状の物質と微小な金属片3個が発見されました。発見された金属片のうち1個にはこすれ痕のような金属光沢面がありましたが、残りの2個については、黒褐色でこすれ痕がないことから今回の動作不良には関係しないものと推定しました。
  異物を成分分析した結果、鉄材、コンクリート、塗料と推定しました。また、放射線量が低いことから、今定期検査中に混入したものと考えられました。
  実機を模擬した試験装置で制御棒動作不良の再現試験を行った結果、Cチューブと制御棒クラスタの隙間に異物がはさまると、制御棒の動きを拘束することや、制御棒の挿入と引抜き操作の繰り返しにより、異物がCチューブ内に引き込まれ、Cチューブと制御棒クラスタの表面に筋状のこすれ痕を生じさせることを確認しました。
  その他、当該燃料集合体の案内管の底部から繊維状の異物を回収しましたが、今回の動作不良には関係しないものと判断しました。

2.原子炉容器内等の点検
  残りの燃料集合体と制御棒クラスタ案内管を点検した結果、今回見られたような顕著なこすれ痕や異物は認められませんでした。
  原子炉容器内を点検した結果、燃料集合体を載せる下部炉心板上に半割れの座金、原子炉容器底部に粒子状物質が認められましたが、座金には燃料集合体が載っていた変色跡が見られたこと、粒子状物質はフッ素樹脂で柔らかく、粒径が小さい(粒径1mm程度)ことから、これらの異物は今回の動作不良と関係しないものと判断しました。

3.異物混入経路の調査
(1)Cチューブ周辺で発見された異物
  今定期検査中に実施した1次系機器の作業や、使用済燃料ピットエリアでの作業を対象に、鉄材、コンクリート、塗料が同時に発生し、系統内に混入する可能性がある作業を調査したところ、原子炉容器上部遮へい設置工事※1が該当しました。
  この工事では、原子炉キャビティ※2近傍のコンクリート壁に埋め込まれたアンカーボルトの切断撤去を行っており、原子炉キャビティへの異物混入防止が十分でない状況で作業が行われていました。

  ※1: 原子炉容器上部遮へい設置工事・・・原子炉格納容器周辺建屋屋上における、原子炉運転中の放射線量を低減させるため、原子炉容器の上部に遮へい体を追加設置する工事。
  ※2: 原子炉キャビティ・・・原子炉容器の上部に設置しているプールで、燃料取替え時にほう酸水を満たすことにより、燃料から放出される放射線を遮へいする。

(2)その他の異物
  発生源の特定には至りませんでしたが、過去に原子炉キャビティ近傍で行われた作業で発生した可能性があると考えられました。

4.推定原因
  今定期検査中に実施した原子炉容器上部遮へい設置工事で発生した切粉(鉄材、コンクリート、塗料が混在したもの)が飛散し、原子炉キャビティ壁突起物等に落下した後、原子炉キャビティの水張り、水抜きおよび1次冷却材ポンプの起動による水の流れ等によって、切粉が当該制御棒クラスタ案内管内のCチューブ上面に移動したと考えられました。
  その後、制御棒クラスタ動作検査時に制御棒を引き抜いた際に、制御棒クラスタとCチューブとの隙間に切粉が落下し、制御棒挿入操作時にCチューブに引き込まれ、動作不良が発生したものと推定しました。

5.対 策
(1)当該機器への対策
  当該制御棒クラスタ下部案内管を、既に原子炉容器内に設置している現在使用していない下部案内管と交換します。
また、当該制御棒クラスタおよび制御棒駆動軸を新品に取替えます。

(2)異物混入防止対策
  原子炉キャビティ近傍で異物飛散の可能性がある作業を行う場合には、グリーンハウスを設置する(作業箇所を完全に覆う)などの飛散防止措置を確実に行うとともに、原子炉キャビティ壁突起物や遮へい体および原子炉容器上部ふたに養生を行ないます。
  水張り前の原子炉キャビティ内の清掃にあたっては、これまで実施してきた床面以外に、異物が残留する可能性がある原子炉キャビティ壁突起物等についても清掃します。
  原子炉キャビティの上を通って運搬する必要がある機器や資材については、運搬前に異物の付着がないことを確認します。複雑な形状等のために、十分な確認ができない場合には、シート養生を行い異物が落下しないようにします。
  今回の事象を当社社員、関係協力会社に周知し、原子炉キャビティ近傍での作業における異物管理の重要性を再認識させることとします。

 当該機器への対策を実施した後、調整運転の開始前までに、全ての制御棒について挿入操作を行い、正常に動作することを確認します。

平成19年10月2日10日26日平成20年1月18日 お知らせ済み]




発電所名  美浜発電所2号機 発 生 日 第24回定期検査中(平成19年9月25日)
件  名 A−蒸気発生器入口管台溶接部での傷の原因と対策について   (添付図2参照)
事象概要
および
対 策 等
 美浜発電所2号機は第24回定期検査中に、予防保全対策として、蒸気発生器(SG)出入口管台(計4箇所)溶接部表面の残留応力を低減させるためにショットピーニング工事※1を実施することとし、平成19年9月15日から9月18日にかけて、その施工前確認のための目視点検および渦流探傷試験(ECT)※2を行ったところ、A−SG入口管台溶接部においてECTで13箇所の有意な信号指示が認められ、目視点検で1箇所の傷(ECTで有意な信号指示が確認された箇所)を確認しました。浸透探傷試験(PT)※3を実施したところ、それら全ての箇所において有意な浸透指示模様(最大長さ:約17mm)を確認しました。
 このため、超音波探傷試験(UT)※4で傷の深さを測定した結果、浸透指示模様で最大長さを確認した部位で深さ約13mmの傷を確認しました。この傷の深さを考慮すると、当該管台溶接部の板厚(約68mm)は、電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載している板厚(75mm)を下回るものと評価されました。
 その後、傷が確認されたA−SG入口管台溶接部の内表面について、エッチング※5およびスンプ※6による金属組織観察を行った結果は以下のとおりです。
  エッチングによる金属組織観察の結果、傷は主に600系ニッケル基合金溶接部に認められましたが、ステンレス製短管(セーフエンド)部にも一部認められました。
  最も傷が深かった箇所(長さ約17mm、深さ約13mm)についてスンプ調査を実施した結果、長さ約3〜5mmの複数の割れが軸方向に断続的に存在し、600系ニッケル基合金溶接部内のデンドライト境界※7に沿った割れでした。
この割れの特徴は、これまで国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されている1次冷却材中の環境下における応力腐食割れ※8と同様の様相でした。
  セーフエンド部で認められた傷についてスンプ調査を実施した結果、金属結晶の粒界に沿って枝分かれした割れが複数認められました。
 本事象による環境への放射能の影響はありませんでした。

  ※1: ショットピーニング工事
金属表面に金属の玉を高速度でたたきつけることにより、金属表面の引張残留応力を圧縮応力に変化させる工事。
  ※2: 渦流探傷試験(ECT)
材料表面に渦電流を流して、材料に発生する電磁誘導の変化から検査対象の傷を検出する方法。
  ※3: 浸透探傷試験(PT)
試験体表面に開口している傷を目で見やすくするため、可視染料の入った高浸透性の液を浸透させた後、余分な浸透液を除去し、現像剤により浸透指示模様として観察する方法。
  ※4: 超音波探傷試験(UT)
構造物に入射した超音波が欠陥に当たって跳ね返ってくる反響を観察することにより、欠陥の形態、形状、寸法を調べる方法。
  ※5: エッチング
損傷部の表面を磨いた後、しゅう酸水溶液等により表面を腐食させ、溶接部や母材部などの金属組織の違いを出現させて光学顕微鏡で観察する方法。
  ※6: スンプ
損傷部の表面を磨いた後、表面にフィルム等を貼り付け写し取り、これを顕微鏡で観察。損傷部の金属サンプルを切り出すのと同様な調査が可能。
  ※7: デンドライト境界
溶接部では、溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶(デンドライト結晶)ができ、その結晶組織の境界のことをデンドライト境界という。
  ※8: 1次冷却材中の環境下における応力腐食割れ
1次冷却水中の環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ。
(材料、環境および発生応力の3要素が重なって発生する割れ)


 割れが発生した原因について詳細に調査するため、A−SGの入口管台溶接部および配管の一部を切断し、試験研究機関に搬出して、破面観察や化学成分分析等の調査を行った結果は、以下のとおりです。

1.原因調査結果
(1) 実機切断調査
  (溶接部)
  割れは、軸方向の複数の割れから構成されており、最大深さ約11.5mmであり、デンドライト境界に沿って進展していました。
  割れ周辺は、スンプ観察の前に表面を磨く必要がありバフ施工※9を行ったため、表面は研磨が施されていた状態でしたが、それ以外の溶接部(一般部)に、機械加工※10跡である周方向の筋状の跡が等間隔に認められました。
  表面の残留応力を測定した結果、周方向に約280〜480 MPa、軸方向に約70〜350 MPaの引張残留応力を確認しました。
  溶接金属の化学分析を行い、製造時のミルシート(材料成績書)と相違がないことを確認しました。
     
  ※9: バフ施工
溶接部表面等に対して、電動工具に取り付けた円形状のワイヤブラシ等(バフ)により、表面の研磨を行うこと。
  ※10: 機械加工
溶接により発生する表面の凸凹を切除するとともに、管台とセーフエンド部の段差を無くすため、金属製の刃を周方向に回転させ切削加工すること。
     
  (セーフエンド部)
  割れは、主に2つの表層部の微小な割れからなり、オーステナイト結晶粒界※11に沿った破面が認められました。また、割れの最大深さは約0.9mmであり、当該部の板厚は電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載している板厚(75mm)を上回っていることを確認しました。
  割れ周辺は、スンプ観察の前に表面を磨く必要がありバフ施工を行ったため、表面は研磨が施されていた状態でしたが、それ以外のセーフエンド一般部の表面を型取観察した結果、機械加工跡である周方向の筋状の跡がほぼ等間隔に認められました。
  表面の残留応力を測定した結果、周方向に約570MPa、軸方向に約350MPaの引張残留応力を確認しました。
  短管金属の化学分析を行い、製造時のミルシート(材料成績書)と相違がないことを確認しました。
     
  ※11: オーステナイト結晶粒界
ステンレス鋼に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼が持つハチの巣のような形をした結晶粒同士の境をいう。
     
(2) 製造履歴調査
   当該SGは、平成3年10月〜平成6年2月の間に工場で製作した際、SG管台部とセーフエンド部の溶接作業が行われていました。その際、機械加工を実施していました。
 また、当該管台と今回の検査で傷が認められなかったB−SG管台との製作手順を確認しましたが相違は認められず、溶接の手直しについてもなかったと考えられました。
     
(3) 機械加工再現試験
   機械加工による影響を確認するため、聞き取り結果を踏まえた加工条件で実物大の供試体に機械加工を実施し、表面状態の観察をしたところ、実機で観察されたものと同様な周方向の筋状の跡がほぼ等間隔で確認されました。
 また、残留応力を測定したところ、当該部と同様に、周方向に大きな引張残留応力を確認しました。
     
     
(4) 文献調査
  (溶接部)
   文献調査を行った結果、600系ニッケル基合金溶接部については、加圧水型軽水炉(PWR)の1次冷却材環境下で300MPa以上の応力が残留していた場合、1次冷却材中の環境下における応力腐食割れが発生する可能性があることを確認しました。
 また、応力腐食割れは、溶接部のデンドライト境界に沿った割れが進展することを確認しました。
     
  (セーフエンド部)
   セーフエンド部で使用しているステンレス鋼については、PWRの1次冷却材環境下で応力腐食割れが発生した事例を確認することはできませんでした。
     
(5) 調査結果のまとめ
  (溶接部)
  過去の応力腐食割れ事象と同じデンドライト境界に沿った割れを確認しました。
  溶接部の表面において、1次冷却材環境下で応力腐食割れが発生する可能性のある応力を超える引張残留応力を確認しました。
     
  (セーフエンド部)
  溶接部近傍において、オーステナイト結晶粒界に沿った微小な割れを確認しました。
  セーフエンド部の表面に、機械加工の影響と考えられる高い引張応力が残留していることを確認しました。
     
2.推定原因
   600系ニッケル基合金部の割れについては、取替用SGの製作時の溶接および機械加工を行ったところ、金属表層部に高い引張残留応力が発生したことにより、1次冷却材中の環境下における応力腐食割れが発生し、運転中の応力等によりデンドライト境界に沿った割れが進展したものと推定しました。
 またセーフエンド部は、割れの様相から、内面のごく表層部に高い引張残留応力が発生し、溶接部近傍において運転中の応力等により、オーステナイト結晶粒界に沿った割れが進展したものと推定しました。
     
3.対策
  切出した当該部については、セーフエンド部は新品に取替え、より耐食性に優れた690系ニッケル基合金で溶接を行います。
  セーフエンド部については、バフ施工を行い引張残留応力の低減を図ります。
また、690系ニッケル基合金溶接部についても念のためバフ施工を行います。
   なお、セーフエンド部の割れの発生に関する研究を行い、知見の拡充を図っていきます。


 対策工事には、数ヶ月を要する見込みであり、原子炉起動は今年の夏頃となる見込みです。

平成19年9月25日10月18日平成20年2月4日 お知らせ済み]




発電所名  高浜発電所3号機 発 生 日 第18回定期検査中(平成20年2月4日)
件  名 A、B、C−蒸気発生器入口管台溶接部での傷の確認について  (添付図3参照)
事象概要
および
対 策 等
 高浜発電所3号機は第18回定期検査中、国内外で発生した600系ニッケル基合金溶接部での応力腐食割れ事象を踏まえ、3台ある蒸気発生器(SG)の1次冷却材出口および入口管台の溶接部(計6箇所)内面について、応力腐食割れ予防保全としてショットピーニング工事※1を実施する計画としています。
 この工事のため、1月12日から1月25日にかけて、事前に当該溶接部内面の渦流探傷試験(ECT)※2を行ったところ、A−SG入口管台溶接部で7箇所、B−SG入口管台溶接部で16箇所、C−SG入口管台溶接部で9箇所の有意な信号指示(複数の近接した信号を連続したものと評価した最大長さ A:約28mm、B:約38mm、C:約14mm)を確認しました。


 ECTにおける有意な信号指示が認められたSG入口管台溶接部32箇所について、傷の深さを確認するため超音波探傷試験(UT)※3を実施した結果、A−SG入口管台溶接部の2箇所、B−SG入口管台溶接部の6箇所、C−SG入口管台溶接部の3箇所の計11箇所の板厚が、電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載の75.26mmを下回ると評価しました。(最大深さ A:約9mm、B:約15mm、C:約9mm)


 今後、原因調査のためスンプ※4による金属組織観察等の点検を行います。今後の定期検査工程については、現時点では未定です。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。


  ※1: ショットピーニング工事
金属表面に金属の玉を高速度でたたきつけることにより、金属表面の引っ張り残留応力を圧縮応力に変化させる工事。
  ※2: 渦流探傷試験(ECT)
材料表面に渦電流を流して、材料に発生する電磁誘導の変化から検査対象の傷を検出する方法。
  ※3: 超音波探傷試験(UT)
構造物に入射した超音波が欠陥に当たって跳ね返ってくる反響を観測することにより、欠陥の形態、形状、寸法を測定する方法。
  ※4: スンプ
損傷部の表面にフィルム等を貼り付け写し取り、これを顕微鏡で観察する。

平成20年2月4日 お知らせ済み]




発電所名  高浜発電所2号機 発 生 日 第24回定期検査中(平成19年12月4日)
件  名 B、C−蒸気発生器入口管台溶接部での傷の原因と対策について   (添付図4参照)
事象概要
および
対 策 等
 高浜発電所2号機は、美浜発電所2号機の蒸気発生器(SG)入口管台溶接部(600系ニッケル基合金使用)で傷が確認されたことを踏まえ、第24回定期検査中の平成19年11月25日から12月3日にかけて、3台あるSGの入口管台溶接部内面の渦流探傷試験(ECT)※1を行ったところ、A−SG入口管台溶接部で3箇所、B−SG入口管台溶接部で2箇所、C−SG入口管台溶接部で4箇所の有意な信号指示(最大長さ A:約7mm、B:約7mm、C:約14mm)を確認しました。
 このため、傷の深さを確認するため超音波探傷試験(UT)※2を行った結果、B−SG入口管台溶接部(管台部の厚さ:約79mm)の1箇所で深さが約6mm、C−SG入口管台溶接部(管台部の厚さ:約79mm)の2箇所で深さが約6mmおよび約8mmの信号指示が確認され、計3箇所の板厚が電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載の75mmを下回ると評価されました。
 本事象による環境への放射能の影響はありませんでした。


  ※1: 渦流探傷試験(ECT)
高周波電流を流したコイルを対象となる配管等に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥に起こった渦電流の変化を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。
  ※2: 超音波探傷試験(UT)
超音波を使って金属等の内部にある有害な傷を検出する検査。


 傷が発生した原因について詳細に調査するため、傷の長さ、深さ共に最大と評価したC−SGの入口管台溶接部1箇所について溶接部表面の型取観察およびスンプ※3による金属組織観察等の調査を行った結果は、以下のとおりです。

  ※3: スンプ
損傷部の表面にフィルム等を貼り付け写し取り、これを顕微鏡で観察する。


1.原因調査結果
(1) 型取観察
  傷の周辺および溶接金属全体に機械加工※4による周方向の筋状の跡が等間隔に認められました。
  製造時のバフ施工※5による明確な施工跡については認められませんでした。

  ※4: 機械加工
溶接により発生する表面の凸凹を切除するとともに、管台とセーフエンド部の段差を無くすため、金属製の刃を周方向に回転させ切削加工すること。
  ※5: バフ施工
溶接部表面等に対して、電動工具に取り付けた円形状のワイヤブラシ等(バフ)により、表面施工(仕上げ)を行なうこと。

(2) スンプ金属組織観察
  傷は、長さ約3〜5mmの複数の割れが軸方向に断続的に集まったもので、全体の長さは約11mmであり、デンドライト境界※6に沿った割れでした。
  この割れは、これまで国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されている1次冷却材環境下における応力腐食割れ※7と同様の様相でした。

  ※6: デンドライト境界
溶接部では、溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶(デンドライト結晶)ができ、その結晶組織の境界のことをデンドライト境界という。
  ※7: 1次冷却材環境下における応力腐食割れ
1次冷却材環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ。
(材料、環境および応力の3要素が重なって発生する割れ)

(3) 製造履歴調査
   高浜発電所2号機のSGは、平成3年6月〜平成5年12月の間に工場で製作した際、SG管台とセーフエンドの溶接作業が行われていました。その溶接後に機械加工を実施していました。
 また、当該管台の製作手順を確認しましたが特異性は認められず、溶接の手直しもなかったと考えられました。

(4) 文献調査
   文献調査を行った結果、600系ニッケル基合金溶接部については、加圧水型軽水炉(PWR)の1次冷却材環境下で約300MPa以上の引張応力が残留していた場合、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性があることを確認しました。当社の美浜発電所2号機のSG入口管台溶接部において、機械加工の影響による高残留応力により1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生した事象についても確認しました。
 また、応力腐食割れは、溶接部のデンドライト境界に沿った割れが進展することを確認しました。

(5) 機械加工再現試験 
   高浜発電所2号機SG入口管台の内面機械加工条件については、同部位で応力腐食割れが発生した美浜発電所2号機と同等であり、美浜発電所2号機の原因究明において実施した機械加工再現試験結果から、高浜発電所2号機SG入口管台の溶接部表面においても、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性がある約300MPaを超える引張残留応力が発生すると推定しました。なお、バフ施工を実施すると十分に残留応力が低減することを確認しました。

(6)調査結果のまとめ
  過去の1次冷却材環境下における応力腐食割れ事象と同じデンドライト境界に沿った割れを確認しました。
  美浜発電所2号機の原因究明において実施した機械加工再現試験結果から、SG入口管台の溶接部表面には、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性のある引張応力が残留していたものと推定しました。

2. 推定原因
   取替用SGの製作時に溶接および機械加工を行ったところ、SG入口管台の溶接部表面に高い引張残留応力が発生したことにより、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生し、運転時の応力等によりデンドライト境界に沿って軸方向に割れが進展したものと推定しました。

3. 対策
   B、C−SGについては、以下のとおり対策を実施します。
  (1) 傷を切削し、浸透探傷試験(PT)※8により傷が除去されたことを確認した上で、切削深さを計測し、必要に応じ600系ニッケル基合金で肉盛溶接を行います。
  (2) その後、表面全周に、より耐食性に優れた690系ニッケル基合金で肉盛溶接を行うとともに、念のため、バフ施工を行い残留応力の低減を図ります。

 傷の深さが検出できなかったA−SGについても、同様の方法で対策を実施します。


 対策工事には、数ヶ月を要し、原子炉起動は今年の夏頃となる見込みです。


  ※8: 浸透探傷試験(PT)
検査用の浸透液を材料表面に塗布し、材料表面に開口した傷を検出する検査。

平成19年12月4日7日平成20年2月8日 お知らせ済み]




(2)安全協定の異常時報告事象
発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 第13回定期検査中(平成20年2月7日)
件  名 中性子源領域検出器の電源断による一時的な停止について  (添付図5参照)
事象概要
および
対 策 等
 大飯発電所3号機は平成20年2月2日に原子炉停止し、第13回定期検査中ですが、平成20年2月7日9時46分、中性子源領域検出器(全2台)の電源が一時的に切れ、当該検出器が約40秒間停止し、その間の記録が欠測状態となっていることを確認しました。電源が復旧した後、記録計の値は警報発信前の値に戻っており、原子炉の安全性には影響がないことを確認しました。
 事象発生時は、原子炉容器開放前の原子炉内に燃料が装荷された状態にあり、この状態では、保安規定において、運転上の制限として、1台以上の中性子源領域検出器で監視することが要求されていますが、今回、当該検出器が停止した間(約40秒間)、運転上の制限を満足していないと判断され、同日10時15分に、一時的な運転上の制限逸脱と、復帰を宣言しました。
 当時、原子炉保護系制御装置の定期点検工事として、原子炉保護系の回路(4チャンネル:A〜D)を隔離するため、各チャンネルの回路の切替スイッチを「通常」位置から「定検」位置に切り替える操作を行っていましたが、誤って2チャンネル(BおよびD)続けて「バイパス」位置に切り替えていたことが確認されました。本来の「定検」位置では当該検出器の電源は切れませんが、2チャンネルを「バイパス」位置に操作すると、自動的に検出器の電源が切れる仕組みになっており、そのことによって検出器が停止、その後、異常に気が付いた操作者が直ぐに切替スイッチを「通常」位置に戻した結果、検出器が復旧したものと確認されました。
 本切替操作は、プラントの運転操作を行っている発電室から点検担当課に移管され、点検担当課員の立ち会いのもと、協力会社作業員が操作を実施しました。この操作において、操作手順書と現場機器の状態を照合することや、操作前後のスイッチ位置を指差呼称するなどの確実な操作確認が行われていませんでした。
 対策は以下のとおり実施します。
  保安規定「運転上の制限」に関わる重要な操作については、発電室から点検担当課に操作移管を行わず、発電室が直接操作することとし、その旨、所内ルールに反映します。
  今回、確実な操作確認などの基本動作が実施されていなかったことから、全所員(当社社員および協力会社作業員)に対し、発電所幹部等が基本動作の徹底を図るよう強く指導を行うとともに、点検担当課員に対し、役職者が基本動作に関する指導を行うこととします。
  今回の要因の深堀り検討を行い、所内ルールの改善や教育訓練の充実を図ります。

  ※: 中性子源領域検出器
原子炉が未臨界状態で中性子束の計数が非常に小さな時に測定する装置




(3)保全品質情報等
発電所名  高浜発電所3,4号機 発 生 日 平成20年2月12日
件  名 B—海水淡水化装置生産水ポンプ軸受部からの発火について   (添付図6参照)
事象概要
および
対 策 等
 高浜発電所3号機は第18回定期検査中、高浜発電所4号機は定格熱出力一定運転中のところ、平成20年2月12日10時38分頃に協力会社社員が、4号機西側の屋外に位置する高浜発電所3、4号機 B—海水淡水化装置の生産水ポンプ軸受部から煙がでていることを確認し、発電室当直員が常駐している中央制御室に連絡しました。同日10時45分頃、連絡を受けた当直員が現場に到着し、当該ポンプを停止しました。その直後に当該軸受部から発火したことから、直ちに協力会社社員が消火器で消火しました。
 その後、消防による現場確認が行われ、鎮火が確認されました。
 原因については、現在調査中です。
 なお、本件において、負傷者は発生しておらず、環境への放射能の影響はありません。


  ※1: 海水淡水化装置生産水ポンプ
海水から作った淡水を発電所内に供給するポンプ。

以 上

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