プレスリリース

2008年2月8日
関西電力株式会社

高浜発電所2号機の定期検査状況について(B、C-蒸気発生器入口管台溶接部での傷の原因と対策)

 高浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力82万6千キロワット、定格熱出力244万キロワット)は、美浜発電所2号機の蒸気発生器(SG)入口管台溶接部(600系ニッケル基合金使用)で傷が確認されたことを踏まえ、第24回定期検査中の平成19年11月25日から12月3日にかけて、3台あるSGの入口管台溶接部内面の渦流探傷試験(ECT)※1を行ったところ、A-SG入口管台溶接部で3箇所、B-SG入口管台溶接部で2箇所、C-SG入口管台溶接部で4箇所の有意な信号指示(最大長さ A:約7mm、B:約7mm、C:約14mm)を確認しました。
 このため、傷の深さを確認するため超音波探傷試験(UT)※2を行った結果、B-SG入口管台溶接部(管台部の厚さ:約79mm)の1箇所で深さが約6mm、C-SG入口管台溶接部(管台部の厚さ:約79mm)の2箇所で深さが約6mmおよび約8mmの信号指示が確認され、計3箇所の板厚が電気事業法に基づく工事計画認可申請書に記載の75mmを下回ると評価されました。
 本事象による環境への放射能の影響はありませんでした。

平成19年12月4日12月7日 お知らせ済み]

  ※1: 渦流探傷試験(ECT)
高周波電流を流したコイルを対象となる配管等に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥に起こった渦電流の変化を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。
  ※2: 超音波探傷試験(UT)
超音波を使って金属等の内部にある有害な傷を検出する検査。


 傷が発生した原因について詳細に調査するため、傷の長さ、深さ共に最大と評価したC-SGの入口管台溶接部1箇所について溶接部表面の型取観察およびスンプ※3による金属組織観察等の調査を行った結果は、以下のとおりです。

  ※3: スンプ
損傷部の表面にフィルム等を貼り付け写し取り、これを顕微鏡で観察する。


1.原因調査結果 
(1) 型取観察
  傷の周辺および溶接金属全体に機械加工※4による周方向の筋状の跡が等間隔に認められました。
  製造時のバフ施工※5による明確な施工跡については認められませんでした。
     
   
  ※4: 機械加工
溶接により発生する表面の凸凹を切除するとともに、管台とセーフエンド部の段差を無くすため、金属製の刃を周方向に回転させ切削加工すること。
  ※5: バフ施工
溶接部表面等に対して、電動工具に取り付けた円形状のワイヤブラシ等(バフ)により、表面施工(仕上げ)を行なうこと。
   
(2) スンプ金属組織観察
  傷は、長さ約3~5mmの複数の割れが軸方向に断続的に集まったもので、全体の長さは約11mmであり、デンドライト境界※6に沿った割れでした。
  この割れは、これまで国内外の600系ニッケル基合金溶接部で確認されている1次冷却材環境下における応力腐食割れ※7と同様の様相でした。
     
   
  ※6: デンドライト境界
溶接部では、溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶(デンドライト結晶)ができ、その結晶組織の境界のことをデンドライト境界という。
  ※7: 1次冷却材環境下における応力腐食割れ
1次冷却材環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ。(材料、環境および応力の3要素が重なって発生する割れ)
   
(3) 製造履歴調査
   高浜発電所2号機のSGは、平成3年6月~平成5年12月の間に工場で製作した際、SG管台とセーフエンドの溶接作業が行われていました。その溶接後に機械加工を実施していました。
 また、当該管台の製作手順を確認しましたが特異性は認められず、溶接の手直しもなかったと考えられました。
   
(4) 文献調査
   文献調査を行った結果、600系ニッケル基合金溶接部については、加圧水型軽水炉(PWR)の1次冷却材環境下で約300MPa以上の引張応力が残留していた場合、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性があることを確認しました。当社の美浜発電所2号機のSG入口管台溶接部において、機械加工の影響による高残留応力により1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生した事象についても確認しました。
 また、応力腐食割れは、溶接部のデンドライト境界に沿った割れが進展することを確認しました。
   
(5) 機械加工再現試験
   高浜発電所2号機SG入口管台の内面機械加工条件については、同部位で応力腐食割れが発生した美浜発電所2号機と同等であり、美浜発電所2号機の原因究明において実施した機械加工再現試験結果から、高浜発電所2号機SG入口管台の溶接部表面においても、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性がある約300MPaを超える引張残留応力が発生すると推定しました。なお、バフ施工を実施すると十分に残留応力が低減することを確認しました。
   
(6) 調査結果のまとめ
  過去の1次冷却材環境下における応力腐食割れ事象と同じデンドライト境界に沿った割れを確認しました。
  美浜発電所2号機の原因究明において実施した機械加工再現試験結果から、SG入口管台の溶接部表面には、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性のある引張応力が残留していたものと推定しました。
     
2.推定原因
   取替用SGの製作時に溶接および機械加工を行ったところ、SG入口管台の溶接部表面に高い引張残留応力が発生したことにより、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生し、運転時の応力等によりデンドライト境界に沿って軸方向に割れが進展したものと推定しました。
     
3.対策
   B、C-SGについては、以下のとおり対策を実施します。
   
  (1) 傷を切削し、浸透探傷試験(PT)※8により傷が除去されたことを確認した上で、切削深さを計測し、必要に応じ600系ニッケル基合金で肉盛溶接を行います。
  (2) その後、表面全周に、より耐食性に優れた690系ニッケル基合金で肉盛溶接を行うとともに、念のため、バフ施工を行い残留応力の低減を図ります。
   傷の深さが検出できなかったA-SGについても、同様の方法で対策を実施します。
 対策工事には、数ヶ月を要し、原子炉起動は今年の夏頃となる見込みです。
     
   
  ※8: 浸透探傷試験(PT)
検査用の浸透液を材料表面に塗布し、材料表面に開口した傷を検出する検査。

以  上

  (経済産業省によるINESの暫定評価)
 
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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  INES:国際原子力事象評価尺度
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