プレスリリース

2006年7月10日
関西電力株式会社

大飯発電所3,4号機廃棄物処理建屋での火災の原因と対策について

 本年3月22日に、大飯発電所3,4号機の廃棄物処理建屋※1内で火災が発生しました。3月23日に、若狭消防本部ならびに小浜警察署による現場検証が行われ、最も激しく燃えていたのは、廃棄物処理建屋3階面(地上26m)のフィルタバルブ室※2上部の中2階にある防火シート※3や防炎シート※4などを保管していた機材整理棚の中段部であることが判明しました。

 ※1: 管理区域内で発生する放射性廃棄物(固体、液体、気体)の処理を行う建屋。管理区域内 で発生した廃液を処理する装置や、ドラム詰め装置などが設置されており、ポンプ、タンク、配管などが設置されている。
 ※2: 廃液を処理する際に異物等を取り除くフィルタやバルブ(弁)が設置してある部屋。その 上部のスペースを協力会社の物置き場(ケーブル、養生シート、エアホース、ペンキ、工 具などの置き場)としても使用している。
 ※3: 溶接くず等を最初に受け、火の発生を防止するためのシート
 ※4: ブリキ板が熱を持った場合、その熱を他の部分に与えないようにするシート

[平成18年3月22日23日 お知らせ済み]

1.調査結果
(1)火災現場の調査
防火シート等を保管していた機材仮置場を調査した結果、通電中の電気機器等の火元になる可能性のあるものは確認されませんでした。また、機材整理棚中段に置かれていた防火シートは炭化し、スチール製の棚板に大きな変形が認められるなど、機材整理棚の中段が最も長時間にわたって高熱の環境にあったものと推定されました。
塗料棚を調査した結果、前面の木製の扉は焼失し、スチール製の棚板に変形が認められました。また、中に保管されていたスプレー缶や塗料缶等の内容物はそのまま、あるいは揮発成分が蒸発し固形化して残っていました。
工具棚やキャビネットなど、その他の棚については、機材整理棚や塗料棚と比較すると変形の度合いが小さいことから、熱の影響は小さかったものと推定されました。
 
(2)火元に関する調査
作業調査
火災発生当日に管理区域内で実施された作業45件から、廃棄物処理建屋3階フィルタバルブ室上部の中2階部に関連する作業を調査した結果、「4号機原子炉周辺建屋機材搬入口修繕工事」で使用していた溶接作業の養生用の防火シート、防炎シートなどの資機材を、作業終了後に当該機材仮置場に搬入していたことが確認されました。その他に関連する作業はありませんでした。
当該作業の作業員より作業状況を聞き取り調査した結果、
  溶接作業の際には、上から防火シート、ブリキ板、防炎シートの3層で養生しており、作業終了後、手順に従い、防炎シートやブリキ板について清掃を行うとともに、一番上の防火シートについては散水し冷却していたこと
  作業員2名が、当日16時20分から30分頃に機材仮置場に入り、作業に使用した防火シートや防炎シート等の資機材を機材整理棚などに片付けていたこと
などが確認されました。
機材仮置場への片付けを終えた16時30分頃から火災報知機が作動した18時40分頃の間に管理区域内にいた作業員全員から機材仮置場へ入ったかどうか聞き取りした結果、上記作業員2名の他に機材仮置場へ入った者はいませんでした。
   
再現試験
当日の溶接作業を再現し、防火シートや防炎シートが発火するかどうかを確認した結果、発火は確認されませんでした。
さらに過酷な条件で発火の有無を確認したところ、防火シートは発火しませんでしたが、防炎シートはガスバーナー等で発火し燃焼することが確認されました。
 
(3)火災による設備への影響
火災による損傷部位の確認
火災が発生したフィルタバルブ室上部の中2階においては、排気ダクト1箇所に穴が開いていたほか、廃棄物処理建屋3階の火災感知器、現場相互の連絡に用いるページングの通話装置、ケーブル等の一部が高温の煙により損傷するなどの影響がありました。
損傷等が確認された箇所については、順次取替えを行い、復旧する予定です。なお、火災発生時に、ケーブル損傷によりページングの制御電源が喪失し、システム全体が一時的に使用不能となったため、一部のケーブルが損傷しても制御電源の喪失が発生しないように改善を図ります。
   
コンクリートの健全性評価
火災現場周囲のコンクリート壁の健全性確認を念のため行いましたが、火災の影響を受けていない他の建屋部分と比較しても著しい差異は認められず、問題がないことを確認しました。

2.原 因
   以上の調査結果から、出火の直接の原因を特定することはできませんでした。なお、廃棄物処理建屋3階フィルタバルブ室上部の中2階にある機材整理棚で出火し、防炎シートなどが燃えたことにより、塗料棚のスプレー缶や塗料缶などの有機溶剤の揮発成分に引火したと考えられます。これにより、火災が機材仮置場全体に広がるとともに、発生した煙やすすが建屋3階に広がったものと推定されます。

3.対 策
   今回の火災においては、火災の発生防止という直接的な対策にとどまらず、通報連 絡や早期消火の観点からも反省すべき事項が認められたため、一連の対応について対 策を講じます。
  火災の発生防止
  出火の直接の原因は特定できませんでしたが、当日の溶接作業との関連は否定できないため、溶接時に使用した防火シート、防炎シートは専用のケースに収納し、可燃物の収納場所と分けて一時保管(冷却)する運用を協力会社に周知徹底するとともに、当社社内ルールにも明記しました。
  防火に着目したパトロールを月2回程度の頻度で継続して実施しています。また、溶接作業については、所内関係者で作業場所等の情報共有を図るとともに、作業状況確認のためのパトロールを実施しています。
     
  火災の延焼防止
  管理区域内に必要量以上の揮発性の可燃物、危険物を持ち込まないために、一斉整理を行うとともに、管理方法をルール化します。また、可燃物、危険物を保管する専用エリアの設置を検討します。
     
  火災の影響低減
  当社は自衛消防隊を編成し出動しましたが、煙が充満し2次災害の発生が危惧されたことから、消防隊員が到着してから消火活動を実施しました。対策として、自主的な判断で初期消火活動を展開するため、自衛消防隊による実践的な初期消火活動訓練を消防機関のご指導も踏まえながら継続的に実施します。また、防火衣や防熱服などの警防活動用資機材について、仕様や着用基準の明確化を図っていきます。
  火災発生時の初期活動の強化を図るため、現場確認や初期消火の方法などを定めた初動対応マニュアルを整備します。
  消火活動後に当社および消防隊員で放水を行いましたが、放水による機器への影響を判断するのに時間を要しました。対策として、安全上重要な系統や機器の範囲を示したマップを作成し、機器ごとに適用可能な消火器の表示札を掲示します。
  今後、火災報知機動作時の現場確認を速やかに行うために、監視カメラの増設を検討します。
     
   なお、火災発生時の通報連絡に関して、火災が発生した場合の119番通報は、平日の勤務時間内は当直課長から連絡を受けた防火管理者が、それ以外は当直課長から実施することとしていましたが、今回の火災は平日の勤務時間外に発生し、防火管理者が在席していたため、防火管理者が通報し、情報が錯綜する中での通報となりました。
 対策として、より円滑に消防機関へ通報するため、平日昼・夜間、土・日・休祭日を問わず、現場状況の確認結果を最初に受ける当直課長が火災と判断した場合は、当直課長自らが119番通報することに変更します。


 当社としては、今回火災を発生させ、地域の皆さまにご心配をおかけしたことを反省するとともに、再発防止対策を確実に実施し、今後とも原子力発電所の安全運転に努めてまいります。

以  上

プレスリリース