プレスリリース

2004年7月27日

大飯発電所1号機の原子炉起動および調整運転の開始について

1.主要な工事等について(図-1参照)     
  1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、4台ある1次冷却材ポンプのうち、B-1次冷却材ポンプについて、主フランジボルト並びに同締め付け部等の耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検を行い、異常のないことを確認しました。
 
 
2.保全対策について
(1)原子炉容器管台溶接部等の応力腐食割れに係る点検(図-2参照)     
 国内外PWRプラントにおいて、600系ニッケル基合金を用いた1次冷却材系統の溶接部で応力腐食割れが発生した事例に鑑み、溶接箇所に600系ニッケル基合金が使用されている原子炉容器冷却材入口管台、原子炉容器底部の炉内計装筒管台、AおよびB-蒸気発生器冷却材出口管台等について、外観目視点検を実施するとともにC-蒸気発生器冷却材出入口管台については、超音波探傷検査を実施し、異常がないことを確認しました。
(2)高サイクル熱疲労割れに係る点検(図-3参照)     
 国内PWRプラントにおいて、再生熱交換器の胴側出口配管部で、高温水と低温水の混合により発生する温度ゆらぎを主な要因とする高サイクル熱疲労割れが発生した事例に鑑み、同様の熱疲労割れが発生する可能性のある余熱除去ポンプ入口ミニマムフローライン接続部など対象箇所7箇所について、超音波探傷検査を実施した結果、1箇所に有意な信号指示(計算上必要厚さを確保)が認められたことから、念のため同寸法、同材料の配管に取り替えました。
 
 
3.蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査(ECT)の結果
 4台ある蒸気発生器のうち、BおよびD-蒸気発生器伝熱管(計6,764本:3,382本×2台)について、健全性を確認するため、渦流探傷検査(ECT)を実施した結果、有意な信号は認められませんでした。
 
 
4.定期検査中に確認された異常事象
(1)燃料取替用水タンク変形について(図-4参照
 燃料取出し作業のため、原子炉キャビティの水張り作業を行ったところ、燃料取替用水タンク(以下タンク)が高さ約9m〜13.5mの範囲でほぼ全周にわたり内側に変形、一部で変形に伴う損傷(開口)を確認しました。 原因調査の結果、タンク水位の上昇を伴うキャビティ水抜き作業時にのみ取付けるべき仮設ダクトホースの取り付けと空気抜き管の目張りがなされた状態で、原子炉キャビティの水張り作業を行い、その作業中に、ダクトホースが閉塞したため、タンクへの空気の流れが遮られ、タンク外の圧力(大気圧)に耐えられず変形に至ったものと推定されました。 対策として、原子炉キャビティからタンクに水を戻す時のみ、仮設ダクトホース等の取り付けを行うことを、工事仕様書等に明確に記載することとし、燃料取替用水タンクの変形した範囲は同仕様の胴板に取り替えました。 [平成16年6月10日23日7月12日 お知らせ済
 なお、本件に関して、6月23日、福井県から、安全上重要な機器に対する仮設作業の方法・手順等に問題はないかどうか、確認を行うよう要請を受けており、今回、まず現在定期検査を実施している大飯発電所1、3号機について調査を行い、その調査結果について、本日、福井県に報告を行いました。(詳細については別紙参照)


報告内容は以下のとおりです。
・大飯発電所1、3号機を対象に調査を行い、安全上重要な機器に対する仮設作業を35件抽出した。そこから安全上重要な機器に影響を及ぼす可能性のある仮設作業を特定し、具体的作業内容を確認したところ、タンク変形事象の原因となった「仮設ダクト布設作業」に加えて、新たに1件、「仮設遮へい布設作業」についても、その作業要領書の記載内容が不十分であることが確認されたため、作業の注意事項を盛り込むなど、記載内容の適正化を図ります。
・また当社では、機器の改造や仮設作業を行う際、その作業により既設の機器が影響を受けるかどうかについて事前に評価を行っているが、その評価を行うかどうかの判断基準があいまいであったことから、仮設ダクト布設などの作業については、この評価が十分に行われていなかった。このため、これらの評価の仕組みを適切なものに改めます。


(2)2次系主給水配管曲がり部の減肉について(図-5参照
 計画的に実施している2次系配管の自主点検として、主給水隔離弁から蒸気発生器までの主給水配管の超音波による厚さ測定を行ったところ、4系統ある配管のうち、3系統(A,B,C)の主給水隔離弁下流の配管曲がり部で、部分的な減肉により、法律に基づき国に報告する対象となる厚さ(15.7mm)を下回っていることが確認されました。
 当該配管曲がり部3箇所を切断し、原因調査を行った結果、当該配管曲がり部の上流に位置する主給水隔離弁を水が通過する際に、水流に乱れが生じ、更に当該配管曲がり部を通過する際に、配管曲がり部において乱れが重畳することにより、エロージョン・コロージョンが発生し、徐々に減肉が進展したものと推定されました。
 対策として、当該配管曲がり部(3箇所)については、同寸法・同材料の配管に取り替えました。
 また、当該系統(A~D)を含め、主給水隔離弁と同型式の弁を有する系統について、弁の下流側曲がり部等の減肉傾向の監視を強化することとし、点検指針に反映します。なお、当該配管曲がり部を含め、主給水隔離弁から主蒸気隔離弁までの配管の肉厚測定については、自主点検として実施していましたが、今後は定期事業者検査として、今定期検査から実施しました。
 過去の肉厚測定結果のデータが点検指針に反映されていなかったことを踏まえ、今後、これまでに蓄積されたデータ等を再整理し、調査・分析した上で、点検指針の見直しを検討します。また、協力会社を変更した際にデータ引き継ぎがなされなかったことを踏まえ、記録データを確実に引き継ぐことを当社の社内規則に定め、定期的に監査を実施します。
今回、保守管理上の問題点が明らかになったことを踏まえ、保守管理に係るシステム全般について点検を行い、必要な対策を講じることとします。 [平成16年7月5日16日、27日 お知らせ済]

(3)燃料取替用水タンクからの水のにじみについて(図-6参照
 燃料取替用水タンク(以下「タンク」)変形事象に伴い当該タンクを補修し、原子炉キャビティからタンクへ水を戻し始め、満水(タンク水位:100%)になった後、協力会社社員が耐圧検査準備のため点検を行っていたところ、タンク戻り配管(3インチ径)のサポート当て板をタンクに溶接している付近から、わずかに水がにじんでいることを発見しました。 詳細調査等を実施した結果、割れは、タンク表面が未塗装の状態の間(昭和49年〜昭和56年)に付着した海塩粒子が原因で発生した塩素型応力腐食割れであると推定しました。
 なお、割れは、タンク全体を塗装した後(昭和56年以降)も進展し貫通に至ったと考えられ、塗装皮膜により内部の水が漏えいすることはありませんでしたが、今回のタンクの補修に伴い、配管サポートをプラズマ切断、溶接した際、当該部の塗装皮膜の経年劣化が進んでいた状態に熱の影響が付加されることにより、塗装皮膜が剥がれ、消失し、タンク内部の水がにじみ出たと推定しました。
 対策として、当該部位については、切削し割れを除去した後、溶接補修を行い復旧しました。また、主要溶接部以外の点検で割れが認められた部位についても、切削により割れを除去した上で、溶接補修が必要な箇所については溶接補修を実施しました。
 今後、海塩粒子による応力腐食割れ等の経年劣化に係る点検を実施する場合は、耐圧部だけでなく、形状的に不純物が付着する可能性がある部位についても点検範囲に含めることとします。 なお、従前からの計画で、次回の第20回定期検査(平成17年)において、耐食性にすぐれた材質で、製作時より塗装を施したタンクに取り替える予定となっています。 [平成16年7月5日、16日 27日 お知らせ済]
 
 
5.燃料集合体の検査結果    
 燃料集合体(31体)について外観検査を実施した結果、異常は認められませんでした。
 また、燃料集合体全数193体のうち89体(うち68体は新燃料集合体)を取り替えました。
 
 
6.次回定期検査の予定    
 平成17年夏頃              
 
 
 
以 上
 

<参考資料>

プレスリリース