プレスリリース

2010年1月8日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

 当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成22年1月7日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 運転中
2号機 50.0万 運転中  
3号機 82.6万 第24回 定期検査中
H21年12月13日〜H22年4月中旬予定
 
高 浜
発電所
1号機 82.6万 運転中  
2号機 82.6万 運転中  
3号機 87.0万 運転中  
4号機 87.0万 運転中  
大 飯
発電所
1号機 117.5万 第23回 定期検査中
H21年8月20日〜H22年1月中旬予定
(調整運転中)
2号機 117.5万 停止中
H21年10月21日〜H22年1月下旬原子炉
起動予定
(1次冷却材中の放射能濃度の上昇に伴い停止)
3号機 118.0万 第14回 定期検査中
H21年10月31日〜H22年2月中旬予定
 
4号機 118.0万 運転中  

2.トラブル等情報について

(1) 法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)

なし

(2)安全協定の異常時報告事象
発電所名  大飯発電所2号機 発 生 日 平成21年8月31日
件  名 燃料集合体漏えいに係る調査結果について(原因と対策)        (添付図1)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成21年8月31日、1次冷却材中のよう素(I- 131)濃度と希ガス*1濃度が前回の測定値を上回ったため、燃料集合体に漏えい*2が発生した疑いがあるものと判断し、1次冷却材中の放射能濃度の監視を強化して運転を継続していましたが、10月6日頃から希ガス濃度が上昇傾向にあったことから、漏えい燃料の特定調査を実施するため、10月21日に原子炉を停止しました。
 1次冷却材中の放射能を低減させた後、12月7日から漏えい燃料を特定するため、シッピング検査*3を実施したところ、2体の燃料集合体で漏えいが認められました。
 燃料集合体2体の燃料棒について、漏えい燃料棒特定のため超音波による調査*4を実施した結果、燃料集合体1体(KCHC81)の燃料棒3本、別の燃料集合体1体(KCHC88)の燃料棒1本で漏えいが認められました。
 漏えいが認められた燃料棒計4本について、ファイバースコープを用いて外観目視点検を実施したところ、燃料集合体(KCHC81)の漏えい燃料棒3本では、燃料棒(全264本/体)を保持している第9支持格子*5(最下段)の内部で、燃料棒を支持している支持板またはばね板と燃料棒との間で隙間が認められました。また、そのうちの1本については、第1支持格子(最上段)の下で二次的な水素化*6によるものと思われる燃料棒被覆管の膨らみが認められました。もう一方の燃料集合体(KCHC88)の漏えい燃料棒では、明らかな隙間等は認められませんでした。
 漏えいが確認された燃料集合体2体は、いずれも同一メーカで、同一時期に製造された燃料でした。

1.調査結果
(1)燃料集合体(KCHC81)の追加調査
 当該燃料集合体(KCHC81)の健全な燃料棒(261本)について、ファイバースコープにより第9支持格子(最下段)内の確認を行ったところ、支持板またはばね板との間に隙間は認められませんでした。
 過去の燃料漏えい事例*7を調査したところ、支持格子部に隙間が認められた場合の漏えい原因については、一次冷却材の流れによる微小な振動により、燃料棒と支持板またはばね板がこすれることで燃料棒が摩耗して微小孔(ピンホール)が発生するフレッティング摩耗でした。
 当該燃料集合体の第9支持格子部の一次冷却材の流れを解析したところ、漏えい燃料棒付近の支持格子コーナー部は、中央部に比べて一次冷却材の流れにより燃料棒を振動させる力が強くなる可能性があることがわかりました。

(2)燃料集合体(KCHC88)の追加調査
 燃料集合体(KCHC88)の漏えいが第9支持格子コーナー部の燃料棒で認められたことを受け、燃料集合体(KCHC88)の第9支持格子コーナー部を含む燃料棒(18本)について、ファイバースコープにより第9支持格子(最下段)内の確認を行ったところ、支持板またはばね板との間に隙間は認められませんでした。

(3)製造時期が同じ燃料集合体の調査
 漏えい燃料集合体と同一時期に製造された燃料集合体全36体(当該燃料集合体2体を含む)について、材料から製品に至る製造データについて調査を行った結果、燃料棒を構成するペレット、被覆管および第9支持格子の製造データに大きな偏りはなく、燃料集合体の組み立て工程においても特異な点は認められませんでした。
 また、発電所における使用、取扱実績等の運転履歴について調査を行いましたが、燃焼度や装荷サイクル数等の履歴は異なっており、特に問題点や共通性は認められませんでした。
 今回漏えいした燃料2体と、平成20年度に高浜発電所1号機で漏えいが認められた燃料2体の製造時期が比較的近いことから、製造データの詳細な調査を行ったところ、製造時の品質管理値は満足していましたが、ペレット成型時の上下端面の傾きが、他の製造時期のものに比べて大きい特徴が認められました。

(4)製造時期が異なる燃料集合体の調査
 漏えい燃料集合体より後に製造された燃料集合体では、既に高い燃焼度までの使用実績があるものの、これまでに漏えいは発生していません。
 念のため、これらの燃料集合体のうち6体について、ファイバースコープによる第9支持格子コーナー部の燃料棒(16本)の確認を行った結果、支持板またはばね板との間に隙間は認められませんでした。

2.推定原因
 燃料集合体1体(KCHC81)については、過去の燃料漏えいの事例や、漏えいが認められた燃料棒のファイバースコープによる観察結果および運転中の放射能濃度推移から、第9支持格子内での燃料棒と支持板またはばね板の接触する面で、一次冷却材の流れに当該燃料集合体固有の要因が重なったことで発生した微小な振動によって燃料棒が摩耗し、微小孔(ピンホール)が生じて、そこから漏えいしたものと推定しました。
 もう一方の燃料集合体1体(KCHC88)については、隙間等の異常は見つからなかったことから、現時点で、原因は特定できませんでした。

3.対 策
 漏えいが確認された燃料集合体2体については今後再使用しないこととし、漏えいに至ったメカニズム解明のため、当該燃料集合体2体を1年から2年程度、使用済燃料ピットで冷却および放射能を低減させた後、試験研究施設へ搬出し詳細な調査を実施する予定です。また、漏えい原因が判明するまで、今回漏えいした2体と同一メーカ、同一時期製造の燃料集合体の使用を見合わせることとします。
 大飯発電所2号機は、燃料装荷等の必要な作業を行い、1月下旬頃に原子炉を起動する予定です。

  • *1 ウランの核分裂反応で生成するキセノン等のガス。
  • *2 燃料ペレットを収納している燃料被覆管から漏えいがあると、燃料被覆管内のよう素や希ガスが1次冷却材中に放出される。このため、1次冷却材中のよう素や希ガス濃度の変化から、漏えいの疑いの有無を判断している。
  • *3 燃料集合体から漏れ出てくる気体および液体に含まれる核分裂生成物(キセノン-133、よう素-131等)の量を確認し、漏えい燃料集合体かどうか判断する検査。
  • *4 漏えいが発生した燃料棒の内部に漏えい孔から浸入した水が存在すると、健全な燃料棒に比べて、燃料被覆管を伝播する際の超音波が減衰する。これを検出することで、漏えい燃料棒を特定する。
  • *5 燃料棒を保持するための部品であり、支持格子内は燃料棒1本ごとに燃料棒を保持するための支持板とばね板で構成される。
  • *6 何らかの原因により燃料に一次破損が生じると、冷却水が燃料棒内に浸入して水素が発生する。被覆管は水素を吸収し、一次破損箇所から離れた場所で膨らみが発生する。
  • *7 過去のフレッティング摩耗は、原子炉容器内バッフル板のコーナー部の燃料集合体の上部支持格子部で発生しており、支持格子の設計改良が施された後は同様な事象が発生していないことから、今回の事象との関連性はないと考えられます。

平成21年9月1日10月19日21日12月7日8日18日25日お知らせ済み]

発電所名  大飯発電所1号機 発 生 日 平成21年10月12日
件  名 プラント排気筒ガスモニタの一時的な僅かな指示値の上昇の原因と対策について
(添付図2)
事象概要
および
対 策 等

 定期検査中の10月12日および19日の、いずれも10時10分頃から約10分間、プラント排気筒ガスモニタ*1の指示値が僅かに上昇しました(最大値は両日とも18.1cps*2。通常値は14.5cps)。また、19日には、原子炉補助建屋内の空気を吸引して測定している放射線モニタ*3の指示値が同時刻に上昇しました。
 10月19日までの調査で、モニタが上昇する同じ時間帯で、運転中の2号機の体積制御タンク*4の気相部の水素ガスを処理している気体廃棄物処理系統のガス分析装置の自動校正が動作していることが判明しました。
 排気筒から放出された希ガスの放射能量は12日および19日の合計で約1.0×10Bqと評価し、保安規定に基づく放出管理目標値(3.9×1015Bq/年)に比べ十分低い値でした。また、発電所敷地内および周辺のモニタリングポストの指示値は平常と変わりなく、周辺環境等への影響はありませんでした。

1.調査結果
(1)気体廃棄物処理系(1・2号機共用)の運転実績の調査

  • ・大飯1・2号機では、運転中、1次系の体積制御タンクの気相部(水素ガス)を定期的に取り出し、ガス圧縮機および水素再結合装置を循環しながら、放射性気体廃棄物処理系のガス減衰タンクに圧縮し貯留しています。この際、水素ガスは水素再結合装置にて水にすることで貯留するガスの容積を小さくしています。
  • ・大飯2号機では、8月31日、燃料漏えいの疑いが発生したことから、翌日から、1次冷却材中に含まれる放射性ガス(希ガス)濃度が上昇していくのを抑えるため、気相部の取り出しを連続して実施していました。
  • ・水素再結合装置は、2系列(A、B)あり、通常は一系統を運転しており、9月1日からの処理ではB系を使用していました。
  • ・水素再結合装置では、水素濃度に応じて酸素量を適切に調整する等のため、装置の入口側と出口側での水素濃度及び酸素濃度を分析(ガス分析装置)しています。
  • ・この分析装置では、各濃度の検出計を定期的に自動校正*5する仕組みが備わっており、今回、プラント排気筒ガスモニタが上昇した際には、入口側の酸素濃度計で自動校正が行われていました。

(2)ガス分析装置の入口側酸素濃度計の調査

  • ・酸素濃度計の自動校正は、以下の順序で弁等が自動操作されます。
  • 1水素再結合装置につながる入口弁を閉じた後、窒素ガスを流して濃度計内に残留しているガスを廃棄物処理系(ガス圧縮機側)に排出します。
  • 2出口弁をガス圧縮機側から排気筒側(1号機)に切り替えて、校正用ガス(窒素、一定濃度の酸素)を流して自動校正を行います。
  • ・これら一連の動作に関係する弁等について、校正作業中の圧力状態を模擬した漏えい試験を行ったところ、ガス圧縮機側出口弁でわずかな漏れが認められました。

(3)入口酸素濃度計のガス圧縮機側出口弁の調査

  • ・当該弁は、弁体の自重とバネ力により、弁体先端のゴム製シート部を弁座に押しつけて閉止する構造となっています。
  • ・通常当該弁は開となっていますが、自動校正中(排気筒側への切替時)には、弁は閉となります。この際、弁体で締め切られた下流側はガス圧縮機側の圧力は高く、弁体の上流側(排気筒側)は大気圧となり、この圧力差で弁体が持ち上げられる方向に働き、シート部の押しつけ力が弱まることがわかりました。
  • ・ガス分析装置の弁は平成11年の定期検査で取替えを行い、その後は動作確認を行っていました。
  • ・原因調査として実施した分解点検の結果では、バネや弁座等の構成部品に異常は認められませんでしたが、ゴム製シート部の弁座とのあたり位置にできる凹みが若干深く、幅広くなっていることや、ゴムが若干硬化していることを確認しました。
  • ・A系の同じ弁について確認したところ、自動校正装置設置当初*6から弁閉止時に弁体を押し付ける方向に設置されていました。(弁の取り付け方向がB系とは逆)

2.推定原因

  • ・1号機プラント排気筒ガスモニタが上昇した原因は、燃料漏えいに伴い通常より高い濃度となっていた2号機の放射性ガス(希ガス)を処理していたB−水素再結合装置で、入口酸素濃度計の自動校正時に、ガス圧縮機側出口弁のシート部に漏れが発生し、放射性気体廃棄物処理系統内の高い濃度の希ガス*7が、1号機プラント排気筒から放出されたためと推定しました。
  • ・出口弁のシート部の漏れは、当該弁が閉止した状態で、弁体を押し上げる圧力が作用するような方向になっていためと推定しました。

3.対 策

  • ・当該弁を新品に取り替えるとともに、その設置にあたっては、自動校正中にシート漏れが起きない向きに取り付けました。(B系のみ)
  • ・濃度計(全4台)のプラント排気筒側への排出ラインは栓をして使用しないこととし、自動校正用ガスは全てガス圧縮機側に排出し、気体廃棄物処理系で処理することとしました。(A,B系とも)

 なお、今回の調査の一環として、ガス分析装置の配管からの漏れを確認するため、より精度の高い漏えい検査(ヘリウムリークテスト)を行ったところ、配管継手部3箇所(入口酸素濃度計、入口水素濃度計、出口水素濃度計の各々1箇所ずつ)からごく僅かな漏れが認められたため、継手部の増し締めを行い漏えいは停止しました。また、自動校正動作の確認を行ったところ、濃度計内に残留した放射性ガスを廃棄物処理系に排出するための時間設定が短く、残った放射性ガスがわずかに排気筒側に排出される可能性があることがわかりました。
 これらの影響については、漏れ量が極微量であることや、排気筒モニタの有意な変動がないことなどから、周辺環境への影響はないと評価しました。
 なお、ガス分析装置においては、今後の定期検査時に従来から実施している窒素ガスによるリークテストに加え、ヘリウムガスによるリークテストを行うこととしました。また、今回の事象の対策として排気筒側への排出ラインを閉止することから、残った放射性ガスが排気筒に放出されることはありません。
 今回の事象を受けて、B系の後に設置されたA−水素再結合装置のガス分析装置を確認したところ、自動校正中にシート部の漏れが起きないように弁の取り付け方向を配慮しており、B系の当該弁については、その配慮が反映されず、今回の事象に至るまで取り付け方向が改善されていませんでした。このことを踏まえ、放射性ガスの放出にかかる系統設備について、設備設計に問題がないかを設計根拠や実際の設備動作等を書類及び現地調査により確認していきます。

  • *1 運転に伴って発生する気体放射性廃棄物(希ガス)を監視するモニタ。大飯1号機ではプラント排気筒で原子炉格納容器および補助建屋からの排気を監視している。
  • *2 1秒間に測った放射線の数を表す単位。
  • *3 気体廃棄物処理系統の換気空調系ガスモニタ(通常は常時測定しているものではないが、10月12日以降、常時計測する設定に変更していたもの)。
  • *4 化学体積制御系の設備で、原子炉容器や配管内の1次冷却材の量を調整するためのタンク。
  • *5 入口酸素濃度計は、タイマーにより168時間(7日)毎に約10分間、自動校正(計器のゼロ点調整とスパン調整)が行われるように設定されていた。
  • *6 B系は昭和61年、A系は昭和62年に取替えられ、自動校正となった。
  • *7 2号機の希ガス濃度は10月上旬から、それまでの値より約5倍(2,260Bq/cm3→ 9,700Bq/cm3)上昇していた。

平成21年10月19日12月7日お知らせ済み]

発電所名  大飯発電所1号機 発 生 日 平成21年12月24日
件  名 プラント排気筒ガスモニタの一時的な指示値の上昇の原因と対策について(添付図3)
事象概要
および
対 策 等

 調整運転中の平成21年12月24日14時46分から15時03分にかけて、プラント排気筒ガスモニタ*1の指示値が僅かに上昇しました(最大値は約19.4cps*2。通常値は約14.5cps)。
 大飯発電所1号機では、この時間帯に1号機の体積制御タンク水位計の検出配管内に溜まった水を抜く作業を実施しており*3、水位計につながるドレン配管の先端にビニール袋を取り付け、ドレン弁を開いて、水とともに系統内の放射性ガスを回収していました。
 14時42分にドレン弁を開いた後、現場に設置した仮設モニタの指示値が上昇したため、ドレン弁を閉じましたが、室内に漏れ出た放射性ガスがプラント排気筒に排出され、モニタの指示値が上昇したものと推定し、原因調査を行うこととしました。
 放出された放射性気体廃棄物の放射能量は、約4.5×10Bqと評価しており、保安規定に基づく発電所の放出管理目標値(3.9×1015Bq/年)に比べ約860万分の1以下と十分低い値でした。
 また、発電所敷地内および周辺のモニタリングポストの指示値は平常と変わりなく、周辺環境等への影響はありませんでした。

1.調査結果
(1)体積制御タンク水位計の水抜き作業に関する調査

112月24日の水抜き作業状況

 当日、14時38分から14時42分にかけて、ドレン配管に水抜き用の仮設ホースとビニール袋(容量50リットル)を取り付けた後、弁を開く操作を行いました。
 排気筒モニタの指示値は、14時46分から上昇傾向が見られ、14時47分頃、水抜き作業の現場に設置していた仮設放射線モニタの指示値が急激に上昇したことから、直ちに各弁を閉止しました。
 排気筒モニタの指示値は14時50分に最も高くなり、その後低下しました。

2水位計の検出配管内の水抜き作業

 今回指示不良となった水位計は、体積制御タンク上部のガス抜き配管と接続しており、指示不良は12月18日から発生していました。
 このため、12月21日に今回と同じ方法で水抜き作業を行って約700ccの水を回収し、その直後は指示値が回復したように見えましたが、指示不良が引き続き発生していたことから、水の回収が不十分であったと判断し、再度水抜き作業を行うこととしました。
 12月24日に2回目の水抜き作業として弁を僅かに開き、水が間欠的に噴出する状況を監視していたところ、現場の仮設モニタの指示値が上昇したため、直ちに弁を閉止しました。この作業で回収された水は約10ccでした。その後、水位計の指示は正常な状態に復旧しました。

(2)放射性ガスが漏えいした原因の調査
 排気筒モニタの指示値が上昇した時間帯の作業および運転操作について調査したところ、当該水抜き作業の他に、放射性ガスを扱う作業や運転操作はなかったことから、作業で使用した仮設ホース等について調査を行いました。
 作業で使用したホースとビニール袋について、発泡剤等により漏えい検査を行った結果、ドレン配管とホースをつなぐ継手部で漏えいを確認しました。このため、継手部とホースとの接続状態を確認したところ、継手内に差し込むホースの長さが十分でないことが判明しました。
 この継手は、差し込んだホースの抜けを防止する部分(チャック)と、継手とホースの隙間をシールする部分(パッキン)で構成されており、ホースを所定の長さまで差し込んだ状態では漏えいせず、差し込みが不十分な状態では継手内部の隙間から漏えいすることがわかりました。
 また、作業員への聞き取り調査の結果、継手にホースを差し込んだ後、引っ張って抜けないことは確認していましたが、ホースの差し込み量が十分であったかどうかは確認していませんでした。

2.推定原因
(1)プラント排気筒モニタの指示値が上昇した原因
 体積制御タンク水位計の指示不良を改善するため、水位計の検出配管内にたまった水を抜く作業を行った際、ドレン配管につないだ仮設継手部へのホースの差し込み量が少ない状態でドレン弁を開放したことにより、継手部から体積制御タンク気相部の放射性ガスが室内に漏れ、建屋の排気ダクトからプラント排気筒に放出されたものと推定しました。
(2)水位計の指示不良が発生した原因
 水位計の検出配管内に水がたまり、指示不良となる原因について調査したところ、同様の指示不良が、前回の定期検査後の原子炉起動時に発生していましたが、それ以前には発生していないことがわかりました。
 このため、原子炉起動時の運転操作を分析したところ、指示不良が発生する直前の操作として、1次冷却材の一部を化学体積制御系統に抽出して行っていた水質を安定させる操作がほぼ終了したことから、この抽出流量を下げる操作と同時に、抽出した1次冷却材を系統に戻すため、充てん/高圧注入ポンプ*4出口にあるミニマムフローライン*5の弁を開く操作を行っていました。この操作は、平成18年に実施した定期検査後から実施していました。また、前回と今回の定期検査後は、この操作を行った際に体積制御タンクから気相部の放射性ガスを気体廃棄物処理系統に排出する操作を行っていました。
 この弁の操作を行うと、充てん/高圧注入の入口側にミニマムフローラインからの水が流入し、その圧力上昇により、ポンプ入口側に設置しているガス抜き配管内の水が押し上げられ、当該配管の先にある水位計の検出配管が接続されているドレン配管に多くの水が流れ込みました。
 ドレン配管に多くの水が流れ込むと、検出配管にも水が流入し、配管の位置関係から水が滞留します。この水により体積制御タンク気相部の圧力が水位計の圧力伝送器に正確に伝えられず、指示不良に至ったものと推定しました。

3.対 策 

  • ・水位計の検出配管部への水の流入を防ぐため、原子炉起動時に抽出流量を下げる場合は、充てん/高圧注入ポンプ入口部のガス抜き配管に設置されている隔離弁を閉止します。なお、次回の定期検査時に、当該水位計の検出配管を、水が流入しにくい位置に変更します。
  • ・仮設のホースや継手等を用いて放射性ガスを取り扱う作業の際には、継手部に差し込むホースにマーキングを行い、差し込み不足とならないよう確実に管理するとともに、継手部をビニールテープ等で養生します。

 なお、今回の作業では、作業現場での放射性ガス漏えいを早期に検知するため設置していた仮設モニタでの検知が遅れたことや、仮設継手部からの漏えいを封じ込める対策等について、事前の検討が不足していたことから、今後、仮設設備を用いて放射性ガスを取り扱う作業については、作業計画段階で、作業体制や監視方法等について多角的なリスク評価を行うための検討会を開催し、放射性ガスの予期せぬ放出を徹底的に防止することとします。
 大飯発電所1号機は、本事象により、1月上旬に予定していた本格運転再開の時期を、1月中旬に延期します。

  • *1 運転に伴って発生する気体放射性廃棄物(希ガス)を監視するモニタ。大飯1号機ではプラント排気筒で原子炉格納容器および補助建屋からの排気を監視している。
  • *2 1秒間に測った放射線の数を表す単位。
  • *3 体積制御タンクは原子炉容器や配管内の一次冷却材の量を調整するためのタンク。点検の結果、体積制御タンク水位計の指示値が通常より低いことから、水位計の検出配管に水が滞留している可能性があると判断し、水抜きを実施して調査することとした。
  • *4 体積制御タンクの水を充てん系や1次冷却材ポンプ封水注入系へ供給することで、1次冷却材系統と化学体積制御系統の水の循環を行うポンプ。
  • *5 ポンプの必要最低流量を確保するための配管。

平成21年12月24日平成22年1月 7日 お知らせ済み]

発電所名  大飯発電所2号機 発 生 日 平成21年12月14日
件  名 原子炉格納容器内の空気再循環冷却ユニットの点検と補修について    (添付図4)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成21年6月下旬、原子炉格納容器内のサンプ(水溜め)に溜まった水を移送する際に行う分析で、格納容器内にある各機器を冷却するための機器冷却水*1に含まれるクロム酸が検出されました。このため、この冷却水が供給されている機器のうち、運転中に停止可能な機器について順次隔離したところ、C−下部コンパートメントの空気再循環冷却ユニット*2(以下「冷却ユニット」という)を隔離した結果、漏れは停止しました。また、隔離後の現場点検で、当該ユニット下部やその下の床面などに濡れ跡を確認しました。
 本事象による環境への放射能の影響はなく、冷却ユニットを1台停止しても、他の3台で格納容器内の温度管理は可能であることから、運転には支障はありません。
 大飯発電所2号機の燃料集合体漏えいに係る調査のための停止期間中にあわせて、当該冷却ユニットを点検したところ、冷却水が流れる伝熱管1本の入口部近くに貫通孔(長さ:約2.5mm、幅:約0.4mm)が認められ、管内部では折れ曲がった金属の線状異物(長さ:約130mm、直径:約3.2mm)が入口部で引っかかっており、管内面にこすれ跡も確認しました。この異物を分析した結果、仮設足場等で使用している鋼線の切れ端であることがわかりました。
 以上のことから、冷却ユニットを開放点検した際、何らかの原因で鋼線の切れ端が冷却ユニット内に混入し、当該伝熱管の入口部に引っかかり、管内面をこすり続けたため、貫通孔が生じたものと推定しました。
 対策として、当該冷却ユニットの伝熱管(銅材)の貫通孔をろう付け溶接で補修し、漏えい試験により漏れがないことを確認します。
 また、機器内から異物が発見されたことの調査では、前回の定期検査で、当該冷却ユニットの入口配管フランジ部のパッキン取替えのため、機器を開放していた際、その近くで足場解体作業が行われており、機器点検のエリアと通路との区画管理が徹底されていなかったことが原因と推定されることから、今後は、機器の開放作業時においては、区画管理・異物管理の徹底を再周知します。
 さらに、機器冷却水が供給されている格納容器内の機器について、内部の目視点検を行い、異物が混入していないことを確認します。

  • *1 1次系のポンプモータや空調器等の冷却水として使用される水で放射能は含まれていない。この水には腐食防止用のクロム酸が添加されている。
  • *2 下部コンパートメント空気再循環冷却ユニットは、通常運転時に原子炉格納容器下部の空気の冷却を行う機器である。冷却ユニットは4台(A〜D号機)設置されているが、気温が上昇する夏季においても3台運転により格納容器内の温度を管理できる能力を有している。夏季以外においては2台で冷却を行っている。

平成21年12月18日 お知らせ済み]

以 上

プレスリリース