プレスリリース

2004年7月16日

原子力発電所の運営状況について

 当社原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1. 運転状況について(平成16年7月15日現在)

* : 大飯発電所3号機第10回定期検査は、原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいに伴い、 原因調査を継続しており、本格運転再開時期は当初予定の6月下旬から遅れております。

2.保全品質情報※について(平成16年6月分)

実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則および電気関係報告規則に基づく報告事象や安全協定の異常時報告事象に該当する事象を含め、保安活動向上の観点から、産官学において情報共有することが有益である事象

(1) 法令に基づく報告事象や安全協定の異常時報告対象のうち重要な事象
発電所名     大飯発電所1号機 発 生 日 第19回定期検査中(6月10日)
件  名 燃料取替用水タンクの変形について (添付図-1
事象概要および対 策 等

 6月10日8時40分頃、当社社員が燃料取替用水タンク(以下タンク)の上部付近が変形していることを発見しました。変形の原因は、タンクへの仮設ダクトホース取り付けにあたって、平成13年度に作業を協力会社に発注した際、工事仕様書等に取り付け時期が明確になっておらず、タンク水位の低下(タンク内部の圧力が低下)を伴う原子炉キャビティへの水張りを行う際にダクトホースを取り付けたために、その際、たるんで設置されていたダクトホースの一部が倒れ、空気の流れが悪くなり、タンク側面部のダクトホースがつぶれたことでタンクへの空気の流れが遮られ、タンク外の圧力(大気圧)に耐えらず変形に至ったものと推定されました。 対策として、タンクに水を戻す時のみ、仮設ダクトホースの取り付けとテープの目張りを行うことを、発電所内の規則および当該工事の工事仕様書等に明確に記載することとし、タンクの変形した範囲は同仕様の胴板に取り替えることとしました。なお、次回定期検査で恒設の排気ラインが取り付けられた新しいタンクに取り替えることになっております。                

6月10日23日 お知らせ済み)

 今回の事象は、平成13年度に作業を協力会社に発注した際、仮設ダクトホースの運用が、工事仕様書等に盛り込まれなかったことが原因となっていることから、その背景について引き続き調査を実施しました。

1.調査結果
(1)仮設ダクトホースの取り付け運用について
a.平成12年度の運用 平成12年度当時のダクトホースの運用にあたっては、関係部署で協議し、タンクからの水抜き時はタンク内部の圧力低下防止対策が必要と認識のもと、タンクに水を戻す時にのみダクトホースおよび目張りを取り付けていました。
 
b.平成13年度以降の運用 平成13年度にダクトホース等の取り付け工事を協力会社に発注する際、、タンクからの排気を管理することに意識が集中し、タンク内部の圧力低下に関する認識が薄れ、協力会社へ発注する際の工事仕様書に明確に記載されていなかったため、工事の施工手順や、留意点等を記載する協力会社の作業要領書にダクトホース等の取り付け時期が明確に記載されませんでした。
 
 
(2)安全上重要な設備に関する設計検証について
 当社では、不具合の発生を未然に防ぐ観点から「安全上重要な設備」に関する設計検証を行うことを定めています。燃料取替用水タンクは、「安全上重要な設備」に分類されますが、ダクトホース取付工事は、タンクそのものの仕様変更や形状変更等を伴うものではないため、当時は設計検証対象の工事ではありませんでした。その後、間接的に機器の機能に影響を及ぼす可能性のある工事も対象としましたが、今回のダクトホース等の取り付け作業は、設計検証の対象外であると判断したため、タンク内部の圧力低下防止に対する注意事項(タンク内に水を戻す時だけダクトホースおよび目張りを取り付けること)が抽出されませんでした。 
 
 
2.今後の対策
 直営および委託工事等の実施にあたって、工事を担当する部署は、協力会社を含めた検討や協議等で抽出された注意事項等を明文化し、協力会社を含む関係者全員に確実に周知します。また、注意事項に関連する重要な作業ポイントについて、工事を担当する部署による作業確認と注意喚起等を徹底します。さらに、これらの仕組みが確実に進められていることについて「発電所品質管理部門」による定期的な確認を行います。「設備所管部署」と異なる部署が、安全上重要な設備の機能に影響を及ぼす可能性がある仮設物を取り付ける工事を実施する場合、工事を担当する部署が、「原子力発電所保修業務要領指針」に基づき実施する設計検証について「設備所管部署」の確認を得るよう、同指針を改訂します。                        
 
 
 
 当該タンクについては、7月12日、同仕様の胴板に取り替えを完了しております。


発電所名     大飯発電所3号機 発 生 日 第10回定期検査中(5月5日)
件  名 原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいについて (添付図-2
事象概要および対 策 等

 5月4日、原子炉容器上部ふたの管台70箇所の外観目視点検準備を行っていたところ、制御棒駆動装置取付管台1箇所(No.47)の付け根付近に白い付着物(1次冷却水に含まれるほう酸)を確認しました。5月5日、ほう酸は当該管台の周囲にのみ認められたことから、当該管台からの漏えいであることが確認されました。
 また、他の管台(69箇所)についても点検を行ったところ、温度計取付管台1箇所(No.67)の側面および付け根付近にも、付着物が確認されました。

5月6日 お知らせ済み

 その後、当該管台からの漏えい箇所を特定するため、サーマルスリーブを切断して、ヘリウムリークテスト、渦流探傷検査(以下「ECT」)、浸透探傷検査(以下「PT」)、超音波探傷検査(以下「UT」)などの検査を行いました。  


1.制御棒駆動装置取付管台(No.47) 
  • 当該溶接部についてECTを実施したところ、溶接部の270°付近に有意な信号指示が確認されました。
  • ECTにより有意な信号指示が確認された付近の表面を手入れ(切削)し、PTを行ったところ、微小な線状および点状の浸透指示模様が確認されました。
  • 浸透指示模様が確認された箇所を目張りし、へリウムリークテストを実施した結果、浸透指示模様が確認された位置以外に漏えいはないと判断しました。
  • また、金属組織観察(スンプ観察)を行った結果、浸透指示模様の位置に径方向の、結晶粒界に沿った直線状の割れであることが確認されました。
  • さらに、手入れ後、金属組織観察を行ったところ、割れの長さは長くなり、一部の割れはつながり、結晶粒界に沿って枝分かれしていることが認められました。
  • 管台内面からECT、UTを行った結果、管台母材部においては、割れは認められず、270°付近で径方向の欠陥と推定される信号指示が認められたほかは、有意な信号指示は認められませんでした。さらに、上部ふた外表面より当該管台の周囲についてUTを行った結果、上部ふた母材部で割れ等の欠陥は認められませんでした。以上のことから、当該管台での漏えいは溶接金属内での径方向の割れが貫通し、漏えいに至ったものと推定しました。

2.温度計取付管台(No.67)

  • ヘリウムリークテストの結果、漏えいは認められませんでした。
  • ECTやUTを実施した結果、管台母材部および溶接部に有意な信号指示は認められませんでした。
  • 点検記録を確認した結果、平成3年の建設試運転時において、上部のシール部で1次冷却水(ほう酸水)が漏えいした事象がありました。

以上のことから、当該管台については、建設試運転時に漏えいしたほう酸が十分に拭き取られず、漏えい跡が残っていた可能性が高いと考えます。

7月9日 お知らせ済み

 現在、No.47管台で認められた漏えいについて、原因調査を継続しております。

(2) (1)に至らない軽微な事象
 該 当 な し                                                      

以 上

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