プレスリリース
2008
2008年3月26日
関西電力株式会社
大飯発電所2号機の出力降下について(制御棒位置偏差大警報発信の原因と対策)
大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、定格熱出力一定運転中、平成20年3月12日9時15分から定期試験(1回/月)である制御棒動作確認試験を実施していたところ、停止グループのバンクD(制御棒4本/グループ)を228ステップから216ステップまで挿入し、その後222ステップまで引き抜いたところ、9時31分に「制御棒位置偏差大※1」の警報が発信しました。
直ちに、ステップカウンタ※2表示値と制御棒の位置を指示する装置※3の指示値を確認したところ、停止グループバンクDのステップカウンタ表示値は222ステップでしたが、制御棒の位置を指示する装置では、1本の制御棒が198ステップを指示しており、残りの3本については、222ステップを指示していることを確認しました。
保安規定※4に基づき、10時25分から出力降下を開始し、11時45分に原子炉出力を75%以下としました。
また、炉外核計装装置の指示値に若干の指示値低下が認められたことから、制御棒が滑り落ちた可能性がありました。
なお、本事象による周辺環境への影響はありません。
保安規定で定める運転上の制限として、全ての制御棒が不整合でないことが求められていることから、当該制御棒の挿入、引き抜き操作を行い、正常位置に戻し、3月13日23時45分に保安規定の運転上の制限を満足した状態に復帰しました。
直ちに、ステップカウンタ※2表示値と制御棒の位置を指示する装置※3の指示値を確認したところ、停止グループバンクDのステップカウンタ表示値は222ステップでしたが、制御棒の位置を指示する装置では、1本の制御棒が198ステップを指示しており、残りの3本については、222ステップを指示していることを確認しました。
保安規定※4に基づき、10時25分から出力降下を開始し、11時45分に原子炉出力を75%以下としました。
また、炉外核計装装置の指示値に若干の指示値低下が認められたことから、制御棒が滑り落ちた可能性がありました。
なお、本事象による周辺環境への影響はありません。
保安規定で定める運転上の制限として、全ての制御棒が不整合でないことが求められていることから、当該制御棒の挿入、引き抜き操作を行い、正常位置に戻し、3月13日23時45分に保安規定の運転上の制限を満足した状態に復帰しました。
[平成20年3月12日、3月14日 お知らせ済み]
※1: | ステップカウンタの表示値と制御棒位置指示装置の指示値の偏差が±12ステップ以上、または各バンクの制御棒位置指示装置の指示値の偏差が±12ステップ以上になると警報が発信する。 | |
※2: | 制御棒の操作信号を数えて、制御棒位置を表示する装置。 | |
※3: | 電気的にコイルを用いて制御棒位置を指示する装置。 全挿入位置は0ステップ、全引抜き位置は228ステップ。 |
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※4: | 当該警報が発信し、制御棒1本が不整合であることを確認後、1時間以内に復旧できない場合、2時間以内に原子炉出力を75%以下に下げる必要がある。 |
1.原因調査結果 | |||||
当該制御棒が滑り落ちた原因として、制御棒を駆動させる電気設備や制御棒駆動機構等の異常が考えられるため、以下の調査を行いました。 | |||||
(1) | 電気設備の調査 | ||||
a. | 制御棒駆動装置盤 | ||||
ヒューズ、配線等の接触不良により発生した可能性があることから、当該停止グループについて調査しましたが、異常は認められませんでした。
また、当該停止グループのコイル電流測定や、制御棒駆動装置動作確認時における各コイルの電流波形の確認を行いましたが、異常は認められませんでした。 |
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b. | 制御棒位置指示装置 | ||||
警報発信後の確認において、指示装置の異常を示す警報が出ていなかったこと、また、炉内出力分布結果から求めた評価位置と指示位置が一致していたことから、指示装置は正常であると考えられました。 | |||||
(2) | 制御棒駆動機構の調査 | ||||
部材の変形等による制御棒駆動機構摺動抵抗(部品同士の僅かな隙間部に生じる抵抗)の増加の有無について調査した結果、制御棒動作確認時のコイル電流波形および動作状況に異常は認められませんでしたが、1次冷却材中に存在するクラッド※5が摺動部の隙間に入り込んで、駆動機構摺動抵抗が増加する可能性があると考えられました。 | |||||
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(3) | 制御棒動作ライン(制御棒の通る部分) | ||||
制御棒動作確認では異常は認められていないことから、制御棒動作ラインの部品隙間部の抵抗に変動は生じていないと考えられます。 | |||||
(4) | 1次冷却材の水質調査 | ||||
前々回から前回定検と今回のプラント運転中の1次冷却材中の水質(pH、濁度等)は、社内管理値以内で管理されていることを確認しました。
また、至近3定検以降の停止中、運転中の1次冷却材中のクラッド濃度に特異な変化はなく、異常は認められませんでした。 |
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(5) | その他(制御棒動作確認試験時等の動作確認) | ||||
原子炉出力75%以下の状態で当該制御棒を正常な位置に戻して、全ての停止グループバンクの制御棒動作確認試験を行った結果、制御棒の動作状況および制御棒駆動装置のコイル電流波形に異常は認められませんでした。
制御グループバンクについても、原子炉出力75%以下の状態での制御棒動作確認試験や、出力降下時における制御棒の動作状況を確認した結果、異常は認められませんでした。 また、3月25日より出力上昇を開始し、翌26日5時20分に定格熱出力一定運転状態として制御棒動作確認試験を行った結果、異常は認められませんでした。 |
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2.国内外の同種事例調査 | |||||
国内外の同種事例を調査した結果、国内で1件、海外で数件の事例が抽出され、制御棒の滑り落ち事例については、制御棒駆動機構摺動部へのクラッドの付着が原因であることがわかりました。 | |||||
国内の事例 | |||||
・ | 平成18年12月に四国電力伊方発電所2号機で発生した制御棒の滑り落ち事象は、制御棒駆動機構摺動部へのクラッド等の付着により摺動抵抗が増加したことで、ツメ※6の動作時間遅れが発生したことが原因と推定されています。
当社は、クラッド濃度が高くなるプラントの停止時、起動時の制御棒動作時には、1次冷却材浄化流量を最大とし、クラッドの低減に努めることや、通常運転中にはクラッドの濃度測定、および適切な1次冷却材の浄化流量の管理を行うことについて、伊方発電所2号機の事象が発生する以前から実施しています。 |
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海外(米国)の事例 | |||||
・ | 制御棒駆動装置設計メーカであるウェスティングハウス社が昭和52年に出した見解では、制御棒を数ステップ動作させることにより事象が解消するような制御棒の滑り落ち事象は、クラッドが制御棒駆動機構内に浸入したことが原因の偶発的な事象であるとしており、クラッド量低減のために、1次冷却材を浄化することを推奨しています。この見解は現在も変わっていません。 | ||||
以上より、今回の同種事象は、国内PWR(23基)では伊方発電所2号機の1件(~現在)で、米国PWR(約60基)では約1件/年(平成2年~18年)であり、極めて稀なケースと考えられます。
制御棒駆動装置内のクラッド量低減のためには、現在実施している浄化運転に加え、高温停止状態にて制御棒を動作させることにより、制御棒駆動装置内の水を、浄化運転によりクラッド濃度が低くなった1次冷却材と入れ替えることが有効と考えられます。 |
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3.健全性評価 | |||||
制御棒の機能で最も重要なことは、原子炉の緊急停止が必要な場合に、所定の時間内に制御棒が炉心に挿入されることですが、今回の事象では制御棒の挿入性に問題はなく、これらの安全機能は確保されていました。 | |||||
4.推定原因 | |||||
原因調査、および同種事例の調査結果などから、1次冷却材中に存在するクラッドが制御棒駆動機構の摺動部の隙間に入り込んで摺動抵抗が増加し、固定つかみ部の動作が遅れてツメが駆動軸の溝にかみ合っていない状態で可動つかみ部のツメを離したか、可動つかみ部の動作が遅れてつかみ方が不十分な状態で固定つかみ部のツメを離したこと等から、制御棒が自重で滑り落ちたものと推定されました。 | |||||
5.対 策 | |||||
今後の定期検査のプラント起動時に、従来から実施している低温停止状態における制御棒の全挿入・全引き抜き操作に加えて、新たに高温停止状態においても制御棒の全挿入・全引き抜き操作を行い、制御棒駆動装置内のクラッドの排出促進を図ります。
また、次回定期検査までの間、運転中に行う月1回の制御棒動作確認試験で、停止グループバンクDのコイル電流波形を採取して、駆動機構がスムーズに動作していることを確認します。 なお、制御棒動作波形観測装置を設置し、高温停止状態における制御棒動作確認時に電流波形を採取して動作時間を確認することで、駆動機構の動作影響状況を的確に把握していきます。 |
以 上
(経済産業省によるINESの暫定評価) | |||||||||
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INES:国際原子力事象評価尺度 |