プレスリリース

2007年3月16日
関西電力株式会社

美浜発電所1号機余熱除去系統サンプリングラインの溶接事業者検査手続き漏れの原因と対策について

 美浜発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力34万キロワット、定格熱出力103万1千キロワット)は、平成18年11月1日より第22回定期検査中ですが、平成19年2月16日、今回の定期検査で実施した余熱除去系統※1サンプリングライン※2の溶接形状変更工事において、溶接事業者検査※3を実施していない箇所が2箇所あることが判明しました。

 ※1: 余熱除去系統
  原子炉を停止した後の炉内の燃料の余熱を除去する系統であり、事故時に原子炉を冷却する機能も有している系統。
 ※2: サンプリングライン
  配管内流体を分析するために試料採取装置へ導くための系統。
 ※3: 溶接事業者検査
  電気事業法第52条に基づいて、溶接部の健全性を確認するために、事業者が溶接検査を実施するとともに、独立行政法人原子力安全基盤機構に溶接安全管理審査を申請し審査を受ける。

[平成19年2月16日 お知らせ済み]

 当該工事は、平成17年3月に発生した大飯発電所3号機の加圧器気相部サンプリングラインからの1次冷却水漏えい事象の水平展開※4として、余熱除去系統サンプリングラインの第一弁の下流配管の溶接形状を変更するとともに、溶接時の作業性を考慮し、第一弁とその上流側配管をあわせて取り替えたものです。
 美浜発電所1号機では、前回定期検査に引き続き、今定期検査で大飯発電所3号機の事象の水平展開として133箇所(当該2箇所を除く)の溶接形状変更工事を行っています。


 ※4: 漏えいの原因が初期の溶接不良であったことから、各発電所では至近定期検査で現場調査を実施し、5定期検査以内に類似箇所の溶接形状変更工事を実施することとした。


当社は、溶接事業者検査が電気事業法に基づく重要な手続きであるにも関わらず、手続き漏れが発生したことを重大な問題と捉え、2月19日に社内に「溶接事業者検査手続き問題対策検討会」を設置し、同検討会および社内のトラブル対策委員会において、原因の究明および再発防止対策の検討を行ってきました。

(1)発見に至った経緯
   サンプリングライン溶接形状変更工事について、次回定期検査の工事計画立案のため、メーカーが当該サンプリングラインの図面を確認していたところ、当該箇所で溶接事業者検査が未実施であることが判明しました。
 
(2)調査結果
  a.事実経過
  当該サンプリングラインの溶接形状変更工事は溶接事業者検査対象外でありましたが、溶接時の作業性を考慮し、余熱除去系統からの第一弁とその上流側配管を取り替えることとしたため、その溶接箇所が溶接事業者検査対象となりました。 しかしながら、業務決定文書を作成した担当者は、当該部を溶接事業者検査対象外と判断していました。
  課内上位者、技術アドバイザー、技術課長などの審査者は、業務決定文書の審査を行いましたが、添付資料の系統図には余熱除去系統の主配管を示していなかったため、取り替える弁が余熱除去系統からの第一弁であることを認識できませんでした。
  さらに、施工会社から提出された工事図面の審査においては、使用材料等の技術基準への適合についての審査を実施しており、溶接事業者検査の要否に関する観点で審査は行われていませんでした。
 
  b.問題点
  担当者が溶接事業者検査を不要と判断しましたが、この背景には、実務経験が浅い担当者に対する課内上位者の業務フォローのあり方、溶接事業者検査等の法令業務を体系的に修得する教育の仕組みに問題がありました。
  業務決定文書や工事図面の審査段階で、工事範囲に溶接事業者検査対象となる余熱除去系統からの第一弁が含まれることをチェックできなかった背景には、審査方法や添付資料のあり方等に問題がありました。
 
(3)推定原因
  1 教育計画の問題
   溶接に携わる社員を対象として、溶接事業者検査に関する教育を計画的に実施していたものの、受講者は定期検査を3〜6回経験した者から選抜することとしていたため、当該担当者に、溶接事業者検査要否判断に関する十分な教育を実施していませんでした。
  2 書類作成ルールの問題
   溶接事業者検査の要否について業務決定文書に記載することが社内ルールで定められていますが、要否判断をしたプロセスを示すフロー図や主配管との関係を示す系統図を業務決定文書に添付することになっていなかったため、溶接事業者検査の要否を確認できる内容になっていませんでした。そのため、審査者は、当該部が溶接事業者検査対象であるとの認識に至りませんでした。
  3 審査方法および業務フォローの問題
   業務決定文書や工事図面の審査は複数の社員が行っていましたが、各審査者の審査事項・方法が明確になっていませんでした。また、課内上位者が担当者に対して行う業務フォローのポイントが明確になっていませんでした。
 
(4)対 策
   本件を受けて、速やかに、原子力事業本部長から原子力関係の社員に対し、文書 で、法令遵守の再徹底について指示しました(2月20日実施済み)。
  1 教育計画の問題に対する対策
  すでに受講した者も含め、配管、容器等の溶接工事を担当する社員を対象に、溶接事業者検査対象範囲を体系的に修得する教育を実施し、溶接事業者検査に関する能力向上を図ります。
  溶接事業者検査に関する教育について、その実効性を検証し、教育内容や頻度、対象者等の改善について検討します。
  2 書類作成ルールの問題に対する対策
  溶接事業者検査の要否を判断したプロセスが審査者にわかるように、フロー図および溶接事業者検査が必要な設備との関係を示す系統図を業務決定文書に添付することを社内ルール化し、審査が確実に実施できるようにします。また、今回のように担当者の要否判断に誤りが生じやすい部分については、フロー図に補足説明を追記し、検査の要否判断を確実にできるようにします。
  溶接事業者検査要否を工事計画段階等で確実に識別できるように、あらかじめ各系統図に検査対象範囲を色分けすることを検討します。また、検査要否の判定を支援するツールとして解説書等を整備し、これらを教育資料として活用することも検討します。
  3 審査方法および業務フォローの問題に対する対策
  溶接事業者検査の手続きを確実に実施するために、審査者の役割分担や着目すべきポイントおよび上位者が担当者に対して行う業務フォローのポイント等を明確にすることを検討します。

 当該サンプリングラインについては、現在、溶接事業者検査を実施中であり、今後、監督官庁のご指導を賜りながら、適切に対応してまいります。


 なお、当該部の配管取替作業は3月中旬頃に完了する見込みであり、その後、燃料装荷、原子炉容器組立ておよび必要な定期事業者検査を実施後、原子炉を起動し、調整運転を開始する予定です。

以  上

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