プレスリリース

2006年5月18日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成18年5月18日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 運転中  
2号機 50.0万 第23回 定期検査中(H18.3.3〜H18.6月上旬予定) 【新規】
「2次系配管水張り作業での水漏れについて」詳細は3のとおり。
3号機 82.6万 事故停止中[第21回定期検査中]
H16.8.9 2次系配管破損事故により停止
(引き続き、H16.8.14〜 第21回定期検査)
H17.1.5〜 定期検査作業中
【お知らせ済み】
「格納容器内での水漏れについて」詳細は2(2)のとおり。
高 浜
発電所
1号機 82.6万 運転中  
2号機 82.6万 第23回 定期検査中
(H18.4.14〜H18.7月下旬予定)
 
3号機 87.0万 運転中  
4号機 87.0万 運転中
大 飯
発電所
1号機 117.5万 運転中 【新規】
「復水ポンプ出口ナトリウム計の指示値上昇について(復水系統への海水混入の疑いに伴う監視強化)」詳細は3のとおり。
2号機 117.5万 第20回 定期検査中
(H18.4.24〜H18.9月上旬予定)
【新規】
「下部炉心構造物の表面線量当量率測定作業に伴う協力会社社員の計画線量の超過について」詳細は3のとおり。
3号機 118.0万 運転中  
4号機 118.0万 運転中 【新規】
「A直流電源装置充電器故障について」詳細は2(2)のとおり。


2.保全品質情報について

実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則および電気関係報告規則に基づく報告事象や安全協定の異常時報告事象に該当する事象を含め、保安活動向上の観点から、産官学において情報共有することが有益である事象



(1)法令に基づく報告事象や安全協定の異常時報告対象のうち重要な事象

   なし

(2)(1)に至らない軽微な事象
発電所名  大飯発電所4号機 発 生 日 5月1日
件  名 A直流電源装置充電器故障について (添付図−1参照)
事象概要
および
対 策 等
 定格熱出力一定運転中のところ、5月1日18時9分に、「A直流電源盤故障・注意」の警報が発信しました。直ちに現場を確認したところ、安全系機器の電源であるA系統の充電器*1が電圧の異常(低電圧)により自動停止し、安全系機器には蓄電池(バッテリー)から電気が供給されていることを確認しました。その後、18時55分に安全系機器の電源を蓄電池から予備充電器に切り替えました。

 充電器の外観点検をした結果、充電器の電圧制御回路(カード)に取り付けられているコンデンサ*2の2個から僅かに漏れた液が確認されました。
 原因は、充電器の通電試験(無負荷状態)において、充電器の電圧が徐々に低下する事象が再現したこと、さらに他の電気回路の点検では低電圧となる原因が確認されなかったことから、充電器のカードの不具合により電圧制御不能(低電圧)となり充電器が自動停止したものと推定されました。

 対策として、当該カードを予備カードに取り替え、5月8日16時16分、安全系機器の電源を予備充電器からA系統の充電器に復旧しました。

 なお、安全系機器へは蓄電池から電気の供給が行われていたため、運転状態に問題はなく、発電機出力等プラントの運転への影響および周辺環境への放射能の影響はありませんでした。

  *1 充 電 器
安全系機器や蓄電池へ電気を供給している充電器はA,Bの2台ある。(予備充電器は1台)
  *2 コンデンサ
電子回路の中で様々な使われ方をしており、電源の安定化、ノイズの除去等の機能がある。




発電所名  美浜発電所3号機 発 生 日 第21回定期検査中
   (5月16日)
件  名 格納容器内での水漏れについて (添付図−2参照)
事象概要
および
対 策 等
 定期検査中の5月16日15時13分に、中央制御室で、格納容器サンプの水位が上昇していることを示す「格納容器サンプ水位上昇率高」の警報が発信しました。運転員が現場を確認したところ、15時40分頃に、仮設キャビティ*1浄化装置*2のホースからキャビティ水が漏えいしたことを発見しました。
 現場の作業員から聞き取り調査を行った結果、使用中の浄化装置のホースを誤って取り外したことにより漏えいが発生したため、直ちに同装置のポンプを停止させたことがわかりました。

 漏えいは、浄化装置が設置されている地上高32mフロアからドレン配管を通じて格納容器下部の格納容器サンプに達し、サンプ水位を上昇させるとともに、各フロアの床面にも漏えいしました。床面の漏えい範囲は、地上高32mフロアに約20m2、地上高24mフロアに約4m2、地上高17mフロアに約2m2です。漏えい量は、格納容器サンプの水位上昇分(約370)と床面への漏えい量(約26)を合わせて約400です。漏えいしたキャビティ水の放射能濃度は8.12Bq/ccであり、放射能量は約3.25×106Bqと推定されます。

 なお、この漏えいにより、作業員1名の足首付近が濡れましたが、サーベイの結果、汚染はありませんでした。また、原子炉の燃料は全て取り出した状態であり、安全上の問題はなく、環境への放射能の影響はありませんでした。

[平成18年5月16日お知らせ済]

  *1 キャビティ
原子炉容器の上方に設けているプールであり、燃料取り扱い時にはプール内部にほう酸水を満たすことにより、必要な遮蔽が得られるようにする。
  *2 仮設キャビティ浄化装置
キャビティ水を浄化するため設置していた仮設の装置。ポンプにより汲み上げたキャビティ水をフィルタにより浄化して再びキャビティに戻している。




3.その他情報
発電所名 大飯発電所1号機 発 生 日 5月5日(監視強化開始日)
件  名 復水ポンプ出口ナトリウム計の指示値上昇について
 (復水系統への海水混入の疑いに伴う監視強化) (添付図−3参照)
事象概要
および
対 策 等
 定格熱出力一定運転中のところ、復水ポンプ出口ナトリウム計*1の指示値が4月下旬頃から上昇傾向にあり、5月5日から監視強化を行っていましたが、その後も指示値は僅かに上昇し続け、5月6日10時59分に「復水ポンプ出口ナトリウム注意」警報(設定値:0.1ppb*2)が発信しました。その後、2A復水器検塩計についても5月上旬より指示値が緩やかに上昇していることが確認されました。
 このことから、復水器*3の伝熱管内を流れる海水が復水器内に僅かに混入している可能性があるものと推定されます。


 現在、復水ポンプ出口ナトリウム計の指示値は約0.3ppb、検塩計については約0.097μS/cmで緩やかな上昇傾向にありますが、運転上の制限*4が必要となる関連パラメーターについては変化はなく、復水器から蒸気発生器に供給される復水は復水処理装置により浄化され、蒸気発生器内の水質は維持されていることから、プラントの運転に問題はありません。
 今後も継続して監視強化を行っていきます。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はありません。


  *1 復水ポンプ出口ナトリウム計:
復水ポンプ出口の水に含まれるナトリウムの量を測定する計器
  *2 ppb:
part per billion。濃度の単位で10億分の1を表す。
  *3 復水器:
タービンを回し終えた蒸気を、伝熱管内を流れる海水で冷却し、水にする機器。
大飯発電所1号機には復水器が3台あり、冷却する海水系統が2系統(A,B)ある。
  *4 運転上の制限:
蒸気発生器の保護を目的とした水質基準値。海水の混入等により水質(復水ポンプ出口カチオン電気伝導率、蒸気発生器内カチオン電気伝導率、蒸気発生器内塩素イオン濃度)が基準値を超えた際に、負荷降下して点検を行う。




発電所名 大飯発電所2号機 発 生 日 第20回定期検査中
   (5月15日)
件  名 下部炉心構造物の表面線量当量率測定作業に伴う協力会社社員の 計画線量の超過について (添付図−4参照)
事象概要
および
対 策 等
 定期検査中の5月15日18時5分から18時52分にかけて原子炉容器下部炉心構造物吊上げ作業を実施していましたが、下部炉心構造物の表面線量当量率を測定していた協力会社社員の線量計の警報(0.72mSv)が発信したため、直ちに格納容器外に退避しました。当該作業員の被ばく線量を確認したところ、当日の計画線量(0.90mSv)を超える2.19mSv(当日午前中の被ばく線量を合計すると2.20mSv)の外部被ばくを受けていました。なお、法令で定める線量限度(年間50mSv)は超過しておらず、内部被ばくや皮膚の汚染もありません。

 作業状況を調査したところ、当該作業員は、格納容器オペレーションフロアから測定器(長さ約4m)を用いて下部炉心構造物の表面線量当量率を測定していましたが、今回は異物管理用として手すりに養生シートを取り付けたことにより、これまでと同じような身をかがめた姿勢で測定できなかったため、立ち上がり、手すり越しに測定していました。

 計画線量を超過した原因は以下のとおりと推定されます。
作業姿勢が変わったことにより、下部炉心構造物からの放射線を床面で遮ることができなくなった。
作業計画時に、養生シート取付により作業姿勢が変わり、被ばく量が変化することを認識していなかったことから、十分な被ばく対策が検討されなかった。


 対策として、下部炉心構造物の表面線量当量率の測定に際しては、作業員が近づくことなく測定できるように、キャビティ手すり付近に線量測定装置を設置して遠隔測定できる方法等に変更します。
 また、高線量環境での作業計画時には高線量物と作業員の位置関係や作業姿勢などの作業条件を十分に把握し被ばく評価を行うよう、周知徹底します。

 なお、他の作業員の被ばく線量を確認したところ、全て計画線量内でした。
 また、この事象による環境への放射能の影響はありません。


  下部炉心構造物:
原子炉容器内に組み込まれている構造物の総称。炉心構造物は上部と下部に分かれており、炉心の支持、炉内の冷却材流路の形成等を行っている。




発電所名 美浜発電所2号機 発 生 日 第23回定期検査中
   (5月17日)
件  名 2次系配管水張り作業での水漏れについて (添付図−5参照)
事象概要
および
対 策 等
 第23回定期検査中の5月17日、原子炉冷却系統の漏えい検査準備のため、2次系配管への水張り作業を行っていたところ、11時5分、空気抜き用として開放していたA,B−主蒸気逃がし弁の排気管から水が漏れていることを発見し、11時8分、直ちに当該弁を閉止するとともに水張りポンプを停止しました。これにより、漏えいは停止しました。

 作業の状況を確認したところ、主蒸気ヘッダ室の運転員が主蒸気逃がし弁近くまで水が張れたことを確認し、中央制御室の運転員に連絡しました。この連絡を受け、中央制御室の運転員は水張りポンプの流量を減らす操作を行うところ、今回はタービン建屋1階床面の排水口から水が溢れているとの連絡があったため、その調査を優先し、水張りポンプを停止するまで流量を減らす操作が行われていませんでした。これにより、A,B−主蒸気逃がし弁排気管に多量の水がたまり、ゴム製の保護膜が破損し漏水したものと判明しました。

 漏えい範囲は、中間建屋2階主蒸気ヘッダ室、1階格納容器冷却水ポンプ付近およびタービン建屋1階給水ポンプ付近で、漏えい量は約1.4m3と推定しています。

 対策としては、水張り作業を確実に実施するよう運転マニュアルを変更するとともに、運転員への教育において水張り時の注意事項や役割分担等を再徹底することとします。

 なお、漏えいした水は放射能を含んでおらず、設備への影響はありません。また、環境への放射能の影響もありません。


  主蒸気逃がし弁
主蒸気系の圧力が上昇した場合、蒸気を直接大気へ放出し、圧力上昇を抑制する弁。


  保全品質情報については、下記の公開サイトにおいても、準備が整い次第掲載していきます。
  当社ホームページ(/knic/meeting/index.html)“原子力情報センター(保全品質情報)”
  日本原子力技術協会ホームページ(http://www.nucia.jp)“原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」”

以 上

プレスリリース