プレスリリース

2004年7月27日

大飯発電所1号機の定期検査状況について
(燃料取替用水タンクからの水のにじみについての原因と対策〔その後の調査結果〕)

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、平成16年6月4日から第19回定期検査を実施中ですが、6月10日に発表しました燃料取替用水タンク*1(以下「タンク」)変形事象に伴い当該タンクを補修し、7月12日、18時頃より原子炉キャビティからタンクへ水を戻し始め、7月14日、2時40分に満水(タンク水位:100%)になった後、協力会社社員が耐圧検査準備のため点検を行っていたところ、6時頃、タンク戻り配管(3インチ径)のサポート当て板をタンクに溶接している付近から、わずかに水がにじんでいることを発見しました。

*1: 燃料取替用水タンク 燃料の取出し・装荷時の水源、および原子炉冷却材喪失事故時の炉心・格納容器内への注入冷却用の水源。

平成16年7月14日 お知らせ済

 水がにじんでいる箇所のタンク水位(約92%)以下まで水抜きを行い(90%)、水のにじみを停止させた上で、にじみが確認された部位(当該部位)について詳細調査等を実施しました。調査の結果は以下のとおりです。

1. 調査結果
(1)現地調査
・ 外観目視点検を行ったところ、当て板とタンク胴板との溶接部付け根付近に、最大約5mmの割れを確認しました。 また、タンク補修時に配管サポートをプラズマ切断した際、熱の影響で塗装皮膜が消失していました。(注1)
・ 浸透探傷検査(PT)を実施した結果、長さ約5mmの線状浸透指示模様を確認しました。また、当該部の金属組織観察(スンプ観察*2)を行った結果、割れは枝分かれ状の粒内割れ*3であることを確認しました。
さらに、表面切削後、割れは内部に行くに従って枝分かれして広がっており、外表面からの割れであることを確認しました。  
*2:スンプ観察    金属組織を調べるため、金属の表面を磨いた後、検査面に膜(フィルム)を貼り付けて微小な凹凸を転写させ、転写した膜(フィルム)上の金属組織を光学顕微鏡で観察する方法。
*3:粒内割れ   金属組織を構成する結晶を貫通し進展する形態の割れ。

       

(2)タンクの保全実績調査
・ 当該タンクは、建設時の昭和49年に現在の場所(屋外)に未塗装の状態で据え付けられましたが、昭和56年にタンク全体の塗装を行いました。
・ 平成6年の第12回定期検査において、海塩粒子
*4による塩素型応力腐食割れに対する健全性調査のため、タンク胴および屋根部の主要溶接部(当該部位は含まれていない)について、PTを実施し、18箇所の浸透指示模様が確認され、一部手入れにより指示を除去しました。なお、平成15年の第18回定期検査において、再度PTを実施し、浸透指示模様が進展していないことを確認しました。
*4:海塩粒子 海面から飛散した海水が大気中で蒸発し、析出した塩などの微粒子


(3)主要溶接部以外の点検
・今回の事象を踏まえ、主要な溶接部以外(63箇所:当該当て板含む)について、PTを実施した結果、5箇所の当て板の溶接部付近に浸透指示模様が認められましたが、水のにじみは認められませんでした。
これら5箇所の当て板溶接部付近の指示について、スンプ観察を行ったところ、当該箇所と同様、枝分かれ状の粒内割れが確認されました。(注2)
 
 
2.推定原因
 割れは、タンク表面が未塗装の状態の間(昭和49年~昭和56年)に付着した海塩粒子が原因で発生した塩素型応力腐食割れであると推定しました。
 なお、割れは、タンク全体を塗装した後(昭和56年以降)も進展し貫通に至ったと考えられ、塗装皮膜により内部の水が漏えいすることはありませんでしたが、今回のタンクの補修の際、塗装皮膜が消失したため、内部の水がにじみ出たと推定しました。(注1)
 
 
3.対策
 当該部位については、切削し割れを除去した後、溶接補修を行い復旧するとともに、主要溶接部以外の点検で確認された5箇所については、切削により割れを除去した上で、必要に応じ溶接補修を実施します。(注2)    
 なお、従前からの計画で、次回の第20回定期検査(平成17年)において、耐食性にすぐれた材質で、製作時より塗装を施したタンクに取り替える予定となっています。
 [平成16年7月16日 お知らせ済


平成16年7月16日の発表内容を以下の内容に追記および訂正いたします。  
(注1): 塗装皮膜への影響調査により、塗装皮膜が剥がれ消失した原因としては、配管サポートをプラズマ切断した際の熱影響に加え、溶接した際の熱影響および塗装皮膜の経年劣化が進んでいたことによるものと推定しました。
(注2): 5箇所の当て板溶接部付近のスンプ観察で枝分かれ状の粒内割れが確認されたとしておりましたが、スンプ観察を行って粒内割れが確認されたのは4箇所(溶接補修対象)であり、1箇所については溶接技術基準以下の浸透指示模様が認められたものでした。

 
 水のにじみが確認された部位も含め、有意な浸透指示模様が認められた部位については、切削により割れ等欠陥を除去し、溶接補修を実施しました。
 なお、水のにじみ、有意な浸透指示模様が認められた部位の周辺について胴板の厚さ測定を実施した結果、いずれの箇所も胴板の設計値を満足しており減肉は認められませんでした。
 また、今後、海塩粒子による応力腐食割れ等の経年劣化に係る点検を実施する場合は、耐圧部だけでなく、形状的に海塩粒子が付着する可能性がある部位についても点検範囲に含めることとします。
以 上
 
(経済産業省によるINESの暫定評価)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
- - 0- 0-
INES:国際原子力事象評価尺度
 
プレスリリース