プレスリリース

2010年5月11日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

 当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成22年5月10日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 運転中
2号機 50.0万 停止中
H22年4月24日 1次冷却材中の放射能濃度の上昇のため停止
H22年4月24日〜未定
  • ○格納容器内空気排気時の格納容器排気筒ガスモニタ指示値の上昇について
    詳細は2(3)のとおり
    【事象概要、原因対策をとりまとめましたのでお知らせ(新規お知らせ)】
3号機 82.6万 運転中  
高 浜
発電所
1号機 82.6万 運転中  
2号機 82.6万 運転中  
3号機 87.0万 運転中  
4号機 87.0万 第19回 定期検査中
H22年2月4日〜H22年6月上旬予定
(調整運転中)
  • ○体積制御タンク室内での漏水について
    詳細は2(3)のとおり
    平成22年5月7日お知らせ済み】
大 飯
発電所
1号機 117.5万 停止中
H22年2月6日  1次冷却材中の放射能濃度の上昇のため停止
H22年2月6日〜H22年5月中旬予定
2号機 117.5万 運転中  
3号機 118.0万 燃料取り替えのため停止中
H22年4月29日〜H22年6月上旬予定
  • ○燃料取り替えに伴う原子炉停止について
    詳細は2(3)のとおり
    平成22年4月28日 お知らせ済み】
4号機 118.0万 第13回 定期検査中
H22年2月7日〜H22年6月下旬予定
 
  • *定期検査中のプラントについては、定期検査開始〜本格運転再開予定時期を記載。その他、停止中のプラントは原子炉停止〜原子炉起動予定時期を記載している。

2.トラブル等情報について

(1) 法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)

なし

(2)安全協定の異常時報告事象

発電所名  大飯発電所1号機 発 生 日 平成22年2月1日
件  名 燃料集合体漏えいに係る調査状況について     (添付図1)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成22年2月1日、1次冷却材中のよう素(I-131)濃度および希ガス濃度(Xe-133)が前回(1月29日)の測定値を上回ったため、1次冷却材中の放射能濃度の監視を強化していましたが、漏えいの疑いがある燃料集合体を特定するため2月6日1時に発電を停止し、同日1時47分に原子炉を手動停止しました。なお、この期間中の1次冷却材中のよう素濃度は、保安規定で定める運転上の制限値(63,000 Bq/cm )に比べて十分に低い値でした。
 停止後、原子炉に装荷されていた燃料集合体(193体)全数を取り出し、シッピング検査を実施した結果、2体の燃料集合体(KCHC51、KCHC55)で漏えいを確認しました。

  • * シッピング検査:漏えい燃料集合体から漏れ出てくる核分裂生成物(キセノン-133、よう素-131等)の量を確認し、漏えい燃料集合体かどうか判断する検査。

1.漏えい燃料の調査結果

  • ・シッピング検査の結果、上記2体以外に漏えいは確認されませんでした。
  • ・漏えいが確認された燃料集合体(2体)について、水中カメラによる外観目視検査を実施したところ、特に異常は認められませんでした。
  • ・2体は同一メーカーで、同一時期に製造された燃料(高燃焼度17×17A型燃料)でした。
  • ・2体の燃料棒全数(264本/体)について超音波による調査*1を実施した結果、漏えいしている燃料棒がそれぞれ1本(計2本)確認されました。
  • ・漏えいした燃料棒2本をファイバースコープで点検したところ、KCHC51の燃料棒1本において、燃料棒を保持している第9支持格子*2内で、燃料棒を支持する支持板部で隙間が認められるとともに、ばね板が棒側に入り込んでいました。KCHC55の燃料棒1本には異常等は認められませんでした。
  • ・漏えい燃料集合体2体の他の燃料棒についても、第9支持格子内部をファイバースコープで点検したところ、KCHC55の燃料棒1本で、支持板部のすき間やばね板の入り込みが認められました。
  • *1 超音波による調査:漏えいした燃料棒に水が入ると、燃料被覆管を伝わる超音波が減衰することから、これを検出することで、漏えい燃料棒を特定する。
  • *2 第9支持格子:燃料棒を保持するための部品。支持格子は燃料棒1本ごとに保持するための支持板とばね板で構成されている。

2.最近の大飯発電所で発生した燃料漏えいを踏まえた原因調査

 大飯発電所(4ループ型)では、平成20年に大飯4号機で1体、同21年に大飯2号機で2体、および今回の大飯1号機における2体の計5体(漏えい燃料棒は計7本)で漏えいが発生しています。漏えいした燃料集合体はいずれも平成16年以降採用している高燃焼度燃料(17×17A型:最高燃焼度55,000MWd/t)で、全てが同一メーカーの燃料集合体であったことから、これらの特徴等を整理し、漏えい発生に至った要因を推定しました。

(1)燃料の種類による相違点
 大飯発電所では従来使用していた燃料(最高燃焼度48,000MWd/t)に加え、平成16年から高燃焼度燃料(最高燃焼度55,000MWd/t)を採用し、それぞれ独自の設計(型式)である2社の燃料を併せて使用していますが、

  • ・漏えいした燃料集合体と他社の燃料集合体とでは、特に、第9支持格子の位置にずれ (約1cm:一方の下端と他方の上端との隙間)がありました。
  • ・燃料下部にある下部ノズルの形状(流路孔)にも違いがあることから、下部ノズルを流れる流速について評価したところ、漏えいした燃料のほうが約7%流速が速いことがわかりました。

(2)原子炉内の1次冷却材の流れ
 燃料集合体内を流れる1次冷却材は、下部炉心支持板の流路孔を通過した後、燃料を保持している下部炉心板の流路孔から燃料の下部ノズルを通過し、燃料棒の間を上昇流として流れますが、

  • ・下部炉心支持板にある流路孔が中央部のみ大きくなっているため、この影響を流動解析で評価したところ、平均的な流速に比べ、炉心中央部の流速は約10%、炉心中心の流速は約20%速いことが確認されました。

(3)燃料集合体内の流れ(隣接燃料による影響)
 下部炉心板の流路孔から下部ノズルに入った冷却材は、そのほとんどが燃料棒に沿って上向き(軸方向)に流れ、一部は燃料棒を横切る方向(横方向:隣接燃料側)に流れますが、

  • ・この横流れは、同一型式の燃料が隣接する場合は小さいが、型式が異なる燃料が周囲にある場合は大きくなるため、流動解析で評価したところ、漏えい燃料が型式の異なる燃料で囲まれた場合、第9支持格子のコーナー部で最大約1.8倍の横流れが生じている可能性があることがわかりました。

(4)摩耗の発生
 これまでの知見から、フレッティング摩耗は、振動の大きさと振動している時間の長さに応じて大きくなることがわかっていますが、

  • ・上記(1)〜(3)の状況から、漏えい燃料棒では、その周りの1次冷却材の上昇流や横流れが大きくなっていたことから、振動が大きくなった可能性があります。
  •  
  • ・また、漏えいは燃焼の進んだ燃料で発生していることから、振動が大きくなった状態が継続したために摩耗が進展し、漏えいに至ったものと考えられます。

3.推定原因
 原因調査の結果から、第9支持格子内での燃料棒と支持板またはばね板の接触面で、燃料の種類による相違点、原子炉内の1次冷却材の流れ、燃料集合体内の流れ(隣接燃料による影響)などの影響が重なったことによって燃料棒の振動が大きくなり、その状態で燃焼が進んだことから摩耗が進展して微小孔(ピンホール)が生じ、漏えいしたものと推定しました。

4.対策の検討および対策
 原因調査の結果から、以下の通り対策を検討し、実施することとしました。

(1)対策の検討

①燃料の種類による相違点の影響
 燃料の種類による相違点の影響は、設計の違いに起因しており、漏えいした燃料の設計を変更することによって緩和することができると考えられます。
②原子炉内の1次冷却材の流れによる影響
 原子炉内の1次冷却材の流れによる影響は、原子炉(下部炉心支持板)の構造に起因しており、この構造を変更することは困難です。ただし、原子炉の中心位置では流速が特に速いことから、その位置での漏えい燃料と同型の燃料装荷を避けることにより、漏えい発生の可能性を低減させることができると考えられます。
③燃料集合体内の流れ(隣接燃料による影響)
 燃料集合体内の流れによる影響は、型式の違う燃料が隣接することに起因していますが、設計の違いによる影響は、漏えいした燃料の設計を変更することによって緩和することができると考えられます。
④摩耗の発生
 摩耗は振動が大きくなった状態が継続することで進展するため、振動時間を抑制することにより、進展を抑制できます。このことから、燃焼度を抑制することによって振動時間を抑制し、漏えい発生の可能性を低減させることができると考えられます。

(2)対策

①今回の漏えい燃料集合体の調査結果に基づく対策
  • ・漏えいが確認された燃料集合体については取り出し、今後使用しないこととします。
  • ・今回漏えいした2体の燃料集合体と同じ型式で同時期に製造された燃料については、現在実施中の照射後試験等を踏まえた漏えい原因が判明するまで、再使用しないこととします。
②共通要因分析を踏まえた追加対策
  • ・漏えい発生の可能性を低減させるため、漏えい原因が判明するまでは、漏えい燃料集合体と同型の燃料について、
    • 1)これまでに漏えいが発生した燃焼度以上とならないよう、燃焼度を管理する。 (ウラン燃料は38,000MWd/t未満、ガドリニア入り燃料は36,000MWd/t未満)
    • 2)炉心中心には装荷しないこととし、運転中は、1次冷却材中の放射能濃度の監視を強化します。
  • ・今後、漏えい発生に対する1次冷却材の流れの影響を緩和するために、燃料設計の一部変更について検討を行います。

 大飯1号機については、上記の対策を実施した上で燃料装荷等の必要な作業を行い、5月中旬に原子炉を起動する予定です。

平成22年2月1日5日3月23日 4月28日 お知らせ済み]

  また、定格熱出力一定運転中の大飯3号機については、上記の対策を踏まえ、4月29日に原子炉を停止しました。今後、燃料取り替えを行い、6月上旬に原子炉を再起動する予定です。

[出力降下、原子炉停止予定日時は4月28日にお知らせ済み]


発電所名  美浜発電所2号機 発 生 日 平成22年4月19日
件  名 1次冷却材中の放射能濃度の上昇について      (添付図2)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成22年4月19日、定例の1次冷却材中の希ガス(Xe-133)*1の濃度測定*2を行った結果、前回測定値(4月12日測定、176Bq/cm )から上昇していることを確認したため(5,920Bq/cm )、燃料集合体に漏えい*3が発生した疑いがあるものと判断しました。
 また、1次冷却材中のよう素(I-131)濃度の測定を行った結果、前回(4月16日測定、1.4Bq/cm )を上回る濃度であること(78Bq/cm )を確認しました。
 4月19日に測定したよう素(I-131)濃度は、運転上の制限値(45,000Bq/cm )に比べて十分に低い値ですが、1次冷却材中の放射能濃度の測定頻度を上げて監視を強化する*4とともに、今後、漏えい燃料の特定調査を行うため、計画的な原子炉停止を検討することとしました。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はありません。

  • *1 希ガス(Xe-133):ウランの核分裂反応で生成するキセノンガス。
  • *2 濃度測定:定例の測定頻度はよう素濃度:3回/週、希ガス濃度:1回/週。
  • *3 燃料集合体に漏えい:燃料ペレットを収納している燃料被覆管から漏えいがあると、燃料被覆管内のよう素や希ガスが1次冷却材中に放出される。このため、1次冷却材中のよう素や希ガス濃度の変化から、漏えいの有無を判断している。
  • *4 放射能濃度の測定頻度:よう素濃度は3回/週から1回/日に、希ガス濃度は1回/週から1回/日に、全放射能濃度は1回/月→1回/週に測定頻度を上げる。

平成22年4月19日 お知らせ済み]

 その後、23日18時頃に出力降下を開始し、24日1時53分に発電を停止、同日3時07分に原子炉を停止しました。今後、放射能の低減を図った上で、漏えい燃料の特定調査(シッピング検査*5等)を実施する予定です。

  • *5 シッピング検査: 漏えい燃料集合体から漏れ出てくる核分裂生成物(キセノン-133、 よう素-131など)の量を確認し、漏えい燃料集合体かどうか判断する。

[出力降下、原子炉停止の予定日時は4月23日にお知らせ済み]

以 上

(3)保全品質情報等

発電所名  高浜発電所4号機 発 生 日 平成22年4月16日
件  名 体積制御タンク室内での漏水について      (添付図3)
事象概要
および
対 策 等

 第19回定期検査中の平成22年4月16日、化学体積制御系統*1の体積制御タンク*2から充てん/高圧注入ポンプ*3までの配管に水を張ったのち、水張りした配管の最上部にある弁を開き、配管内の空気を換気ダクトおよび体積制御タンクの気相部に抜く作業(以下「空気抜き操作」という)を行ったところ、15時44分に「4−1次系建屋漏水」警報*4が発信しました。
 警報が発信した場所を確認したところ、体積制御タンク室内での漏えいであることが確認されたことから、直ちに現場確認を行った結果、床面に水溜り(約100cm×約10cm×深さ約0.5cm)があり、漏水検知器が設置されている排水口の目皿に水が流入した形跡があることを確認しました。また、水溜りの上方にある、配管から排出された空気を換気ダクトに導く空気抜き配管の先端が濡れていることが確認されました。
 漏えい水量は、水溜まり(約0.5リットル)と目皿へ流入した水量(約2リットル)の合計約2.5リットルであり、放射能量は約8.3×104Bqと評価しました(法令に基づく国への報告基準は3.7×106Bq以上)。
 水張り操作は、水源である燃料取替用水タンクの連絡弁を開き、タンクの水位差による圧力で系統に水を張ったのち、連絡弁を閉じます。この時、配管内の空気は水圧により圧縮された状態となります。その後、空気抜き配管の弁を開いた状態で、水張りした配管の最上部にある弁を開けて、配管内の空気を換気ダクトと体積制御タンクの気相部に抜く作業を行います。これら一連の操作は、今回と過去の定期検査時とでは同じでしたが、詳細に調査した結果、今回は、水張りに使用した燃料取替用水タンクの水位が高かったため、水張り後の配管内の水圧が高くなり、配管内の空気の圧力も高かったことがわかりました。また、空気の圧力が高い状態で空気抜き操作を行うと、配管内の空気が膨張し、配管内の水を空気抜き配管の先端まで押し上げる可能性があることがわかりました。
 水漏れの原因は、水張り時に水源である燃料取替用水タンクの水位が高かったことにより、配管内に溜まっていた空気の圧力が高かったため、空気抜き操作を行った際、膨張した空気が系統内の水を押し上げ、空気抜き配管の先端から漏れる可能性があったにも関わらず空気抜き配管の弁が開いていたためと推定しました。
 対策として、今後は、空気抜き操作の際は、空気抜き配管の弁を閉止し、体積制御タンクへ、空気を逃がすように、操作手順を変更します。
 また、操作手順書作成の際の検討不足が今回の事象の背景にあると考えていることから、漏えい防止や労働災害防止の観点で、系統状態(系統内の圧力等)の変化を伴うような操作の影響について再評価を行い、必要に応じて操作手順を見直すこととしました。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

  • *1 化学体積制御系統:原子炉冷却系統から1次冷却材の一部を抽出し浄化したのち、保有水量やほう素濃度等を調整して、原子炉冷却系統に1次冷却材を充てんする系統。
  • *2 体積制御タンク:原子炉容器や配管内の1次冷却材の量を調整するためのタンク。運転中は、気相部を水素に置換している。
  • *3 充てん/高圧注入ポンプ: 原子炉の1次冷却材系統から1次冷却材を抽出し、浄化やホウ素濃度の調整等を行ったのち、再び1次冷却材系統に戻すためのポンプ。
  • *4 「4−1次系建屋漏水」警報:管理区域内(格納容器内を除く)の各室内で、漏水を検知した際に、中央制御室に警報を発信する。どの漏えい検知器からの発信かは中央制御室内にある1次系補機室内の1次系補機操作盤で確認できる。

平成22年5月7日 お知らせ済み]


発電所名  美浜発電所2号機 発 生 日 平成22年4月25日
件  名 格納容器内空気排気時の格納容器排気筒ガスモニタ指示値の上昇について
(添付図4)

(概要)
 美浜発電所2号機は、平成22年4月24日に漏えい燃料の特定調査を行うため原子炉を停止し、25日に格納容器内の空気を排気筒から排気する作業を行っていたところ、この排気筒にあるガスモニタの値が予測値を超える値まで上昇したため、排気操作を中断しました。
 原因は、排気操作前に停止した1次冷却材ポンプのポンプ軸シール機能の一時的な低下により僅かに漏れた1次冷却材中に含まれる希ガスが、排気操作開始時に、ループ室内に設置されている作業用ダクトを通じて直接排気筒から排気されたものと推定しました。
 このため、格納容器内の空気の攪拌を行った後、格納容器内の空気をサンプリングし、ガス濃度を再確認した上で排気操作を再開しました。
 今後は、燃料漏えい等で原子炉を停止した場合、格納容器内への希ガス放出の可能性のある操作を行った後は、プラント状態の確認と空気の攪拌を行った上で、ガス濃度を再確認し、排気操作を実施することとしました。
 なお、今回の排気操作による放射能量は、前回定期検査時の排気操作による放射能量と同程度であり、本事象による環境への放射能の影響はありません。


事象
および
対 策 等

 美浜発電所2号機は、漏えい燃料の特定調査を実施するため、平成22年4月24日に原子炉を停止しました。その後、25日13時27分から格納容器内の空気を入れ替えるため、格納容器内の空気を格納容器排気筒から排気する操作(以下「排気操作」という)を実施していたところ、格納容器排気筒ガスモニタ*1の指示値が予測値(約910cpm)を超える値(最大1,410cpm)まで上昇したことから、13時43分に排気操作を中断しました。その結果、13時55分に指示値は通常値(約730cpm)に戻りました。
 格納容器内の排気操作は、格納容器ガスモニタ指示値等を確認し、外部への影響の事前評価を行った上で格納容器排気筒から排出することとしており、今回の事前評価は4月23日に実施していました。
 格納容器内の状況を確認したところ、2台ある1次冷却材ポンプのうち、B号機のシールカバーの取り付けボルト部付近にごく僅かな水溜り(約5cc)とほう酸の析出*2痕(約20cm×30cm)が確認され、1次冷却材中に含まれる放射性物質が検出されました。
 当該ポンプについては、排気操作開始前の12時25分に停止した後、13時8分に「2B RCPスタンドパイプ水位注意*3」警報が発信したため、13時14分から25分にかけてスタンドパイプに水の補給を行い、13時16分に警報をリセットしました。このことから、当該ポンプ停止により、ポンプのシール機能が一時的に低下したものと判断し、13時17分には、1次冷却材ポンプオイルリフトポンプ*4の起動停止により、シール機能の回復を行いました。
 ポンプ停止時には、ポンプの1次冷却材のシール部が、ポンプ内外の圧力の変動等により、一時的に動くことがあり、この変動により、ポンプ軸シール部から僅かな漏えいがあったものと推定しました。
 また、格納容器内の空気の流れを確認したところ、1次冷却材ポンプのあるループ室内に排気筒へ接続されている作業用ダクト*5吸い込み口が設置されていたため、排気操作時にループ室の空気が格納容器内で攪拌されずに、作業用ダクトから直接排気筒へ排気されることがわかりました。
 これらのことから、原因は、排気操作直前に停止した1次冷却材ポンプのポンプ軸シール部から僅かに漏えいした1次冷却材中に含まれる希ガス*6が、ループ室内に漏れ、排気操作開始の際に、ループ室内に設置されていた作業用ダクトから直接排気筒へ排気されたため、格納容器排気筒ガスモニタの指示値が予測値を超える値まで上昇したものと推定しました。
 このため、格納容器内の空気の攪拌を行った後、格納容器内の空気をサンプリングし、ガス濃度を再確認した上で排気操作を再開しました。
 今後は、燃料漏えい等で原子炉を停止した場合、1次冷却材ポンプ停止等による格納容器内への希ガス放出の可能性がある操作を行った後は、すぐに排気操作に移ることはせず、プラント状態の確認と空気の攪拌を行います。また、排気操作前に、格納容器内の空気をサンプリングし、ガス濃度を再確認します。
 今回の排気操作による放射能量は約5.1×108Bq(25日:約1.3×108Bq、再開後:約3.8×108Bq)であり、前回の定期検査時の排気操作による放射能量約5.3×108Bqと同程度で、保安規定に定める美浜発電所の年間放出管理目標値(2.1×1015Bq)の約400万分の1と十分低く、この事象による環境への放射能の影響はありません。

  • *1 格納容器排気筒ガスモニタ:運転に伴って発生する気体放射性廃棄物(希ガス)を、格納容器排気筒から排気時に監視するモニタ。
  • *2 ほう酸の析出:1次冷却材が漏れ出して、1次冷却材に含まれるほう酸が結晶化している状態。
  • *3 2B RCPスタンドパイプ水位注意:スタンドパイプは1次冷却材ポンプ軸シール部にシール水を供給するために設置しているタンクで、B号機のポンプのスタンドパイプの水位が一定量まで低下した際に警報が発信する。
  • *4 1次冷却材ポンプオイルリフトポンプ:1次冷却材ポンプの起動時、回転軸の上下に油膜を形成して始動を滑らかにするための潤滑油を供給するポンプ。今回の事象ではポンプの主軸に変動を与えることでシール機能の回復を行った。
  • *5 作業用ダクト:定期検査時、作業場所の空気が周囲に拡散しないように、吸い込んで流す管。
  • *6 希ガス:ウランの核分裂反応で生成するキセノン等のガス
    (今回の1次冷却材中のガス濃度は、燃料集合体からの漏えいにより通常に比べ約40倍高い)

以 上


発電所名  大飯発電所3号機
件  名 燃料取り替えに伴う原子炉停止について
(大飯発電所1号機にかかる燃料漏えいの原因対策を踏まえた燃料取り替えに伴う停止)      
事象概要
および
対 策 等

 平成22年2月19日定格熱出力一定運転中のところ、燃料取り替えのため、4月29日に出力降下を開始し、同日に発電を停止し、原子炉を停止することとしました。
 今回の燃料取り替えは、大飯1号機の燃料漏えいにかかる原因と対策(平成22年4月28日公表)を踏まえて実施するもので、高燃焼度17×17A型燃料について、燃料の燃焼度を管理(ウラン燃料集合体:38,000MWd/t未満、ガドリニア入り燃料集合体:36,000MWd/t未満)するために取り替える燃料28体と、これに伴い原子炉内の出力分布を平坦化するために取り替える燃料8体の計36体について取り替えた後、6月上旬頃に原子炉を再起動する予定です。

 なお、1次冷却材中の放射能濃度は通常のレベルで推移しており、燃料の漏えいは認められていません。

平成22年4月28日 お知らせ済み]

 その後、4月29日3時30分頃から出力降下を開始し、同日10時00分に発電を停止し、 同日11時54分に原子炉を停止しました。今後、燃料取替作業を行う予定です。

[出力降下、原子炉停止予定日時は4月28日にお知らせ済み]

以 上

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