プレスリリース

2005年12月22日
関西電力株式会社

大飯発電所1,2号機の海水淡水化装置に供給している補助蒸気配管での蒸気漏れと支持金具の損傷の原因と対策について

 大飯発電所1,2号機(ともに加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット)は、1号機が第20回定期検査中、2号機が定格熱出力一定運転中ですが、平成17年12月1日17時00分頃、屋外にある海水淡水化装置※1付近で、異音と蒸気の漏えいを、事務所内にいた当社社員が確認しました。直ちに、運転員が現場確認した結果、海水淡水化装置(全3台)のNo.1装置とNo.3装置付近の補助蒸気配管で蒸気の漏れを確認したため、海水淡水化装置に補助蒸気を供給している系統の弁を閉じ、漏えいを停止させました。また、16時25分から行っていた、1,2号機の補助蒸気系統と、3,4号機の補助蒸気系統を接続する操作を中断しました。
 その後、漏えい箇所の保温材を取り外して調査した結果、No.1装置の補助蒸気入口部にあるフランジ管台で外面の腐食と貫通穴が認められ、また、No.3装置の補助蒸気供給配管フランジ部でパッキンの一部が損傷し、欠損していることが確認されました。さらに、周辺の補助蒸気配管の状況を確認した結果、配管サポート(支持金具)の損傷が3箇所認められました。
 なお、今回の事象による周辺環境への放射能の影響はなく、運転中プラントへの影響もありません。

※1: 海水淡水化装置 
補助蒸気を熱源として海水を蒸発させて真水(淡水)をつくる装置。
[平成17年12月2日お知らせ済み]

 蒸気漏えいと配管サポート(支持金具)損傷について、海水淡水化装置を含めた屋外の補助蒸気系統(3,4号機補助蒸気連絡弁から海水淡水化装置および1,2号側の補助蒸気母管分岐隔離弁までの範囲)について原因調査を行いました。

1.調査結果
(1)補助蒸気系統の点検結果
No.1装置補助蒸気入口部のフランジ管台
   貫通穴(長さ約2mm×2箇所)が確認されたフランジ管台外面については、管台外面が腐食しており、貫通箇所以外の最小厚さは約2.9mmでした。
 なお、管台内面には減肉等の異常は確認されませんでした。
No.3装置フランジ部パッキン
   蒸気漏れが確認されたフランジ部を開放し、パッキンの取り付け状況を確認した結果、パッキン全周の約1/3が欠損していました。また、残存したパッキンは、経年変化により弾力性を失い脆くなっていました。
 なお、点検範囲内の他のパッキン(31箇所)についても調査した結果、経年変化により弾力性を失い脆くなっていることを確認しました。
配管サポート(支持金具)
   損傷が認められた3箇所の配管サポートの破面を観察した結果、延性破壊により生じたディンプル(小さなくぼみ状の模様)が確認されました。このことから、配管サポートに何らかの大きな力が働いたと推定されるとともに、事象発生時に異音が確認されていることから、補助蒸気配管内でウォーターハンマー※2が発生した可能性が高いと推定されました。
 なお、延性破面には、錆びた古い領域と金属光沢のある比較的新しい領域が認められたことから、配管サポートに過去にも同様な大きな力が加わっていたものと推定されました。また、当該サポート以外については、割れ等の異常はありませんでした。
※2: ウォーターハンマー(水撃現象)
高温の蒸気が液体と接触し急激に冷やされると、蒸気が水に戻され急激な体積収縮       が生じ、大きなエネルギーを持つ圧力波が伝播される現象。
(2)補助蒸気系統内のドレン水の状況
   ウォーターハンマーの発生が考えられることから、補助蒸気系統内に生じるドレン水の有無について確認するため、ドレントラップ※3の機能等について調査した結果、1箇所のドレントラップの入口弁が通常開状態のところ、閉止(固着状態)となっており、ドレントラップによる排水ができない状態になっていました。
 このため、当該ドレントラップ近傍の補助蒸気配管内を調査したところ、約270リットルのドレン水が残留していることを確認しました。
※3: ドレントラップ
配管内に溜まったドレンを自動的に排出する装置。
(3)ドレントラップ入口弁の操作実績
   屋外の補助蒸気系統に設置している弁の操作実績について、記録が保存されている過去5年間の記録を調査しましたが、当該弁を操作した実績はありませんでした。
  このため、5年以上前に当該ドレントラップの補修等の作業を行う際、当該弁を閉止しましたが、作業後もその状態のまま放置されていたものと推定されました。
(4)補助蒸気系統圧力の変化
   補助蒸気系統のパラメータを確認したところ、1,2号機と3,4号機の補助蒸気系統を接続する操作を実施中、何らかの原因で系統内の圧力が通常値(約0.780MPa)から低下した際、系統内の圧力を維持するために補助蒸気を供給していた2号機と3号機のスチームコンバータからの蒸気供給量が増加していることが確認されました。このため、系統内の圧力は一時的に通常値を上回る約0.804MPaまで上昇しました。
  なお、系統内の圧力の低下は、補助蒸気(約170℃)がドレン水(約100℃以下)に取り込まれ、急激に凝縮したことにより発生した圧力変化(ウォーターハンマー)によるものと推定されました。

2.推定原因
(1)配管サポート損傷 
   ドレントラップ入口弁が誤って閉止されていたため、補助蒸気配管にドレン水が残留していました。この状態で補助蒸気の融通操作を継続していたため、補助蒸気(約170℃)がドレン水(約100℃以下)に取り込まれ、急激に凝縮、大きな圧力変化(ウォーターハンマー)が発生し、その衝撃力により配管サポートが損傷したものと推定されました。
(2)補助蒸気漏えい 
   ウォーターハンマーの発生に伴い系統内の圧力低下が生じ、2号機と3号機のスチームコンバータから供給される蒸気量が一時的に増えたため、系統内の圧力が通常値に比べて上昇しました。このため、弾力性を失い脆くなっていた補助蒸気入口配管フランジパッキンが損傷するとともに、外面腐食により肉厚が薄くなっていたフランジ管台部に貫通穴が生じたことから、蒸気漏えいが発生したと推定されました。

3.対策
(1)  損傷が認められた配管サポート(3箇所)、漏えいが確認された補助蒸気入口配 管フランジパッキン、No.1装置補助蒸気入口部のフランジ管台および閉固着 していたドレントラップ入口弁について、新品に取り替えます。
(2)  屋外にある補助蒸気設備について、機器の管台部や配管表面の外観点検および フランジパッキンの取替えを計画的に実施するとともに、ドレントラップの動作 状況やその周りの弁の開閉状況について、プラント起動前の点検対象に追加し、 確実な系統構成確保に努めます。

以  上

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