プレスリリース

2005年9月28日
関西電力株式会社

美浜発電所1号機B-湿分分離加熱器加熱蒸気ドレン管からの蒸気漏れの原因と対策および今後の補修作業に伴う原子炉手動停止について

 美浜発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力34万キロワット、定格熱出力103万1千キロワット)は、第21回定期検査の調整運転中(電気出力約100%)のところ、9月17日10時10分頃、当社運転員の巡回点検において、タービン建屋2階にあるB-湿分分離加熱器加熱蒸気ドレン管に取り付けられている、温度計の管台溶接部から、わずかな蒸気漏れを確認しました。
 当該湿分分離加熱器への加熱蒸気系統を隔離して点検・補修を行うため、同日13時20分から出力降下を開始し、15時55分に電気出力を約50%としました。
  本事象における周辺環境への放射能の影響はありません。

※: 湿分分離加熱蒸気ドレン管
  湿分分離加熱器は、高圧タービンから低圧タービンに流れる蒸気の効率(湿分除去と加熱)を高めるため、蒸気発生器で発生した主蒸気により加熱する機器。加熱蒸気ドレン管は、この加熱用に使用した主蒸気のドレンを湿分分離加熱器ドレンタンクに送る配管。
   
  〔平成17年9月17日お知らせ済み〕


1.調査結果
(1) 現地調査結果  
  蒸気漏れが認められた部位は、管台と温度計ウェル(温度検出部をカバーするさや管)との溶接部で、外観観察の結果、微小なピンホールが確認されました。


(2) 当該管台溶接部について  
 今回漏えいした湿分分離加熱器加熱蒸気ドレン管の温度計管台溶接部については、本年1月20日に発生した美浜1号機湿分分離加熱器ドレンタンク管台閉止栓からの蒸気漏れ事象を踏まえ、A系およびB系の2箇所について、今回の定期検査で点検を行っており、その作業状況について記録や聞き取り調査等を行った結果は以下のとおりです。
  検査前の目視点検で溶接ビード表面形状が悪かったため、非破壊検査(磁粉探傷検査)が可能な程度までグラインダで表面を仕上げた後、手直し溶接を行いました。溶接後当該溶接部について、非破壊検査(磁粉探傷検査)を実施しましたが、有意な欠陥は検出されませんでした。 

(3) 工場での調査結果  
  漏えいが確認された溶接部を含め、温度計ウェルを管台から切断し、工場において詳細調査を実施した結果は以下のとおりです。
浸透探傷試験の結果、漏えい部に直径約1mmの指示模様が確認されました。 
断面観察の結果、溶接部の初層(根元)部位と、中間部から外表面に至る部位にそれぞれ割れが認められ、これらが貫通欠陥となっていると推定されました。
それぞれの割れは、溶融した金属が固まる際にできる柱状の結晶(デンドライト組織)に沿って発生しており、高温割れの様相を示していました。
特に、溶接部外表面に近い割れは、今回の手直し溶接の際、溶接材を使用せず、溶接トーチを用いて既存の溶接部(金属)を再溶融させていたものと推定されました。
溶接部の金属組織を観察した結果、温度計取付け時の溶接部(オーステナイト組織)と、外表面では今回の手直し溶接部(マルテンサイト組織)が一部認められました。このことから、手直し溶接の際、温度計ウェル(ステンレス鋼)と管台(炭素鋼)の材料確認を行わず、本来ステンレス鋼系の溶接材を使用すべきところ、炭素鋼系を使用したものと推定されました。
溶接金属部の成分分析を行った結果、高温割れ発生の原因となる低融点化合物である硫黄等が検出されました。
※高温割れ:  約1000℃以上で生じる割れであり、凝固時に、溶接金属に含まれる硫黄やリン等の低融点化合物(不純物)により発生する結晶粒界割れ。


2.推定原因
  当該温度計管台溶接部については、温度計取付け施工時に、高温割れに対する溶接時の施工管理が十分でなかったため、溶接初層部で高温割れが発生していました。今回の定期検査で、当該部を非破壊検査するため、手直し溶接を実施した際、漏えい部付近では溶接材を使用せず、既存の溶接金属を再溶融させたため、溶接部の外表面で新たに高温割れが発生し、この割れが当初から存在していた割れと結合して貫通欠陥に至り、蒸気漏えいが発生したものと推定されました。

3.対 策
  当該の湿分分離加熱器ドレン管温度計管台(B系)に加えて、今回の定期検査で同様に手直し溶接を行ったA系の温度計管台についても、以下の対策を行うため、明日、9月29日夕方に出力降下を開始し、原子炉を停止します。
B系およびA系とも、当該温度計ウェルは新品と取替え、高温割れが発生しにくいステンレス鋼系の溶接材を用いて溶接します。
なお、今回の手直し溶接にあたって、定められた作業要領を遵守していなかったことから、今後の溶接作業にあたっては、今回の事象について現場作業者に十分周知したうえで実施します。

以 上

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