プレスリリース

2005年1月25日
関西電力株式会社

美浜発電所1号機の点検状況について(湿分分離加熱器ドレンタンク上部からのわずかな蒸気漏れの原因と対策)

 美浜発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力34万キロワット、定格熱出力103万1千キロワット)は、定格熱出力一定運転中のところ、1月20日10時頃、当社運転員の巡回点検において、タービン建屋1階にある湿分分離加熱器ドレンタンク※1上部の保温接合部付近で、わずかな蒸気漏れを確認しました。
 このため、同日、13時30分から出力降下を開始し、20時00分には電気出力を約10%にして、当該湿分分離加熱器ドレンタンクを隔離し、漏えいを停止した上で、保温材を取り外し、点検を実施することとしました。
  蒸気の漏れ量はわずかであり、運転パラメータ等に変化は認められませんでした。  
  なお、本事象における周辺環境への影響はありません。

※1: 湿分分離加熱器ドレンタンク
  高圧タービンを出た蒸気の湿分を低減させるために、湿分分離加熱器で加熱用に使用した蒸気のドレンが流入するタンク。  
 
[平成17年1月20日 お知らせ済み]
1. 調査結果
(1) 外観目視点検結果等
 当該湿分分離加熱器ドレンタンクの保温材を取り外し、点検を行った結果、以下のことが分かりました。
・外観目視点検を実施した結果、計器用取付管台(現在は閉止し使用していない)の閉止栓の溶接部で2箇所に約1mmφの微小な穴が認められました。
・当該閉止栓の溶接部について浸透探傷検査(PT)を実施した結果、2箇所の微小な穴以外に、浸透指示模様が複数箇所認められました。
・タンク内を空気で加圧し、タンクの溶接部について、漏えい試験(石鹸水による発泡試験)を行った結果、当該閉止栓溶接部で認められた微小な穴2箇所で漏えいが確認されました。その他の溶接部については漏えいは認められませんでした。
 
[平成17年1月21日 お知らせ済み]
 

(2) 詳細調査結果等
 当該閉止栓を含む管台の一部を切断し、外観観察を行うとともに、メーカにて詳細調査を実施した結果、以下のことが分かりました。
・閉止栓の外観観察の結果、当該閉止栓は棒状とリング状の鋼材(炭素鋼)を仮付け(2点溶接)したものが管台に溶接で取り付けられており、棒状とリング状鋼材および管台との間には、それぞれわずかな隙間が確認されました。
・閉止栓を漏えい部近傍の縦断面(軸方向)で切断し、その断面の浸透探傷検査(PT)を実施した結果、溶接部において、棒状とリング状の鋼材の隙間から外表面に向かって伸びる指示模様や、外表面表層部における空洞状の指示模様が確認されました。また、当該断面のマクロ観察では、リングと管台の隙間や溶接外表面表層部に溶接欠陥(融合不良やブローホール(気泡))が確認されました。
・漏えい部近傍の縦断面(周方向)について破面観察を実施した結果、溶接内部に溶接欠陥が確認され、リングと管台の隙間や溶接外表面表層部の溶接欠陥とつながっていることを確認しました。なお、応力腐食割れや疲労割れの特徴は確認されませんでした。
(3)当該閉止栓施工経緯
  棒状とリング状の鋼材を仮付け溶接した閉止栓が施工された経緯について調査した結果、以下のことが分かりました。
・ 当該タンクが設計された当時(昭和43年頃)、当該管台は圧力計を取り付けるために設けられましたが、発電所での据付時(昭和44年10月頃)において、当該タンク近傍の圧力計によりタンク内の圧力が測定できることから、当該タンクの圧力計は不要と判断し、当該管台に閉止栓を施工したものと推定されました。
・ 当該閉止栓は、図面による指示や施工記録がないことから、現地の手持ち材料により製作した閉止栓が施工されたものと推定されました。
・ 当該タンクは壁面近傍に設置されていることや、漏えい箇所が閉止栓溶接部の壁面側に集中していることから、壁面側が溶接しにくい体勢(通路側からの溶接)で作業が行われたものと推定されました。
2.推定原因  
 当該タンク据付時において、現地の手持ち材料(棒状とリング状の鋼材)により製作された閉止栓を取り付けたため、溶接施工時において、閉止栓と管台との隙間から溶接に伴うガスが溶接金属内に巻き込まれたことなどにより、溶接欠陥(融合不良やブローホール)が発生したこと、および溶接施工時の体勢が適切でなかったため、溶接金属表層部にも溶接欠陥が発生したことから、当該タンク内面から溶接外表面近傍まで、それぞれの溶接欠陥がつながった状態となっていたと考えられます。その後、プラントの起動、停止による圧力変動等により、溶接外表面の薄い部分で開口し、漏えいに至ったものと推定されました。 
3. 対策
 当該閉止栓を標準の一体型構造のものに取り替えます。
  なお、溶接施工にあたっては、より信頼性の高い溶接方法を用いるとともに、溶接の健全性を確認するため、磁粉探傷検査
※2により溶接金属内の欠陥の有無を確認します。
※2: 磁粉探傷検査(MT)
   溶接部を磁化して、磁粉を溶接部の表面に散布し、傷、割れなどに吸着されてできる磁粉模様により傷を検出する方法。磁粉探傷検査は、表面だけでなく、表面近くであれば内面に存在する傷等も検出が可能である。  
 閉止栓取り替え完了後、同閉止栓の健全性を確認した上で、出力を上昇し、定格熱出力一定運転に復帰させる予定です。
以 上
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