プレスリリース

2004年10月5日

美浜発電所1号機の計画停止状況について
(B余熱除去クーラ下部からのほう酸析出についての原因と対策)

 美浜発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力34万キロワット、定格熱出力 103万1千キロワット)は、平成16年9月5日から美浜発電所3号機2次系配管破損事故に伴う点検停止中のところ、9月16日17時20分頃、運転員の巡回点検において、補助建屋内地下1階にある2台(A,B)の余熱除去クーラ*1のうち、B余熱除去クーラ下部保温材にほう酸の析出と、下部床面に5cm四方程度の水たまり跡を確認しました。
 漏えい箇所を確認するため、同日19時23分にB余熱除去ポンプを停止し、19時45分に当該クーラの隔離を完了しました。
 その後、保温材を取り外して当該クーラの点検を行ったところ、当該クーラ下部フランジ部の隙間に、ほう酸の析出および水のにじみが認められました。
 外観点検状況から、フランジ部のシール(パッキン)部から漏えいが発生した可能性があると考えられますが、今後、詳細に調査を行うこととします。
 なお、補助建屋サンプ水位、補助建屋排気筒モニタ等のパラメータに有意な変動はなく、周辺環境への影響はありません。
*1: 余熱除去クーラ
  原子炉停止後の原子炉から発生する余熱を除去するための系統にある熱交換器。

[平成16年9月17日お知らせ済]

 当該クーラ下部フランジボルトを取り外し、フランジ内面、パッキン等の調査を行った結果は以下のとおりです。

1.調査結果
(1)外観点検等の結果
(フランジ部)
フランジの締め付け状態を確認したところ、大きな片締めは認められませんでした。
フランジ内面を目視点検した結果、傷、変形等はなく、異物の混入も認められませんでした。フランジボルト、フランジ厚さ等に異常は認められず、仕様どおりの寸法であることを確認しました。
フランジボルト、フランジ厚さ等に異常は認められず、仕様どおりの寸法であることを確認しました。
(パッキン)
 パッキンは、正規の位置に取り付けられており、傷、変形等はなく、異物の混入も認められませんでした。また、パッキンの寸法、材料も仕様どおりであることを確認しました。

(2)運転パラメータの調査
 今回のプラント停止に伴う当該クーラ使用開始から、ほう酸の析出を確認するまでの間の当該系統の温度、圧力を調査した結果、通常の運転状態と異なるような変化は認められませんでした。

(3)点検履歴の調査
当該クーラは、第19回定期検査(平成14年)の開放点検(1回/10定期検査)で、フランジ内面の点検、手入れを行うとともに、パッキンを新品に取り替えています。また復旧にあたっては、作業手順書に従い、パッキンが約0.8 mm~1.2mmの範囲で圧縮されるようにフランジボルトを締め付けました。(パッキン圧縮量:約1.0mm~1.1mm)
その後、当該クーラの起動時点検において、フランジ部にわずかな水のにじみが確認されたため、フランジボルトの増し締めを行いました。(パッキン圧縮量:約1.1mm~1.3mm)
第20回定期検査(平成15年)の起動時点検においても、当該部にわずかな水のにじみが確認されたため、再度、フランジボルトの増し締めを行いました。(パッキン圧縮量:約1.3mm~1.4mm)
なお、最終的な締め付けトルク*2値は、約600N·mでした。

*2: トルク
  ボルトを締め付ける効果を示す量のこと。力の大きさ(N:ニュートン)と、力点から回転の中心点までの長さ(m)を掛け合わせた値。

(4)過去の締め付け管理の調査
平成6年以降のクーラ開放点検に合わせたパッキン素材の変更(ノンアスベスト化)に伴い、メーカは余熱除去クーラも含めた各クーラフランジボルトの締め付けトルク値の見直しを行うとともに、締め付け管理については、トルク管理(フランジボルトの締め付け力による管理)とパッキン圧縮量(パッキンをつぶす量)による管理を併用することを推奨する報告書をまとめました。
これらを参考に、当社は、第19回定期検査より、締め付け管理について、従来から運用していたトルク管理から、パッキンの圧縮量を優先した管理に変更し、作業手順書に反映しました。
この作業手順書に従い、第19回定期検査で当該クーラを開放点検した際、パッキンの圧縮量を優先してフランジボルトの締め付けを実施しました。

2.推定原因
当該クーラ下部フランジボルトの締め付けにあたっては、パッキンの圧縮量を優先して締め付けていましたが、締め付けトルク値がメーカの締め付け目標トルク値(約970N·m)より低い値(約600N·m)でした。
このため、今回のプラント停止に伴い、高温の1次冷却水を当該クーラへ通水した時のフランジボルトの熱伸びにより、パッキンを押さえる力が低下したため、漏えいが発生したものと推定しました。

3.対策
当該クーラ下部フランジボルトの締め付けにあたり、パッキンの圧縮量を優先とした管理では、締め付け力が低下することから、トルク優先による管理に変更し、作業手順書を変更します。
当該クーラの復旧にあたっては、新品のパッキンに取り替え、この見直した作業手順書に従ってフランジボルトの締め付けを行います。
他のクーラについては、その使用条件等を考慮して、必要に応じて管理方法の見直しを行うこととします。

以 上

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