プレスリリース

2003年6月6日

美浜発電所(3号機)の高燃焼度燃料の使用計画について


1. 施設の使用に関する説明
(1)使用目的
 使用済燃料の発生量低減を目的として、現在取替燃料に使用している燃料より最高燃焼度制限を引き上げた高燃焼度燃料を使用する。
 
(2)燃料の高燃焼度化
 当社では、燃料の高燃焼度化を段階的に進めており、ステップ1として、燃料集合体最高燃焼度制限を当初の 39,000MWd/t から48,000MWd/tに引き上げた燃料を、平成2年から使用しており、これまで良好な照射実績を得ている。これに引き続き、ステップ2として最高燃焼度制限を55,000MWd/tまで引き上げた高燃焼度燃料を使用する計画である。
 現行燃料は概ね3サイクル使用できるが、高燃焼度燃料を使用することにより、燃料を3サイクルないし4サイクル使用できるようになる。これにより、使用済燃料発生量を約10%低減することができる。
 高燃焼度燃料の使用にあたっては、海外における照射試験などを行いデータを拡充し、燃料挙動を把握するとともに、念のため平成9年3月から平成14年3月まで大飯4号機において先行照射を行い、良好に照射を完了した。
 また、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会は、「PWR燃料の高燃焼度化(ステップ2)及び燃料の高燃焼度化に係る安全研究の現状と課題について」(平成13年12月7日)の中で、PWR高燃焼度燃料を本格採用することについて基本的に問題はないと結論づけている。
 
(3)高燃焼度燃料の基本仕様
 高燃焼度燃料の構造は現行燃料と基本的に同一であるが、最高燃焼度制限の引き上げにより、原子炉へ装荷されている期間が延びることから、必要な反応度を確保するためウラン濃縮度を現在の約4.0~約3.4wt%から約4.6wt%以下にし、被覆材としてジルカロイ-4から耐食性を向上させたジルコニウム基合金を採用する。
 また、ペレット初期密度を従来の理論密度の約95%から約97%に高めることにより、燃料集合体1体あたりのウラン量を増やし、使用済燃料の発生量を低減することとする。
 さらに、出力分布の平坦化を目的に、ガドリニア入り二酸化ウランペレットのガドリニア濃度を現行の約6wt%から約10wt%以下にするとともに、ガドリニア入り二酸化ウラン燃料棒の本数を現行の集合体あたりの16本から20本又は16本とする。
 

(4)高燃焼度燃料の使用実績

 原子燃料の高燃焼度化は、海外においても段階的に進められている。米国PWRでは既に燃焼度の制限が約56,000MWd/t(燃料棒燃焼度で62,000MWd/t)の高燃焼度燃料が導入されるなど、海外の原子力発電所では、安全に使用されている。
 また、国内BWRにおいても最高燃焼度制限55,000MWd/tの高燃焼度燃料の使用が許可されており、平成11年度以降、順次本格導入されている。
 
2.施設の安全設計に関する説明
 高燃焼度燃料では、現行燃料に比べウラン濃縮度を高めており、中性子スペクトルが硬化することから、制御棒価値やほう素価値が低下する。また、炉内滞在期間が長くなることから被覆材として現在使用しているジルカロイ-4に比べ耐食性が向上したジルコニウム基合金を使用すること、炉内の出力分布を平坦化するためガドリニア入り二酸化ウランペレットのガドリニア濃度を高めること、ウラン装荷量を増やすためにペレット初期密度を高めることなどの変更を行うが、これらの特徴を考慮し、以下の設計を行うこととしている。
 
(1)核設計
 高燃焼度燃料を装荷した炉心における反応度停止余裕、最大線出力密度、減速材温度係数等の取替炉心の安全性確認項目を評価し、全ての評価値が安全解析使用値の範囲内に収まるように、核設計を行うこととする。
 

(2)機械設計

 高燃焼度燃料の健全性については、燃料中心最高温度、燃料棒内圧、被覆管の応力、歪及び疲労を評価し、全ての評価値が基準値を満足するように、機械設計を行うこととする。
 
(3)熱水力設計
 燃料の健全性を確保するため、最小限界熱流束比が許容限界値以上、かつ燃料中心最高温度が溶融点未満となるよう設計を行うこととする。
 
(4)動特性
 高燃焼度燃料を装荷した炉心の動特性は、設計負荷変化に対して原子炉制御設備を含めた原子炉系の応答が安定で、原子炉出力等のパラメータが十分制御され、通常運転時及び過渡時においても、動特性上問題のないように設計を行うこととする。
 
(5)設備影響
 高燃焼度燃料の使用に伴う主な設備影響項目としては、原子炉停止余裕、燃料貯蔵設備の未臨界性、使用済燃料ピットの冷却性、燃料取替停止時のほう素濃度が挙げられる。これらについては、基本的に現行設備で対応が可能であるが、高燃焼度燃料の使用に伴いほう素価値が低下することから、燃料取替用水タンク等のほう素濃度を2,200ppm以上から2,600ppm以上に上昇させることとする。
 
(6)安全評価
 運転時の異常な過渡変化及び事故に関する解析条件に高燃焼度燃料の影響を反映し、評価を実施する。運転時の異常な過渡変化については、燃料及び原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性が確保され、事故については、炉心の冷却能力ならびに原子炉冷却材圧力バウンダリ及び格納容器バウンダリの健全性が確保されることを確認する。
 事故時被ばくについては、高燃焼度燃料の影響、ICRP90年勧告取り入れを受けた指針変更を反映し、評価を実施する。事故については、周辺の公衆に対し著しい放射線被ばくのリスクを与えないことを、重大事故及び仮想事故については、立地審査指針のめやす線量を十分下回ることを確認する。
 
以上より、高燃焼度燃料を使用しても安全上問題ないよう設計する。
 
3.周辺環境への影響に関する説明
 気体廃棄物の放出量評価については、高燃焼度燃料を装荷した炉心では、燃料取替停止時のほう素濃度が上昇することなどにより、1次冷却材抽出水の処理量が増加し、気体廃棄物の放出量が若干増加するが、線量評価上の影響は小さい。
 また、液体廃棄物の放出量評価については、上記理由により、液体廃棄物の放出量が若干変動するが、現行の評価に用いている放出量を満足している。
 したがって、線量目標値を十分満足しており、高燃焼度燃料の使用による周辺環境への影響は問題となるものではない。
プレスリリース