プレスリリース

2003年1月27日

世界最高レベルの高温耐熱特性を有するNi(ニッケル)基単結晶超合金の開発について

 関西電力株式会社(以下、関西電力)はこのたび、名古屋大学、株式会社日立製作所(以下、日立製作所)と共同で、世界最高レベルの超高温に耐えるガスタービン羽根用Ni(ニッケル)基単結晶超合金の開発に成功いたしました。

 IPPやPPSとの厳しい競争に直面している火力発電所は、燃料の燃焼で発生する熱を最大限利用して、発電効率をより高めていくことが必要です。しかし、現在の材料技術では、タービン発電機に用いられているタービン羽根が最高で1400℃程度※1の温度にしか耐えることができず、電力用では主に1300℃級のガスタービンが普及していることから平成9年7月から関西電力は、名古屋大学、日立製作所日立研究所と共同で1500℃以上の高温に耐えるガスタービン羽根を開発するための材料研究に取り組みました。
※1:従来の冷却技術および遮熱コーティング技術をベースにした場合。以下同様。

 開発にあたっては、元来、化学物質の分子構造を解析する理論として用いられていた「分子軌道法」を世界で初めて合金設計に応用した名古屋大学の協力を得ました。高温に耐え、また強度や耐食性にも優れる合金をつくるためには、各種の金属元素をいかに組み合わせるかということをこの「分子軌道法」で解析し、これにより、ニッケルをベースとしてコバルト、クロム、タングステン、アルミ、チタン、タンタル、レニウム、ハフニウムなどの合金元素の構成比率を見直して最適化した新たな超合金を開発しました。

 この超合金をタービン羽根に使用すると、現在の1300℃級を大きく上回る、1500℃級の燃焼温度での発電が可能になります。これにより発電効率(高位発熱量基準)を、現在、当社最高の49%※2から55%にまで引き上げることが可能になり、1ユニットあたりの発電コストを燃料費ベースで約11%程度※3、金額に直すと年間で10億円程度※3低減できるようになります。またCO2排出量で見ましても、従来型から比べて約11%※3、年間10万トン程度※3の削減できることになります。
※2:姫路第一発電所5・6号機
※3:いずれも60万kW級火力発電所1ユニットあたり利用率50%とした場合

 タービン羽根は現在、ジェットエンジンやガスタービンなど、様々な分野で利用されているため、その効率を高めるタービン羽根の耐熱性向上については、エンジンメーカーや国内外の研究所で開発中ですが、今回開発したものは世界でも最高レベルの耐熱性を持つものです。この合金開発に際しては、既に製造方法および合金の組成に関する2件の特許も出願済みであり、この合金を用いた製品の外販についても将来的には取り組んでいきたいと考えています。

以 上

<参考資料>


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