原子力発電所では、働く人々や周辺環境を守るために、厳重な放射線管理が行われています。中島はその重要な任務を担当する一人。高浜発電所の敷地内に定められた、「管理区域」への立ち入り制限や放射線管理をする業務に就いています。
安全に作業していただくのが我々の使命
管理区域での定期点検や保修業務などを行う作業者には、被ばくのリスクがあります。そのリスクを減らし安全に作業していただくのが中島たちの役目。
建物内の放射線量が高い区域などは入口に施錠する、というように、必要に応じて立ち入れないように区域分けをするなどして、作業者の安全を確保しています。また、作業中は管理区域内の作業者が不安全行動をしていないか、監視やパトロールもしています。
作業者一人ひとりは、単位時間あたりの線量を測るデジタル線量計と、1ヶ月の集積線量を測るガラスバッジを身につけます。
この値が法令で定められた上限を超えていないか、また2つの値を比較し、大きな差がないかなどのデータ管理を行うのも中島らの仕事です。その数は、定期点検中であれば、協力会社も含めて約800~1000人分にも及びます。
「まずは、我々が作業現場を安全な状態にしておくのが大前提。さらに作業者の方の放射線管理教育も必ず事前に行います。これは関西電力の社員だけではできない仕事ですから、各協力会社にいる放射線管理専任者にもご協力いただいています」
見えない放射線から身を守るため、音声による注意喚起や、電子掲示板での情報掲示、区域にテープを張るなど、さまざまな工夫をしながら「危険の見える化」を進めています。
「私にできることは、
同じ電力会社として2度とあのような事故を起こさないよう、自分のできる最善を鉄の意志でやりぬくだけです」
「配属された当初は、早く先輩たちのレベルに近づきたくて、放射線管理の知識・技能および実務経験を身につけることを必死でやってきました」と話す中島は、1980年に放射線管理課に配属されて以降、放射線管理一筋でやってきました。
20代で、国家資格である第1種放射線取扱主任技術者、第1種作業環境測定士の資格を取得し、2008年には社内認定制度である専門技術・技能者認定(原子力部門放射線管理)を受け、今では放射線に関することはあらゆる知識を持ち合わせる、いわば「放射線管理のプロ」とも言える存在です。
「放射線管理を行う者として、つらい現場に立ち会ったこともありました。管理区域内で負傷された方の身体の放射性物質による汚染の有無を確かめに現場に向かうことも我々の責務。こういった現場に立ち会う経験は、私に“人の安全、施設の安全”について思案させました」
2011年の福島第一原子力発電所事故の際にも、第一陣として放射線モニタリングの支援活動に向かったという中島。
「震災当日、持てるだけのサーベイメータ(放射線計測器)を持って、夜7時半に高浜発電所を出発しました。福島に到着したのは翌朝10時頃。余震も多く、日本列島はどうなるのだろうと不安になったのを覚えています」
不眠不休のまま到着し、すぐさま環境中の放射線量を測るモニタ車やサーベイメータで放射線を測定。現地の放射線量が通常では考えにくい数値を示したときは「驚きを隠せなかった」と言います。
しかし、「我々の仕事は人や施設を放射線から守ること。30年以上にわたって頑なに守り続けてきた、この気持ちに変わりはありません」と力強く話します。
「私にできることは、2度とこのような事故を起こさないよう、自分のできる最善を鉄の意志でやりぬくだけです」
小さな変化に敏感か
そうでないかの差は大きい
中島のコンダクトカードにはCSR行動宣言として「原子力の信頼回復 放射線安全を守ります」、私の安全行動宣言として「放射線安全を守る行動に徹します」と記載されています。
では安全を維持するために重要なことは何でしょうか。
「危ないと思ったら一度立ち止まること。当たり前のことですが、それが基本です。たとえば放射線量を計測しているとき『この線量の高さは変だ』と感じることが第一歩。その変化に対して、敏感かそうでないかの差は大きいです。危険な場所で作業する場合は特に、ちょっとした違いに気づけるかどうかが、安全を守るために重要だと思います」
放射線管理に欠かせない計測器類
中島のコンダクトカード
関西電力の全従業員は常に「コンダクトカード」という安全行動宣言とCSR行動宣言を記したカードを持ち歩いています。これは各個人が年に一度安全に対する目標をたてるもので、中島はCSR行動宣言として「原子力の信頼回復 放射線安全を守ります」、私の安全行動宣言として「放射線安全を守る行動に徹します」という目標を立てています。