天然ガスを燃料とする当社最大の火力発電所「姫路第二発電所」。甲子園球場約19個分の面積を誇る広大な敷地には、最新鋭の1,600℃級ガスタービンを用いたコンバインドサイクル発電方式のユニット6台と従来からの汽力発電方式のユニット2台があり、関西の電力需要を支えています。
そんな姫路第二発電所の統括タービン係長として、総勢23名のチームを率い、ユニット全8台のタービン設備の保守・保全に従事し、トラブルに直面しながらも、ひたむきにプラントの安全・安定運転に努めている山根の想いに迫ります。
急いでいるときこそチョット待て!
一度みんな集まって考えようや!
東日本大震災以降、原子力発電所がほとんど稼動していないなか、重要度が高まっている火力発電所では、設備を最大限活用するための様々な取組みを行ってきました。
姫路第二発電所でも、平成22年より本格着工した、最新鋭のコンバインドサイクル発電方式への設備更新を、当初の予定より約7ヶ月前倒しで平成27年3月に完了させるなど、供給力確保に貢献してきました。
しかしながら、平成27年5月に、新設ユニットにトラブルが発生。3号機に端を発した蒸気タービンの不具合・損傷を解消するため、新設6ユニット全台を対象に分解点検および応急対策工事を行うこととなりました。
「約5年間かけて行ってきた設備更新がようやく完了したと安堵したのも束の間、新設ユニットの蒸気タービンにトラブルが発生し、現場が緊張感に包まれたのをよく覚えています。
これまでに色々な現場を経験してきましたが、ユニット6台分の同時作業は、もちろん初めての経験でした。タービンは非常に巨大な機器であり、姫路第二発電所のタービン建屋は、同時に2台分までの作業スペースしか確保されていませんでした。しかし、現場は電力需要が高まる夏本番までになんとしてでも運転を再開させなければならないという使命感で満ち溢れていました」
誰も経験したことのない、ユニット6台の同時作業が始まりました。早急な復旧が求められるなか、当社、協力会社、メーカ等が一丸となり、延べ1,000名を超える作業員が、24時間体制で作業にあたりました。
緊迫した雰囲気のもと、限られたスペースを多くの作業員が同時に動き回る作業フロア。この輻輳する現場を安全最優先でコントロールするために、山根は繰り返し同じことを述べてきました。
「私の安全に対するポリシーは「急がば回れ」です。発電所の設備にトラブルが発生し運転を停止する際には、一刻も早い復旧が求められます。しかし、そういった有事の際にこそ、焦る気持ちを抑え、落ち着いて作業を進めることが早期復旧への一番の近道となります。狭い視野や、冷静さを欠いた判断で事故が発生すれば、その対策にさらに時間を要するだけでなく、現場全体の士気も下がってしまうからです。
今回のように非常に多くの関係者が同時に作業を行う現場であればなおさらです。作業全体の進捗状況を把握・共有するとともに、各ユニットの作業が安全かつ最短で行える最適な工程を作るべく、どれだけ忙しい状況にあっても1日2回全体でのミーティングを行いました。そして「報・連・相」の徹底をお願いしました。ときには予期せぬアクシデントが発生することもありましたが、そのたびに一度立ち止まり、落ち着いて対処することを心掛けました。
このようなあらゆる関係者との綿密な連携が功を奏し、8月初旬までに5台のユニットが通常運転を再開。9月末に残る1台も無事に再開することができました。なにより嬉しかったのは、熱中症等も含め、無事故無災害で全ての工事を終えることができたことです」
“笑顔“はなによりの安全の源
山根の「私の安全行動宣言には「笑顔で出勤、笑顔で帰宅」と記されています。
「部下はもとより、発電所の作業員みんなが毎日怪我なく笑顔で帰宅できることを願いながら、日頃の業務にあたっています。
私たちは機械屋ですから、機械や設備が壊れたとしても、部品を交換するなどして直すことができます。しかし、万が一、仲間に危害が及ぶと、取り返しのつかないことになるかもしれません。そのことを肝に銘じ、自分だけでなく仲間の安全も確保するべく、周囲の状況には十分に気を付けて作業を行うよう心掛けるとともに、後輩たちにもそのように指導しています。“機械“を守る“人“が無事故で笑顔で過ごせる職場をつくることが、ひいては電力の安全・安定供給につながっていると信じています」
「おはようございます!今日も一日ご安全に!」
山根の挨拶が今日も発電所の構内に響きます。
当社最大の火力発電所「姫路第二発電所」
最新鋭の1,600℃級ガスタービン
五感を研ぎ澄ませてタービンの点検を行う山根
6ユニットのタービンを一斉に分解点検する様子
1日2回行った全体でのミーティング
山根のコンダクトカード
巨大なガスタービンロータをクレーンを用いて吊り上げる様子