発電する建材「T-Green® Multi Solar」――カネカ
ACTIVE KANSAI
2023.7.14

発電する建材「T-Green® Multi Solar」――カネカ

ゼロカーボン化へのニーズが高まるなか、建物に降り注ぐ太陽光を有効活用する「T-Green® Multi Solar」を開発したカネカ。事業開発グループリーダー中島昭彦さんに話を聞いた。

「T-Green® Multi Solar」開発の経緯は?

カネカは1984年から太陽電池事業に取り組んでいます。多くの日本の太陽電池メーカーは2007年以降、安価な中国製に押され、事業から撤退。そんななか、カネカでは戸建て住宅に使用し、建物の外観を壊さない、瓦一体型太陽電池など高付加価値製品の開発に注力してきました。
戸建て以外のビルや集合住宅にも展開したいと考え、2014年から大成建設との共同開発を開始。2019年に実用化したのが、建物の外壁や窓と一体化させた太陽光発電システム「T-Green® Multi Solar」です。22年にはガラス手摺と一体化させバルコニーなどに設置できる商品も開発しました。

特徴は?

「建材の代わりに使える太陽光発電システム」というコンセプトで開発しました。通常の太陽電池は設置台や施工用金具が必要ですが、T-Green® Multi Solarは窓や壁の代わりに設置するので、設置台は不要。通常の建築工法で設置でき、既設の建物に後から付けることもできます。
透過性を確保し眺望を確保できるシースルータイプ、透過性を持たず発電性能の高いソリッドタイプがあり、シースルータイプは窓やバルコニーに、ソリッドタイプは外壁等に使用。一般的な太陽電池はセル(太陽電池素子)同士をつなぐ電極線が見えるが、隣り合うセルを重ねることで電極線が見えないよう意匠性にこだわりました。

発電した電気はどう使用するの?

基本的には自家消費です。集合住宅やビルでは、共用部の電気として使われています。蓄電池と組み合わせ、災害時の非常用電源として使用することもできます。
また、西側の壁面に設置すれば、夕方からの電力需要のピークに合わせて発電でき、系統電力の消費抑制につながります。

開発で苦労した点は?

建材として使用できる耐久性、防火性を確保するための設計に苦労しました。T-Green® Multi Solarの耐用年数は30年以上。高温高湿試験など耐用年数に関する試験を繰り返し、設計の見直しも行いました。高い品質を確保し、お客さまに安心して使っていただける製品にするため、5年の開発期間を費やしました。

今後の展望をお聞かせください。

太陽光発電システムは省エネ技術としてだけでなく、自然災害が増えるなか、停電時のバックアップ電源としての役割も担っていくと考えています。また、窓やルーフに設置する太陽電池が自動車メーカーに採用されるなど、用途拡大も努めています。
さらに当社では、軽量・高性能で次世代電池と期待される、ペロブスカイト太陽電池の開発も進めており、高出力化の期待にも応えられるようにしていきます。
これらの取り組みを通じて、太陽光発電システムの普及に貢献し、省エネルギーと豊かな暮らしの創造に貢献することが大きな目標です。

  • ※「T-Green」は大成建設株式会社の登録商標です。
中島昭彦
中島昭彦
カネカ PV & Energy management Solutions Vehicle
BIPV事業開発グループリーダー
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