どんな些細な異常でも見つける——40年以降運転に向けた特別点検 
かんでん Update
2023.3.31

どんな些細な異常でも見つける——40年以降運転に向けた特別点検 

2025年に営業運転開始から40年を迎える高浜発電所3・4号機。22年11月、関西電力は、高浜3・4号機の特別点検を終了、20年間の運転延長を国に申請する方針を示した。約20年にわたり原子炉保修課に在籍し、原子炉設備の保守管理に携わる大江寛史(高浜発電所 原子炉保修課 原子炉班長)に聞いた。

特別点検とは?

40年以降運転にあたり、重要設備の劣化状況を把握するために行う点検作業です。原子炉容器や格納容器、それらを覆うコンクリート構造物に傷や腐食がないかどうかなど、重要設備の状況を詳しく調べます。
原子炉容器の場合、燃料を取り出し、自走ロボットを使った超音波検査や渦電流を使った非破壊検査や目視検査を行い、容器本体にひびや割れなどの欠陥がないか確認します。原子炉格納容器では、鋼板の腐食を防止する表面の塗装状況を目視し、塗装の剥がれや腐食などの欠陥や異常がないことを確認。コンクリート構造物は、原子炉格納容器施設等からサンプルを採取し、強度や遮蔽能力に問題がないか検査しています。

定期検査と特別点検は何が違うの?

定期検査では、13カ月に1度、3カ月ほどの期間をかけて設備の健全性を確認しており、膨大な数の部品を分解して検査するとともに、必要に応じて取替工事を行っています。一方、特別点検は、取替えが難しい原子炉容器等の重要設備の健全性を確認するものです。点検方法にも違いがあり、例えば、原子炉容器では、定期検査でもカメラを使った目視点検を行っていますが、特別点検では非破壊検査を行い、より詳細に劣化状況を確認します。

今年40年以降の再稼動を控える1・2号機の特別点検にも携わったと聞いたが、特別点検での大江さんの役割は?

原子炉容器、原子炉格納容器の点検に携わりました。協力会社や他の課と連携し、実施時期、作業場所を調整。原子炉格納容器の点検では、協力会社と一緒に足場に上り目視確認を行いました。点検は複数人で行いますが、「誰かが見ているだろう」と思った瞬間見落とす危険性が生まれます。たった1つの見落としが発電所全体の安全を揺るがすことになるという緊張感と責任感を持って取り組みました。

苦労した点は?

安全とスピード、確実な点検の3つを成立させることに苦労しました。
現場の安全確保は大前提。点検では高所作業も多いので、事前にどんなリスクがあるのか洗い出し対策を講じました。
その上で、スピードと点検の質を確保するために、新規制基準や特別点検で求められる要件を協力会社と共有し、何のために行い、見落としがあるとどんな危険があるのかを具体的に伝えるようにしました。併せて点検のコツ、例えばライトの当て方や見方を伝え、見落としなくスピーディーな点検ができるよう努めました。
普段のメンテナンスでも同じですが、作業の根本的な意味を、携わるメンバー全員が理解することが重要だと考えています。

今後の抱負を

プラントの安全・安定運転を達成するためには、各自の技術力の維持向上が不可欠。自身のスキルを磨きながら、経験を若手社員にしっかり引き継いでいきたいです。特に異常兆候の捉え方は現場で経験を積んできたからこそ伝えられるもの。勘所を若手に伝え、原子力保修のプロフェッショナル集団をつくる一助になりたいです。

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