現場取材|国際事業で競争力強化に挑む
かんでん Update
2024.4.30

現場取材|国際事業で競争力強化に挑む

日本の電力会社初の海外電力事業として、1998年サンロケ水力発電プロジェクトに参画して以来、事業拡大を続ける関西電力の国際事業。

世界的な脱炭素化によりビジネスモデルが変化するなか、燃料トレーディングやソリューション提案など、新たな事業領域、事業機会拡大に挑む現場を追う。

国内で培ったノウハウを海外でも展開

国際事業本部長 代表執行役副社長 松村幹雄 写真

国際事業本部長
代表執行役副社長 松村幹雄

関西電力の国際事業は四半世紀の実績を持つ。1998年フィリピンのサンロケ水力発電事業を皮切りに、2024年3月現在、アジアや欧米など世界12カ国、23のプロジェクトに参画。関西電力の出資持分容量は285.2万kW、うち約4割を再生可能エネルギーが占める。

国際事業のミッションは、国内のエネルギー事業で培った技術力やノウハウを生かし、今後、電力需要増が見込まれる新興国等でエネルギー事業を展開し、安定した収益を上げることだ。加えて、近年は世界的な脱炭素化・再エネシフトが加速し、洋上風力や蓄電池など新たな事業領域や事業機会の拡大が予想される。「変化を迅速にとらえ、海外で獲得した技術やノウハウを国内のエネルギー事業にフィードバックすることが求められている」と語るのは、国際事業本部長を務める松村幹雄副社長。

関西電力送配電が参画する発電・送配電プロジェクト

近年注力しているのが、脱炭素化の流れを受けてニーズが高まる再生可能エネルギー事業だ。水力・風力など再生可能エネルギーのIPP(卸電力)事業をはじめ、再生可能エネルギー大量導入時の電力系統安定化を図る送配電網の高度化などの事業機会が拡大。さらに欧米では水素・蓄電池・浮体式洋上風力発電等の新たなビジネスモデルが国内に先駆けて実現しつつあり、事業参画を通じて技術やノウハウを獲得することは、競争力強化に大きな意味がある。関西電力は既に欧州で3件の着床式洋上風力発電の運用を開始。2023年8月にはノルウェーの浮体式洋上風力発電の実証事業に参画し、現地のパートナー企業と開発を進めている。

英国・トライトンノール洋上風力発電事業

英国・トライトンノール洋上風力発電事業は22年4月に商業運転を開始した

誠実さを武器に、リスクを恐れず挑戦する

国際事業本部は、ニューヨーク、パリ、アムステルダム、ジャカルタに海外拠点を置き、世界に張り巡らせたネットワークを活用し、海外プレイヤーとの信頼関係を構築する。

国際ビジネスに必要な条件を松村に聞いた。「第一にその国や地域の発展につながるプロジェクトをめざすこと。相手に対して誠実であり、リスクも含めてきちんと話し合う姿勢が大切。そのためには案件に関する知識とコミュニケーション力が不可欠だ」。相手の考えを読み、相互の均衡点を見つける交渉力や、専門家集団をまとめるマネジメント力が欠かせない。国際事業本部では、若手を積極的に現地派遣し、自ら学び、より高いレベルの仕事に挑戦する風土を大事にしているという。

ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢は予断を許さない。世界的なインフレや為替変動等により市場環境も大きく変化している。国際事業は、そうした事業環境を見極めながら進めていかなければならない。

松村は「このような環境下で持続的な成長を実現するには、リスクを恐れず新しい挑戦を続けるとともに、リスクを許容できるだけの収益を上げていかなければならない。情勢をしっかりと見極め、関西電力グループの競争力強化を図りたい」と力を込めた。

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