コラム|海外での忍者人気のワケ【山田雄司】
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2024.4.30

コラム|海外での忍者人気のワケ【山田雄司】

忍者を知っているか?忍者は現存すると思うか?忍者になりたいか?

外国人に人気の高い忍者。東南アジアでは、日本の人気アニメの影響が大きい。欧米では、武士道や武術など、日本文化の一部として興味を持たれることが多いようだ。

忍者が誕生したのは14世紀頃。背景には、戦い方の変化がある。南北朝時代になり、城攻めや山中のゲリラ戦などが増えると、周囲の地形、敵方の城の様子、兵糧の状況などを知る必要がある。そのような情報収集の役目を担ったのが、「忍者」「忍び」と呼ばれる人たちだ。

忍者といえば、手裏剣で戦うイメージがあるが、手裏剣を使っていたという史料は残っていない。忍者のミッションはあくまで情報収集。情報を味方に伝えるには生きて帰ることが最優先。街に溶け込み、人の心を操り、戦いに必要な情報を入手する、高いコミュニケーション力こそが忍者に求められる能力だ。

戦国時代までは、普段は農業をして、戦の際に徴用されて忍びの仕事をする人たちが多かったが、江戸時代以降、身分が固定化し、忍びは武士の一部となった。不審者に目を光らせたり、藩主の留守に屋敷を警備したりといった治安維持に携わった。

忍者というと超人的な身体能力ばかり注目されるが、忍術書には「忍びの修業は書物を読むこと。儒教や兵法、自然科学など幅広い書物に親しみ知識を得よ」とあり、高い知的能力が求められた。知力・体力に優れ、生き延びるサバイバル術を持った忍者。そんな忍者を今も存在すると信じ、修行をして忍者になりたいと日本を訪れる外国人も少なくない。不思議な魅力を持ち、本当にいるのかもしれないと思わせる──これこそが忍者が私たちにかけた最大の忍術といえる。

山田雄司
山田雄司 やまだ ゆうじ
三重大学教授
国際忍者研究センター 副センター長
静岡県生まれ。三重大学伊賀連携フィールドで忍者研究に携わる一方、怨霊・怪異など日本人の霊魂観に関する研究も行う。著書『忍者学大全』『忍者の歴史』『忍者修行マニュアル』など。
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