世界保健機関(WHO)環境保健基準238

Extremely Low Frequency Fields

環境保健基準238「極低周波電磁界」(2007年6月)

環境保健基準69(1987年)刊行後の科学文献を含めて、疫学、生物物理科学、医学、公衆衛生学などの分野の専門家からなるタスクグループにより100キロヘルツまでの極低周波数(ELF)電磁界へのばく露による健康へのリスクが再評価された。

世界保健機関(WHO)とは

国際連合の中の専門機関の一つで1948年に設立。国際保健事業の調整・援助、伝染病や風土病の撲滅、保健関連条約の提案・勧告、医療・衛生等の国際基準の策定といった幅広い任務を受け持つ機関。

健康リスク評価

短期的影響

高レベル(100μT(マイクロテスラ)よりも遥かに高い)での急性ばく露による生物学的影響は確立されており、これは認知されている生物物理学的なメカニズム※1によって説明されている。

※1 非常に高い強度の外部ELF磁界によって身体内に生じる電界・電流により、神経及び筋肉が刺激されたり、中枢神経系の神経細胞の興奮性が変化したりする。

潜在的な長期的影響

小児白血病

  • 全体として、小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではない。
  • 2002年以降に追加された研究は、国際がん研究機関(IARC)の「ELF磁界はヒトに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)※2」との分類を変更するものではない。

※2 この分類は、ヒトにおける発がん性の証拠が限定的であり、実験動物における発がん性の証拠が十分ではない因子をあらわすのに用いられる。

その他の健康への悪影響※3

  • ELF磁界ばく露とこれら全ての健康影響との関連性を支持する科学的証拠は、小児白血病についての証拠よりも更に弱い。
  • 幾つかの実例(心臓血管系疾患や乳がん)については、ELF磁界はこれらの疾病を誘発しないということが、証拠によって示唆されている。

※3 白血病以外の小児がん、成人のがん、うつ病、自殺、心臓血管系疾患、生殖機能障害、発育異常、免疫学的変異、神経行動への影響、神経変性疾患。

(ファクトシートNo.322「電磁界と公衆衛生 極低周波の電界及び磁界への曝露」※4より)

WHOのガイダンス

短期的影響

高レベルの電磁界への短期的ばく露については、健康への悪影響が科学的に確立されており、政策決定者は、労働者及び一般人をこれらの影響から防護するために規定された国際的なばく露ガイドライン(ICNIRP;IEEE)を採用すべきである。

潜在的な長期的影響

ELF磁界へのばく露と小児白血病との関連についての証拠が弱いことから、ばく露低減によって健康上の便益があるかどうか不明である。こうした状況から、以下を推奨する。

  • 政府及び産業界は、ELF電磁界ばく露の健康影響に関する科学的証拠の不確かさを更に低減するため、科学を注視し、研究プログラムを推進すべきである。
  • 加盟各国は、情報を提示した上での意思決定を可能とするため、全ての利害関係者との効果的で開かれたコミュニケーション・プログラムを構築することが奨励される。これについては、ELF電磁界を発する設備の計画プロセスに、産業界、地方自治体、市民との間の調整と協議を増進することを盛り込んでも良いでしょう。
  • 新たな設備を建設する、または新たな装置(電気製品を含む)を設計する際には、ばく露低減のための低費用の方法が探索されることは良いでしょう。適切なばく露低減方策は国ごとに異なるであろう。但し、恣意的に低いばく露限度の採用に基づく政策は是認されない。

(ファクトシートNo.322「電磁界と公衆衛生 極低周波の電界及び磁界への曝露」※4より)

※4 ファクトシートNo.322とは
環境保健基準238をまとめたタスクグループの知見に基づき作成されたものであり、国際がん研究機関や国際非電離放射線防護委員会による、ELF電磁界の健康影響に関する最近のレビューを更新するものである。

Webサイト

WHOファクトシートNo.322「電磁界と公衆衛生 極低周波電磁界へのばく露」(日本語版)

WHO環境保健基準238「超低周波電磁界」(英語版)(日本語版;第1章

電磁界に対する専門機関の評価など 一覧

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