コラム|気象予報士として空の機嫌を表現する【蓬莱大介】
余話一話
2021.10.29

コラム|気象予報士として空の機嫌を表現する【蓬莱大介】

表現者になりたい――と漠然と思い描いていた大学時代、バンドをやったり、役者をやったり、絵を描いたり、何が向いているのか探していた。役者は大学卒業後25歳まで続けたが芽が出なかった。別の道を探さなアカン、と本屋に通い見つけたのが気象予報士試験だ。

穏やかな気候の兵庫県明石市で育った僕は、虫捕りや魚釣りが大好きだった。教室で虫を育てて観察し、先生に対してもうんちくを傾け「蓬莱くんって生き物博士みたい」と褒められた。自然の変化を伝える仕事、気象予報士にピンと来たのはこんな経験からかもしれない。

一念発起して勉強を始めたが、気象予報士は合格率5%未満の狭き門。何度も心が折れそうになったが、支えてくれたのは「計画ノート」。合格までの必要勉強時間を調べ、試験までの勉強計画をノートに記載し勉強を進めた。気象予報士は人の命や生活を守る仕事、そう考えると難しい勉強も続けられた。

27歳で合格し、29歳で気象キャスターデビューしてから10年。最近はスマホでも簡単に雨雲レーダーが見られるので仕事が奪われるのでは、といわれることもある。僕は、簡単に情報を入手できる時代だからこそ、「なぜそうなるのか」を伝える気象予報士の仕事が必要だと思う。雨が降り出してから「えらいこっちゃ」と慌てても避難できない。数日前から予報を出し、大雨になりそうと伝えることで正しく警戒してもらえる。

スケッチ描画

天気のポイントをイラストで伝える「スケッチ予報」は、予報をもとに絵を考え、放送直前に描き上げる。

自然の怖さだけでなく、豊かさも伝えていきたい。空や山、草木や生き物と天気の関係は知れば知るほど面白い。地球温暖化で気象が極端な昨今、自然の豊かさと怖さをいかに表現するか、まだまだ試行錯誤は続く。

蓬莱 大介
蓬莱大介 気象予報士・防災士
1982年兵庫県生まれ。早稲田大学卒。2011年から読売テレビ気象キャスターを務め、『情報ライブ ミヤネ屋』『ウェークアップ!ぷらす』『かんさい情報ネットten.』を担当。著書に『空がおしえてくれること』『気象予報士・蓬莱さんのへぇ~がいっぱい! クレヨン天気ずかん』など。
http://hourais-office.co.jp/
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